世界中が歓迎、ターンテーブルの「標準原器」に

ダイレクト・ドライブ方式 ターンテーブル

登録年:2013年
登録番号:00131
品番:Technics SP-10
製作者:松下電器産業株式会社
製作年:1970年

登録基準:
1.-【イ】科学技術の発展の重要な側面及び段階を示すもの
1.-【ロ】国際的に見て日本の科学技術発展の独自性を示すもの

レコードプレーヤは、同じ速度で回るターンテーブル上のレコード盤に針を落として音楽を再生する大変シンプルな機器ですが、その駆動源のモータは、毎分数百~数千の高速回転をしているため、それを毎分33.3回転(LPレコード)にまで減速する必要があります。当時のレコードプレーヤの多くは、小さいモータと大きいターンテーブルをベルトで繋ぎ、その直径比で回転スピードを下げていました。しかし、モータが高速回転するため振動が発生したり、ベルトの伸縮による回転ムラが生じたり、ベルトの寿命が短いという課題がありました。

これらを解消するためテクニクスの技術陣は、低速で高精度に回転するモータの独自開発を決断します。苦心の末、低速回転のブラシレスモータと、半導体による制御回路を新開発し、ターンテーブルがモータに直結して動く機構を実現。1970年に世界初のダイレクト・ドライブ方式ターンテーブル「SP-10」が誕生しました。

ターンテーブルとモータの直結は、振動発生源との直結を意味します。これまで誰も試みなかった方式でしたが、ちょうどこの時期、半導体素子を使用する電子回路が回転制御に使用され始めたことも、大胆な発想を成功に導いた要因だったと言えます。また、徹底した音へのこだわりから、研究室の近くを走る電車の振動すら検証の邪魔になり、終電が通り過ぎるのを待って真夜中に実験を開始。無音レコードをかけると静寂が広がっていたというエピソードが残っています。

ターンテーブルがアナログレコードの回転数そのままに回る「SP-10」が実現した静粛性、ムラが少なく正確な回転数は驚異的で、加えて、その性能を長期間保つ信頼性も評判になりました。オーディオファンはもちろん、放送局などの業務用の世界でも高い支持を獲得。それから5年後の1975年に発売された「SP-10MK2」はクオーツ制御を採り入れ、「30分のLPレコード再生後の誤差が±0.036秒」という人間の検知限界を超えた値を実現。イギリスのBBCを始めとした世界25か国の放送局で1,300台以上が採用され、ターンテーブルの「標準原器」と呼ばれるようになりました。また、このモータの回転制御技術は、この後、VTR、CD、DVD、HDDなどの基幹技術として発展していきます。

カナダ国営放送CBCで活躍するSP-10(1974年)

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