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鯖江の微細加工の技が支えた進化

「ナノイー」「ナノイー X」デバイス

2003

2001(平成13)年、住空間の空気浄化を探求していた松下電工の技術者たちは、水が持つ脱臭のチカラに注目した。ニオイのする部屋で霧を吹くと、水が臭気成分を溶かしニオイが抑えられていくのだ。しかし、霧はすぐ床に落ちていき、床も湿ってしまう。もし、水の粒子を霧よりも微細化できれば…。そこで注目したのが、広島大学で研究が進められていた「静電霧化」という技術だった。水に高い電圧をかけると、水は「レイリー分裂」によって霧のおよそ100分の1の直径の超微細な粒子になるのだ。
問題は、空気清浄機やエアコンに収まるようなコンパクトな、しかも量産できる「レイリー分裂」のデバイスをつくることができるかどうかだった。

開発を命じられたチームは、さまざまなデバイスのアイディアを出し、試作と実験を行った。わずかに離れた二つの電極。その片方に毛細管現象によって水を放電部に集め、二つの電極に高電圧をかけると水は分裂し、水の微粒子が発生する。チームは電極の素材、形状、距離などを幾通りも変えて実験を繰り返した。そしてついに、空気清浄機に設置すると明らかに脱臭効果が得られるデバイスを生み出したのだった。このデバイスから生まれる水の超微粒子は、ナノサイズ(1nanoメートル=10億分の1メートル)の電気を帯びた(electric)水の粒子であることから「ナノイー」と名付けられ、初の「ナノイー」製品「エアーリフレnanoe」が2003(平成15)年に発売された。

空気清浄機「エアーリフレnanoe」
EH3000

その後、「ナノイー」は脱臭以外に、除菌やアレル物質の抑制など、さまざまな効果を持つことが分かってきた。これらの効果は、水だけでは説明がつかない。大学の協力も得ながら研究を進めていくと、水の超微粒子の中には放電することで水が変化した「OHラジカル」が大量に含まれており、それがさまざまな効果をもたらすことが分かってきた。不安定な状態の「OHラジカル」が、水(H2O)に戻るために菌やウィルス、アレル物質などが持つ水素(H)を抜き取り、それらを抑制するのだ。

このさまざまな空質改善に大きな効果を持つ「ナノイー」を、いろいろな家電製品へ応用していくため、開発チームは「ナノイー」デバイスの小型化とOHラジカルの発生力強化を進めていった。ペルチェ素子を使うことで空気中の水分を結露させ「タンクレス」化を実現。さらに、電極の素材としてベストでありながら微細加工が困難だったチタンを、福井県鯖江市の眼鏡の超微細加工職人に依頼することにより「ナノイー」デバイスの素材にすることに成功した。こうした進化への飽くなき追及により、「ナノイー」の10倍のOHラジカルを発生する「ナノイー X」が2016(平成28)年に誕生した。

ここから「ナノイー」の空気環境改善は、パーソナル空間から会議室やホール、電車などのパブリック空間へと拡がっていった。「ナノイー」の進化をめざす「ものづくり」の探求は、これからも続く。

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