96. 2年遅れで創業35周年を祝う 1955年(昭和30年)
松下電器は、これまで、5周年、10周年というような、節目を記念する行事を行うこともなく推移した。
時に、昭和28年は創業35周年に当たり、初めて大々的に記念行事を開催する予定を組み、全員が楽しみに計画を進めていた。ところが、たまたま欧米旅行中の社長は、電話でこの記念行事を延期するように指示した。
昭和29年1月、経営方針発表会で、社長はこのことに触れ、「松下電器だけを見れば、大過なく発展しているが、欧米の発展ぶりを見聞し、日本の姿を思うと、手放しの楽観は許されない。われわれは日本の再建、業界の繁栄、松下電器の発展のために努力した上で、心から創業35周年を祝賀し合いたい」と延期の理由を説明し、同時に「本年は非常にむずかしい、問題の多い年である」と指摘した。
予想通り、昭和29年に景気は後退し、憂慮すべき事態に陥ったが、会社は経費の削減や4本部制採用などの機構改革により新たな発展への地固めを行った。こうして迎えた昭和30年、2年遅れの創業35周年記念行事を大阪と東京で開催した。