115. 海外から賓客が来訪 1955年~(昭和30年代後半)

松下電器の躍進ぶりが海外にも知られ、会長の名声が高まるにつれて、外国からの賓客が目立って増えた。昭和30年代後半になって、ソ連のミコヤン第1副首相、カナダのジーフェンベーカー首相ご夫妻、アメリカのケネディ司法長官ご夫妻、オランダのベアトリックス王女、タイのプミポン国王、ユーゴスラビアのチトー大統領ご夫妻、インドのガンジー首相、チェコスロバキアのスボボダ大統領ご夫妻など多くの元首や代表的な政治家、経済人、文化人の来訪を受けた。

会長は、これらの人々のご案内役を自ら務め、親しく懇談した。そのときのエピソードは尽きないが、昭和36年8月18日に訪れたソ連のミコヤン第1副首相との懇談の際には、会長は「あなたは人民を解放されたが、私は家庭電化製品をつくって、家庭婦人を解放した」と述べ、ミコヤン氏を感心させた。

昭和37年2月7日に訪れた米国のケネディ司法長官は、工場を見学中にも、従業員に気楽に話しかけるなど、英明さとともに若々しさが人気を呼んだ。後年、兄のケネディ大統領に続き、不幸な最期を遂げた人であるが、「日本とアメリカは立派な民主主義の国だから、意見の相違があっても、話し合えば必ず解決できる」という言葉は印象に残った。