市場を急拡大した「1万円テレコ」
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小型オープンリール・テープレコーダ「マイソニック」
登録年:2018年
登録番号:00245
品番:RQ-303
製作者:松下電器産業株式会社
製作年:1963年
登録基準:
2.-【イ】国民生活の発展、新たな生活様式の創出に顕著な役割を果たしたもの
![マイソニックの隠れた魅力ポイント](/content/dam/panasonic/phd-jp/ja/corporate/about/history/panasonic-museum/know-ism/archives/20221217/10/2008_08_2.png)
日本が高度成長のまっただ中にあった1960年代はじめ、戦後のベビーブームに生まれた「団塊の世代」が高校進学の時期を迎えていました。彼らが自宅学習用として注目したのがテープレコーダです。テープレコーダはいよいよ普及期を迎えようとしていました。
しかし、当時の普及モデルの価格帯は2万円で、各社は、このクラスの製品に注力していました。
録音機事業部長(当時)の松本正男は、このタイミングを絶好のチャンスととらえ、「一般消費者にテープレコーダを親しませ、テープレコーダ人口を増やしていこう。そのためにはもっと使いやすい、親しみやすい、しかもお求めやすいテープレコーダを開発せよ」と命じました。さらに「価格は、現在の市場価格2万円の半額とする。思い切った目標を持ったほうが既成概念にとらわれず新しいアイデアを生み出せるものだ。そして“機械” ではなく“商品” でなければならない」という注文をつけました。
市場価格の半値で作るためには、発想を大きく変えなければなりません。3号リール専用とし、速度も4.75cm/s の1速のみに絞り込み、小型軽量化を追求。また、オールトランジスタの採用と大量生産に適応した同時加工の多用で、組み立て工数を半分以下に削減しました。さらに、録音・再生・消去の3つのヘッドをコンパクトなケースに収めた画期的な「3in1ヘッド」を新たに開発して合理的設計を徹底。その上で、価格は半分でも上級機と同じ大型キャプスタン駆動を採用するなど、大型機にひけをとらない音質も追求していました。
1963年、価格1万円のテープレコーダ「マイソニック」が完成。同年9月に「1000万学生諸君のマイソニック(RQ-303)」が発売されると、市場の熱狂的支持を得ました。メディアも若者向けのテレコに大いに注目し、専門紙、一般紙を問わず、「マイソニック」の記事が連日紙面をにぎわした結果、この製品は国内市場占有率50%を超え、市場のリーダーシップを握りました。
その後、マイナーチェンジを加えた「マイソニック 300」が発売され、両機種で50万台を超えるテープレコーダ史上かつてない大量販売記録を達成。「マイソニック」は、その後のAV機器開発の指針になりました。
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「マイソニック」の出荷式の様子(1963年)