生産・輸送・消費過程を低温に保つ物流システムを構築

コールドチェーン

当社は1960(昭和35)年以降、欧米の冷蔵技術をベースにBtoB機器群での事業化を推進してきました。当時、生鮮食品や医薬品などを、生産・輸送・消費の過程で途切れることなく低温に保つ「コールドチェーン構想」による、鮮度維持を主目的とした物流方式が、ビジネスや小売のあり方を変革していました。現在では鮮度維持や適温提供も加わり事業を推進しています。いかにして技術開発を進め、業界No.1事業に成長させたのかを「ショーケース」を中心に紹介します。

1960-1963

アイスクリームストッカーの電化でBtoB業界に参入

コールドチェーン事業は、冷凍・冷蔵技術を用いた食品冷却機器や物流システムで、生産地と食品販売店をつなぎ、食品を消費者まで衛生的かつ安全に供給できるようにするものです。「多品種少量」の生産体制が特徴で、スーパーマーケットやコンビニエンスストア向けのショーケースのほか、物流業者が活用する低音物流機器、保管倉庫を冷却するバックヤード冷蔵機器、業務用冷凍・冷蔵庫、製氷機など、生産可能機種は数千にのぼっています。

当社コールドチェーン事業の原点は、1960(昭和35)年に三洋電機が製造を開始した「アイスクリームストッカー SCR-040」です。当時アイスクリームはドライアイスを詰めた大型の魔法瓶で販売されていましたが、温度管理が難しい上に、少量しか保存できなかったため、夏場は需要に追い付けない状況でした。そこで、冷蔵庫と同じ仕組みで、小型コンプレッサーと自動温度調節器を搭載し、庫内を常に約マイナス20度に保つことができる「SCR-040」を商品化。当時としては画期的で、約6,000台製造した1号機はたちまち完売、翌年には年間3万台を生産する大ヒット商品になりました。

1961年には、ガラス扉付きの冷凍ショーケース、翌年には冷蔵ショーケースを自社開発して発売。いずれも大手電機メーカーでは初めての量産化でした。
さらに、1963年には展示効果の高い「タテ型四面ガラスの冷蔵ショーケース」を開発。あらゆる方向から商品が見えるディスプレイ効果の高いこのデザインは、後に冷蔵ショーケースの主流になりました。

アイスクリームストッカー「SCR-040」
タテ型四面ガラスの冷蔵ショーケース

1963-1969

日本初、連結可能な
スーパーショーケースを生産

1963年、日本でもスーパーマーケットが台頭することを予測し、コールドチェーン事業先進国のアメリカのトップメーカーであるウェーバーショーケース・アンド・フィクスチュア社と技術援助契約を締結。翌1964年に、何台も連結することを可能にしたスーパーショーケースを、国内メーカーとして初めて生産しました。これは「エアカーテン方式」を採用した、当時では最新鋭のタイプでした。

折から、スーパーマーケットが各地にオープンし、生鮮食品や冷凍食品を陳列する大型オープンショーケースの需要が広がりはじめていました。当時、一般販売店向けの小型ショーケースで業界No.1の地位にいた三洋電機は、スーパーショーケースの国産化に先鞭をつけることで、着実に市場を広げていきました。

日本初、連結可能な「スーパーショーケース」
50年続くディスペンサー開発

1970-1983

時代に対応した省エネ機器を開発し、業界をリード

1973年の第1次オイルショック以降は、省エネ技術の開発に注力。スーパーショーケースから流出した冷気を足元から回収して冷房に再利用、逆に冬場は冷凍機の排熱を暖房に利用できるヒートリクレイム(熱回収)システムを開発しました。

1975年には、エアーカーテンの性能を上げたり、熱源となる照明安定器を庫外に設置したりすることで20~25%の節電を可能にした「省エネ型ショーケース EEシリーズ」の開発に着手し、新シリーズを相次いで発売しました。

電気料金が平均5割も値上がりした1980年には、大手繊維メーカーと共同で、赤外線などの熱線を遮断し、庫内の温度上昇や商品の変質を防ぐ特性を持つ、熱線反射フィルム「クールガード」を開発。冷凍ショーケースで約8%、冷蔵ショーケースで約15%の節電を実現しました。

その後、1998年には電力会社と共同で、夏場の電力使用がピークの時間帯に、スーパーショーケースの照度コントロールを行い電力消費を削減する、「デマンドセットバックシステム」を開発し、大幅な省エネに貢献しました。

熱線反射フィルム「クールガード」は、
冷凍ショーケースに高い節電効果をもたらせた

1984-1990

氷温技術による
高鮮度管理機器の開発

1984年には、業界初の氷温ショーケース「平型オープンタイプ CEM-W86UF」を開発。翌年には、氷温ショーケース「多段オープンタイプ FZWシリーズ」と業務用氷温庫を業界で初めて製品化しました。
氷温とは0度以下かつ、食品の凍結点以上の温度帯で、ここを維持することにより、食品を凍らせることなく鮮度をより長く保つことができ、熟成による食品の旨みを引き出すこともできます。

氷温ショーケースは、冷却中はもちろん霜取り中も食品温度が0度を超えないことが条件のため、非常に厳しい技術が要求されましたが、エアカーテン技術、デフロスト技術、高精度温度制御技術などの最先端技術の総合力で実現。発売わずか1年で、精肉、鮮魚用スーパーショーケースの30%が氷温タイプに切り替わりました。

氷温ショーケース
「平型オープンタイプ」(左)と、「多段オープンタイプ」
氷温ショーケースに搭載された
温度制御のメカニズム
氷温を守る「2重エアーカーテン」

1991-2014

究極の自然冷媒CO2採用とラインアップ化

フロンガスによるオゾン層の破壊など、地球環境問題がクローズアップされてきた1991年、三洋電機は特定フロン廃止への取り組みを開始しました。1992年に、発泡ガスに特定フロンを使用しない断熱材を開発。世界初のNon-CFC(クロロフルオロカーボン)を採用したスーパーショーケース「エコロラインシリーズ」を発売しました。

2006年には、シンプル&クオリティを追求したスーパーショーケース「EXシリーズ」を発売。オゾン層破壊係数ゼロの「R404A冷媒」への標準対応や、従来のφ32㎜管蛍光灯からφ16mmのT5管蛍光灯への切り替えによる省エネ性の向上、多彩な色調の製品ラインナップ、光学シミュレーションによる高反射型LED照明の開発など、スーパーショーケースは日々進化していきました。

スーパーショーケース「EXシリーズ」

2005年から、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の協力を得て、自然冷媒であるCO2冷媒採用のショーケースの開発に着手。2009年の10店舗でのフィールドテストを経て、2010年から冷凍機と併せた物件販売を開始しました。

冷媒による環境負荷の比較表

2015-

さらなる省エネと、環境対応をテーマとして

2015年に発売した「EVシリーズ」では、複数のセンサーで庫内や冷却器の温度を監視しながら庫内温度の変動を最小に抑える高鮮度管理を実現しました。また、ショーケースと冷凍機運転を店舗コントローラーで一元管理して、冷凍機の低圧圧力制御による省エネや、IoTリモートメンテナンスを行う「遠隔データサービス S-cubo」にも対応。ノンフロン対応の「搬送圧力コントロールタイプ」の冷凍機との組み合わせは、オンリーワン商品としてCO2冷媒の普及に大きく貢献しています。

ノンフロン対応の「搬送圧力コントロールタイプ」の冷凍機
「OCU-CR1001VF」
店舗向け遠隔データサービス「S-cubo」
ディスペンサー(左)とビールクーラー

関連リンク

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