55. モートルの研究を開始 1933年(昭和8年)

昭和8年7月には、新事業にも進出した。電動機部を設け、モートルの研究を始めたのである。

モートル業界は第1次世界大戦を契機に急速に伸び、すでに既存メーカーが支配しており、もはや新規に参入する余地はないかにみえた。そこへ、家庭電気器具の生産販売を主体とする松下電器が進出したのである。しかも小型モーターをつくるという。そのころ、小型モーターを使っているものといえば、扇風機がある程度である。当然、その成り行きが危惧された。

この小型モーター進出の発表に際し、業界紙の記者からの質問に所主は次のように答えた。

「将来、文化生活が進んでいけば、一家に平均10台以上のモートルが使われる日が必ず来ます。モートルの需要は無限ですよ」

その後、1年余りの研究の結果、昭和9年11月、ついに開放型3相誘導電動機(4極2分の1馬力)を開発した。昭和13年10月、松下電動機株式会社を設立、積極的に事業を推進したが、戦後の新しい家庭電化製品の登場で、この時の所主の予見は的中することになる。