一期一会の感動を描き出す空間の表現技術

高輝度プロジェクター

高輝度プロジェクターは、プロジェクションマッピングによるイベントや会場演出、博物館での映像演出などさまざまな場で活用しています。非常に多くの視聴者との映像コミュニケーションに関わるものであることを考えると、単に輝度を高めるだけでなく、動画映像をいかに滑らかに表現するかといった表現力や、投影時の静音性、設置の容易性や自由度を高めるための小型・軽量化などが求められます。当社は、多様なユーザーニーズを捉え、総合力を投入して新たな技術を開発・提案し続けてきました。その努力が、現在12年連続でのグローバルトップシェア獲得につながっています。

1977-2000

高輝度というブルーオーシャン戦略へ

当社初のプロジェクターは、1977(昭和52)年に発売したCRT方式の「TH-6000」。大人数で見るパビリオンや常設展示室向けでしたが、光出力はわずか650ルーメン程度で、部屋を真っ暗にしてようやく画像が認識できるレベルでした。

1995年にポータブルプロジェクター市場に参入し、3LCD方式を採用した「TH-L390」を発売。しかし、この市場は競合が多く、価格競争が激化していたため、当社は、よりAV技術力の高さが求められる公共施設、展示・博覧会用途に向けた高輝度プロジェクター市場へと舵を切りました。

1999年に発売した「TH-D9500」では、DLPR方式を採用して9,000ルーメンという当時業界最高の高輝度を実現。高輝度の分、温度上昇が激しくなるため、その冷却ファンの騒音を抑える「アクティブサイレンサー」技術を開発し、騒音を従来品の5分の1まで低減させました。
翌2000年に発売した「TH-D9600」は12,000ルーメンまで業界最高輝度を更新しました。

業務用プロジェクター1号機「TH-6000」
業務用プロジェクター「TH-D9500」
DLPR方式の仕組み

2001-2008

小型・軽量化と高輝度化の両立

高輝度プロジェクターの重量は100kg近かかったため、設置性が課題でした。
その要因の一つがキセノンランプで、高輝度を追求するほどランプが大きくなる上、発光効率が低く寿命が短い、さらに、プロジェクター移送の際には取り外して専用ケースで運ばなくてはいけないといった欠点を抱えていました。

当社は、小型で発光効率が高く、寿命が長い超高圧水銀ランプに注目します。このランプの光出力は300W程度が限界のため、これまで高輝度プロジェクターでの採用は見送られていました。そこで発想を転換し、複数の超高圧水銀ランプを光源にして、プリズムによりそれらのバラつきを均一化した業界初の4灯合成光学システムを開発。2006年に発売した「TH-DW10000/D10000」に搭載しました。

さらに約2年の研究を経て、光学システムの集光効率を17%、超高圧水銀ランプの電力を14%向上させることに成功し、2008年に発売した12,000ルーメンの高輝度プロジェクター「PT-DZ12000/D12000」に搭載。圧倒的な小型軽量化、低消費電力を実現したこの商品は、プロジェクターのレンタルや展示用途市場で「定番モデル」と呼ばれるほど高い評価を獲得しました。

キセノンランプと超高圧水銀ランプの性能比較
複数の光源を用いつつ均一な映像投影を実現した4灯光源方式
高輝度プロジェクター「TH-DW10000/D10000」
コンセプトはハーフ(1/2)

2009-2012

デジタル時代への鼓動。
鑑賞スタイルの変化に応え続ける

2008年の北京オリンピックの開会式は他社製のプロジェクターが採用されました。理由は20,000ルーメンの要求に応えられなかったからです。当時、他社製と同様の1灯式を採用すれば20,000ルーメンを実現できましたが、当社は多灯式にこだわりました。理由は「4年に一度の祭典、1灯が故障しても残りの灯で演出を継続できる安全性も、当社が提供すべき価値」と判断したからです。

「次のオリンピックでは必ず」と誓い合った開発陣が挑戦したのは、市場の常識を覆す「ハーフプロジェクター」の開発でした。「薄型4灯合成システム」や「ハイブリッド冷却システム」を考案し、サイズ・重量を半分にするだけでなく、低騒音化にも圧倒的な優位性を持つ「PT-DZ21K」が2012年に完成。同年のロンドンオリンピックでは26台のプロジェクターが納入され、開会式・閉会式の壮大な演出を支えました。
当社の高輝度プロジェクターは、その後2014年ソチ、2016年リオ、2018年平昌でも継続的に使用されています。

20,000ルーメンの製品のスペック比較
ロンドン2012オリンピックで用いられたプロジェクションマッピング
デュアル蛍光体ホイール方式

2014-

高度な技術が超単焦点レンズを実現

高輝度モデルにおいて、2018年まで12年連続でグローバルトップシェアを維持している当社は、さらにお客様のニーズに応えるため、単焦点レンズに挑戦。従来比40%のスペースで200インチの投影を目標に定めました。

10,000ルーメン未満のプロジェクターでは、既にそのスペックは実現できていましたが、超広角・超単焦点の当社レンズはプラスチック製だったため、高輝度モデルでは耐熱性の問題から使用できず、耐熱性の高いガラス素材では、精度を保ちながら生産可能な成型技術も所有していませんでした。

そこで、ビデオカメラの高ズームレンズやLUMIXの高性能レンズを開発し続けてきた山形工場を中心とするレンズ工法・モノづくり部門に白羽の矢が立ち、従来比1.5倍以上の大口径非球面ガラス成型工法への挑戦が始まりました。当社独自の世界初のガラス成型技術「大口径ガラスモールドレンズ技術」を確立し、ガラス製の非球面レンズと非球面ミラーの生産に成功。2014年に世界初の高輝度プロジェクター向け超単焦点レンズ「ET-D75LE90」が誕生しました。
このレンズはプロジェクターの応用範囲を拡大し、新規顧客の開拓に成功しました。

超単焦点レンズ「ET-D75LE90」
スクリーンに対し近接した上部から投射できるため、
観覧者にさえぎられることもなく、空間演出の可能性が劇的に向上した
地下鉄での設置例
高輝度プロジェクター「TH-DW10000」(左)、「PT-DZ21K」

関連リンク

パナソニック ミュージアム