世界最初期の省電力タイプ

高力率型交流アーク溶接機

登録年:2017年
登録番号:00239
品番:LAW-300-3型
製作者:松下電器産業株式会社
製作年:1961年

登録基準:
1.-【イ】科学技術の発展の重要な側面及び段階を示すもの

アーク溶接の原理メカニズム 1.電極と母材(溶かしたい金属)の間に電圧をかけます。 2.電極と母材間の絶縁が破壊されると電流が流れます。 3.電流が流れるのに伴って、弧状の強い光(アーク)と高温の熱が発生します。 4.この熱で母材を溶かして行う溶接を「アーク溶接」といいます。

金属は、加熱することで溶けはじめます。溶けた金属を混ぜ合わせ、その後、固めることで一つに接合するのが溶接の仕組みです。この溶接技術は、造船、橋梁などの大規模なものから、自動車部品や配管など身近なものまで、私たちの日常生活におけるさまざまな場面で活躍しています。

コンデンサ(電気を蓄えたり、放出したりする電気部品)を主要製品としていた当社の配電器事業部が、溶接機業界に参入したのは1957年のこと。当時、日本は高度経済成長期を迎え、船や自動車などの生産や道路・ビルなどのインフラ整備に必要な溶接機需要も旺盛になっていました。造船や橋梁などで使用されていた、放電を利用して鉄を溶かして接合する交流アーク溶接機は、電気の向きが変わる度に放電が減衰し、再放電に必要な高い電圧を得るために、無駄な電力消費を招いていました。当然、電気料金がかさむため、溶接機を使用する業界の省電力化へのニーズは高く、交流回路において無効電流を削減する当社の進相コンデンサの有力顧客になっていました。

ならば、溶接機メーカーに、最初から進相コンデンサを搭載してもらえばいいのではないか。こう考えた事業部は、溶接機メーカーへの売り込みを開始。しかし、溶接機の価格が高くなることから、どこも採用してくれません。こうした状況を知った創業者・松下幸之助は、次のように発想しました。
「それであればいっそのこと、松下でこのコンデンサを組み込んだ溶接機をつくり、お客様の要望に応えよう
これで事業部での溶接機開発がスタートし、1957年9月、自社製の進相コンデンサを内蔵した「高力率型交流アーク溶接機LAW型」が完成しました。

その後さまざまな改良が加わり、4年後の1961年に3世代目として誕生したのがこの溶接機で、船舶業界で実際に長年使用されていたものです。電力の位相差を解消する進相コンデンサの採用で大幅な節電を実現したこの製品は、世界最初期の高力率型可動鉄心形交流アーク溶接機で、溶接技術の発展を示す重要な資料として評価されました。

進相コンデンサのポスター(1953年)

ここでも活躍!

5000年後の未来への封印
~タイム・カプセルEXPO'70を溶接~

1970年に開催された日本万国博覧会(通称:大阪万博)の松下館のメイン展示であったタイム・カプセル。これは「当時の生活文化を象徴する2,098点のモノを収納して、5000年後の未来の人類に届ける」という壮大なスケールの企画です。そのタイム・カプセルの蓋は当社の溶接技術で封印されました。5000年間、外の空気を完全に遮断し、しかも中の収納品にはダメージを与えないためには、高度な技術を要求されます。これに、タイム・カプセルと同じ金属で何層も溶接する当社の共金(=トモガネ)技術が採用されました。

(当館と大阪歴史博物館に展示されているタイム・カプセルは、当時、実際に展示・埋設されたものと同時に製作されたものです)

EXPO'70 松下館でのタイム・カプセル展示風景(1970年)

展示終了後、TIG溶接でタイム・カプセルの蓋を封印(1971年)

その他の製品

空気湿電池

ダイレクト・ドライブ方式ターンテーブル

噴流式電気洗濯機

ビデオカメラ「ブレンビー」

デジタルビデオカメラ

ボトル用自動販売機

小型オープンリール・テープレコーダ
「マイソニック」

アイソレートループ方式オープンリール・テープデッキ

DVDプレーヤ

横置きスクロール圧縮機搭載ルームエアコン コンパクト室外機

次代に技術を継承することを目的とした「未来技術遺産」の登録制度。選定基準や登録までの流れなど、インタビュー付きでご紹介。

2022年に新たに登録された3点の製品と開発秘話をご紹介。

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