103. オランダを夫婦で訪問 1960年(昭和35年)
昭和35年5月28日、社長夫妻はオランダに旅立った。昭和33年にオレンジ・ナッソ勲章を拝受し、かねがねそのお礼を申し述べたいと思っていたところ、この年ユリアナ女王から招待を受けたのである。
ヨーロッパの王室やしきたりについての知識がないので、夫妻はやや緊張の面持ちで、宮殿に向かった。玄関で肩に金モールをつけた侍従武官の出迎えを受けた夫妻は、いよいよ身を固くして部屋で待っていた。すると、そこへ50歳ぐらいの婦人が入って来た。その婦人がユリアナ女王その人だった。
部屋には、女王と社長夫妻、案内役のフィリップス社社長オッテン氏、通訳の松下電器外国部部長スクリーバ氏がいるだけである。女王は自ら紅茶を入れ、夫妻を歓待した。女王の気さくで温かいもてなしに、夫妻はすっかり感激、40分間がまたたく間に過ぎていった。
女王との話の中で印象に残ったのはオランダの堤防のことである。夫妻はその堤防を見物し、狭い国土を最大限に活用しているオランダ人の知恵に触れる思いがした。また提携先のフィリップス社を見学した際には、この会社が世界でも有数の大企業であることを改めて思った。小さな国オランダに魅力を感じつつ、6月23日、夫妻は帰国した。