間取り、食材・・・、進化の全てが日本の食文化への答え
食器洗い乾燥機
1960(昭和35)年、冷蔵庫や洗濯機を普及させてきたものと同様、主婦の家事労働軽減に寄与したいという思いで、当社は日本初の電気自動皿洗い機「MR-500」を発売しました。しかし、その意図に反して家庭にはなかなか入りませんでした。26年後の1986年に発売した「NP-600」により、ようやく普及の兆しが見えましたが、依然として狭いキッチンへの設置、欧米とは異なる日本の食文化への対応などが障壁となり、「苦難の連続」でした。市場を見据えた商品開発により、お客様のくらしへの浸透を図った歴史を振り返ります。
黎明期。
主婦の家事労働軽減への想い
外食産業が黎明期を迎え、業務用の自動皿洗い機が出回り始めた1950年代後半、当社は「もっと主婦に自由時間を」をコンセプトに、家庭でも気軽に使用できる食器洗い乾燥機の開発に挑戦し、1960(昭和35)年に日本初の「電気自動皿洗い機 MR-500」を発売。しかし、“日本の狭いキッチンには置けない”ということが大きな課題でした。
“卓上に置ける食器洗い機”という至上命題のもと、8年間かけて洗浄ポンプなどの部品を小型化するとともに、ノズルの改良により洗浄力を保ったまま洗浄機構をミニマイズした「回転噴射方式」などを開発し、1968年に日本初の「卓上型食器洗い機NP-100」を製品化しました。
食文化を見つめた挑戦。
ノズルの進化と洗剤の開発
1980年代前半まで、日本の食器洗い乾燥機の普及率はゼロに近い状態でしたが、1986年に発売した「キッチン愛妻号 NP-600」がその流れを変えました。この商品の開発には、営業スタッフが大きく関わっていました。食器洗い乾燥機を使用している家庭を50軒近く訪問してヒアリングした結果「開発サイドの思い込み」に気づきます。
また、日本の食文化は、欧米に比べて食器の形状が多様で、加えて、“米食によるでんぷん汚れ”と、洋食による“油脂汚れ”が混在しているため、日本独自の洗浄スタイルが必要でした。
1992年に発売した「NP-800」では、「游星ダブルノズル」を開発。これは親ノズルに付属された子ノズルが別の円軌道を描くことで、ランダムかつ均一に水流を噴射し、食器の間まで水流を到達させることを可能にした画期的な技術でした。
同時に、でんぷん分解酵素(アミラーゼ)と、たんぱく質分解酵素(プロアテーゼ)を配合した専用洗剤を独自開発し、「米食による落ちにくい汚れ」を解消。環境問題に配慮した無リン化も実現しました。
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コンパクトさと設置性の追求。
「これなら置ける」
ノズルや洗剤の技術開発を進めてきましたが、この時点でもまだ「日本のキッチンの狭さ」が最大の課題になっていました。
「ウチのキッチンには置けない」というお客様の声を聞き、設計者だけでなく企画担当者やデザイナーも同行し、発泡スチロールのダミーモデルを4種類持参して、70世帯に訪問調査を行い、感覚的・実際的な意見を収集しました。
この結果をもとに、あらゆる機能・部品を総合的に見直し、従来比奥行き約35%、設置面積約20%削減を実現した「NP-33S1」を1999年に開発。マンションなど集合住宅への設置可能性は3倍に向上しました。
環境意識が高まりエコの時代に。
節水性への挑戦
人々の環境意識の高まりに対応し、2003年に「ナショナルの食器洗い節水力」という新たなコンセプトのもと、使用水量を従来から2L削減し、業界最小の12Lを実現した「NP-50SX3」が誕生しました。
続く、2004年に発売した「卓上型 NP-60SS5」では、「汚れはがしミスト洗浄」を採用し、日本の食文化ならではの課題であった茶渋や、女性の口紅などの汚れにも対応できるようになりました。
2005年の「除菌ミスト」による衛生意識、2009年の「エコナビ搭載」による省エネ意識への対応など、食器洗い乾燥機はその時の顧客志向を把握してタイムリーな商品化を行い、2017年6月に販売累計1000万台を達成しました。