高画質と小型軽量化。生活者としての完成を技術に
ビデオカメラ
一体型ビデオカメラの歴史は、1985(昭和60)年のVHSフルカセットを使った「マックロードムービー NV-M1」から始まりました。以後、ビデオと同様に、記録のための新規格や新しい記録媒体を進化させてきました。そのなかで差別化のポイントとなったのは、キレイに撮るための撮像素子の性能向上および、オートフォーカスや手ぶれ補正などの機能向上、持ち運ぶための小型軽量化、撮影時間の長時間化など、基本機能の進化や使用シーンを広げる機能でした。シェアを高めるために、ユーザーニーズをどう捉え、何をめざして商品を開発してきたのかを探ります。
小型軽量化、手ブレ補正で⼀気に普及
家庭でのビデオ撮影は、単独では録画でないビデオカメラとポータブルVTRの組み合わせで始まりました。1978(昭和53)年に発売した製品の価格は両方で約50万円、重量は約11Kgもありました。
その後、ベータ方式、8mm方式のビデオムービーカメラが他社から発売される中、当社はVHS方式の普及を図るため、1985年にVHSカメラ一体型ビデオ「マックロードムービー NVM1」を商品化。この製品は最長160分間の録画再生が可能で、重量も2.5kgと大幅な小型軽量化を実現しました。
その後、家庭へのさらなる普及をめざして徹底的な自動化を追求。世界初のピエゾ素子を使った新オートフォーカス機能を搭載して自動的に正確なピント合わせを実現した「マックロードムービー NV-M3」を同じ年の10月に発売しました。この商品には面倒な色調整を自動で行うオートホワイトバランス機能も搭載、「二つのオート機能が使いやすい」とお客さまから好評を得ました。
1986年には、VHSカセットを一回り小さくしたVHS-C(コンパクト)カセットを使用して重量を1.3kgまで抑えた小型軽量ムービー「マックロードムービー NV-MC3」を発売しました。
1980年代後半に入ると家庭用ビデオカメラ市場が本格的に立ち上がりはじめ、各社が差別化を図る中、小型軽量化への関心が高まります。そんな中、当社は別の軸での優位性確立にねらいを定めます。白羽の矢を立てたのは手ブレ補正技術でした。ビデオカメラの小型軽量化が進むと、撮影時の手ブレが起きやすくなるからです。まず、光学式の手ブレ補正技術を開発し、1988年に、世界初の手ブレ補正機能を搭載した民生用ビデオカメラ「PV-460」を北米市場に投入しました。これは、フルサイズのVHSカセットを使用し、肩にのせて撮影を行う大型のビデオカメラです。体格の大きいユーザーが多い北米市場では、手ぶれが起きないこの新機能が受け入れられヒット商品になりました。
しかし、これをそのまま日本市場に展開するわけにはいきませんでした。光学式の手ブレ補正機構を搭載すると、どうしてもカメラが大きくなり、小型軽量化を望む声の強い日本市場には適さないからです。
そこで、当社は本体重量を750gとした上で、世界初の電子式手ブレ補正技術「ファジィ・ジャイロ」を開発しました。これは、手ブレによりカメラが動いたのか、被写体が動いたのかを即座に判断してブレを補正する技術です。1990年、これを搭載したビデオカメラ「ブレンビー」が誕生。ユニークなネーミングの後押しもあり⼤ヒットしました。この商品の登場で、お客様のニーズが“コンパクトで軽い”から“手ブレしないきれいな映像が撮りたい”にシフトしました。
続いて、運動会撮影など“遠くのものを撮りたい”というお客様のニーズに応えて、ズーム機能を進化。1991年に従来の光学6倍から8倍へ、1992年には光学10倍、電子ズームを併用することで100倍の超高倍率を実現。さらに、業務用のビデオカメラに用いられていた高解像度・高ダイナミックレンジ・高色再現性に優れた3CCD方式を、民生用ビデオカメラに初めて搭載した「ブレンビー・プロ NV-3CCD1」を発表しました。
アナログからデジタル、
さらにSDカードへ
1990年代に入るとデジタル化の動きが急速に進展。1992年にCS放送がスタートし、テレビやビデオの画質が飛躍的に向上すると、家庭用ビデオカメラにも高画質や高度な編集機能が求められ、アナログでは限界になってきました。当社はこれに対応し、1995年にデジタルビデオカメラ「デジカム NVDJ1」を発売。撮影した映像をダビングしても画質が劣化しないデジタル方式は一気に普及し、1999年に発売されたビデオカメラの約92%をデジタル方式が占めるようになりました。
2001年には、「SDカードを普及させる新しい使い方を提案する商品の開発」を目的としたプロジェクトがスタート。2002年に「動画、静止画、音声(音楽)を1台で楽しむ」というコンセプトの、カメラでもビデオカメラでもない、手のひらに乗るSDマルチカメラ「D-snap」が発売されました。
新規格対応、新技術採⽤でさらなる高画質・高⾳質を実現
2006年のブルーレイディスクの規格化で、ハイビジョン映像へのシフトが一段と進行。当社もこの動きに呼応してソニー株式会社と共同で、標準画質からハイビジョン画質へのシフトや、テープからDVD、SDカード、ハードディスクなどの多様なメディアに対応するための「AVCHD規格」を策定しました。同年、この規格に対応した世界最小・最軽量のデジタルハイビジョンカメラ「HDC-SD1」を発売、世界に先駆けてSDカードへのデジタルハイビジョン映像の記録を実現しました。
2008年には、AVCHD規格では世界初となる3 M O Sシステムを採用したビデオカメラ「HDC-SD100」を発売。これはそれまで当社の強みであった3CCDの特長を継承しつつ、さらに進化させたビデオカメラで、低消費電力化、小型化、電池の長寿命化を達成、世界初の最低照度2ルクスでの撮影も実現しました。
「4K高精細」「ワイプ撮り」により、国内トップシェアを獲得
2015年、テレビ放送などの新たな規格として注目される「4K」に対応し、1秒間に30フレームの記録を行う「30p」を実現したデジタル4Kビデオカメラ「HC-WX970M」を発売。この機種には、メインとサブの二つのカメラで撮影し、親画面の隅に小さく子画面を表示させて、臨場感のある映像を記録できる「ワイプ撮り」を搭載しました。
新しいユーザーニーズに応える商品開発により、当社は2015年に国内シェアトップを獲得、2018年まで4年連続で首位を維持し続けています。