マーケティングと技術の融合が創出した新市場

美容家電

「Panasonic Beauty」の名で知られる美容家電。特にナノケア技術を搭載したヘアードライヤーは、20~30代の女性では知らない人がいないほどの人気シリーズになっています。その原動力になっているのが、顧客ニーズにしっかりと応え続けているマーケティングと、長い歳月をかけて築き上げてきた固有技術。「マイナスイオン」や「ナノイー」で“髪と地肌のケア”を実現したヘアードライヤーと、刃と駆動メカに磨きをかけ続け“ワンシェーブ・フィニッシュ”を追求したシェーバーにスポットを当てて技術の変遷を紹介します。

ドライヤー編

1937-1985

第1世代-いかに速く乾かすか

当社の美容家電の1号機は、1937(昭和12)年に発売したアタッチメントプラグ式のホームドライヤー「#3930」です。モーターは電気バリカンに使われていた整流子モーターを使用、風は4枚のプロペラファンで送っていました。

1962年に発売したピストル型の「EH58」は、握りやすく髪に当てやすい機能的なデザインが評価され、その後約20年間この形が継承されました。以来、「髪を速く乾かしたい」「髪にやさしい風」「もっと静かに」というお客様の要望に応えるための技術開発を推進し、乾燥の質を高めていきました。

ホームドライヤー1号機
「#3930」
ピストル型ドライヤー
「EH58」

1986-2001

第2世代-髪をもっと美しく

「髪へのダメージをいかに解消していくか」というヘアードライヤーの長年のテーマに対して、美容科学研究室のメンバーはスチームに着目、1987年にスチームクルクルを、1990年には「エステジェンヌ・イオンスチーマー EH240W」を開発しました。

この時点では、風量の大きいヘアードライヤーへのスチームの展開は発想外でしたが、ある時、女子社員が「肌に効果があるなら髪にも」と思いつき、イオンスチーマーに髪を当ててみると、髪がツヤツヤになりしっとりしました。これをきっかけにマイナスイオンによる髪の評価を開始、2001年にマイナスイオンで髪を美しくする第2世代のドライヤー「イオニティ EH-5403」が誕生しました。

エステジェンヌ・イオンスチーマー
「EH240W」
イオニティ「EH-5403」

2004-2006

第3世代-地肌ケアから髪に潤いを

マイナスイオンドライヤーが成熟段階に入ると、開発陣は次期商品として、空気清浄機でカーテンや壁についたにおいの脱臭に活用されていた帯電微粒子水「ナノイー」技術に注目しました。「ナノイー」の水分量はマイナスイオンの1,000倍以上もあり、寿命も長い。静電気抑制効果や毛髪引っ張り強度、ツヤ感などの実験に加え、モニターによる官能評価の結果、全ての項目でマイナスイオンを上回りました。「ナノイー」を搭載した初代ナノケア「EH5421」が2005年に発売されました。

初代ナノケアは、「ナノイー」を発生させるために水タンクが必要で、補給に手間がかかるという課題がありました。そこで空気中の水蒸気をペルチェ素子で冷却して結露させ、その水分で「ナノイー」を発生させる「ペルチェ冷却方式」を開発。わずか1年後の2006年に水補給がいらない「ナノケア EH5441」が誕生しました。

イオニティ ナノケア ウインドプレス「EH5421」
ペルチェ冷却方式の構造
「ナノイー」で髪がツヤツヤに

2007-

女性の感性を生かした商品づくり

ナノケア発売後は、実際に商品を使う女性がマーケティングや企画・開発を担当し、女性目線での商品づくりを開始。「なぜ髪が痛むか」を徹底的に分析した結果、その要因が紫外線によるダメージであることに気が付きます。
肌の美白ケアをするのと同じように、「ナノイー」が髪の紫外線ケアに有効であればと考え、2か月間髪の毛のモニタリングを行った結果、キューティクルをはがれにくくすることで、紫外線ケアや摩擦のダメージに抑制効果があることを発見。白金を加工した電極からプラチナマイナスイオンを発生する装置を開発し、2009年に「ナノイー」+プラチナで紫外線ケアができるドライヤーを発売しました。

キューティクルがはがれた状態
キューティクルが整った状態

次に注目したのが、人体に必要なミネラルの一種である亜鉛です。亜鉛を加工した電極からミネラルマイナスイオンを発生させ、「ナノイー」+ミネラルプラチナにより、キューティクルの密着性を高め枝毛の発生を抑えることを確認。2010年に、亜鉛電極から生まれるミネラルマイナスイオンを持った「ナノケア EH-NA92」を発売しました。翌2011年に発売した「EN-NA93」は、電極にかかる電圧特性の最適化で「ナノイー」の水分量を約1.5倍アップし、髪の地肌に潤いをもたらしました。

当社のヘアードライヤーは、単に髪の毛を乾かすだけの機能から、乾かしながらヘッドスパができるまでに進化してきました。これからも潤いと瑞々しさのある美しい髪づくりをめざして挑戦し続けます。

「ナノイー」の水分量を
従来の1.5倍にアップした
「EH-NA93」
ドライヤーの変遷

シェーバー編

国産初の電気カミソリ

1954(昭和29)年、松下電工の丹羽正治社長(当時)が、アメリカ視察中に電気カミソリを目にし、「これを日本でも作ろう」と決めプロジェクトを立ち上げました。当時は電気カミソリの存在すら知らない者が多く、全てが手探り状態からのスタートでした。

駆動方式は1935年に発売したバイブレータの電磁振動式を採用。これまでに経験がない「刃」の製造は難航しましたが、厚い鉄板を曲げ、そこに溝をつくったスリット刃をつくる「研削刃切り製法」を考案し、開発期間わずか1年で初の国産電気カミソリ「MS10」を開発しました。

国産初の電気カミソリ
MS10
電気でヒゲを剃る時代へ

1974-1991

高級シェーバー市場でシェアNo.1に

先行する世界のシェーバーに対抗するため、それらを超える剃り味への挑戦を開始しました。

刃の材質をはがね鋼からステンレス鋼に変更し、ソフトスタンプ加工を採用した1974年発売の「スピンネット ES620」は「渦は切れる」のキャッチフレーズで大人気商品になりました。

1枚刃での深剃りを追求した結果、1988年にV刃という半径3.5Rの尖った刃を開発し、カーボチタンVシリーズを発売。「黒牙」というニックネームをつけたこの商品は、高級シェーバー市場でシェアNo.1を獲得しました。

しかし、V刃には深剃りには有効だが、肌への負担が大きく、ヒゲ剃り時間が長くなるという課題がありました。それを解消するため2枚刃の検討を始めます。

試行錯誤の末、2枚の刃それぞれにサスペンションを付け、独立して上下するフロート機構を開発。肌にやさしく、アゴ下やノドの凹凸部でも滑らかな肌当たりを実現しました。さらに、深剃り性能の高いV刃をヒゲ起こし効果の高い感覚になるように配置したツインカット機構も採用した「ES702」を1991年に発売。ツイン&フロートを搭載したこの商品は、複数刃の先駆けとして革新的なシェーバーになりました。

エッチング方式の従来刃

ソフトスタンプ加工のスピンネット刃
ツイン&フロート「ES702」
ツインカット機構
肌を伸ばし、クセひげを起こし、根元からカット

1991-1995

リニアモーター駆動のシェーバー誕生

濃いヒゲを早く剃り終えるには、内刃を速く動かすことが重要。しかし、回転運動を往復運動に変換する従来の回転式モーターでは毎分1万回転が限界でした。
そこで、新たに浮かんだのが、JRグループで開発が進められていたリニアモーターの採用でした。しかし、シェーバーにリニアモーターを取り込む開発は困難を極め、開発開始から商品化まで4年半の歳月を要しました。

1995年、世界初のリニアモーター駆動のシェーバー「リニアスムーサー ES881」が誕生。2枚刃の間に長いヒゲ用のスリット刃を加えた3枚刃にしたことで剃り残しを大幅に減少し、リニアモーター駆動でスピードアップした内刃は、すっと動かすだけで長いヒゲやくせヒゲも簡単に剃り落としました。

リニアスムーサー「ES881」
駆動源のN極とS極を切り替え
内刃を動かす「リニアモーター駆動」
リニアモーターカー技術でヒゲを剃る

2002-

「ラムダッシュ」で不動の地位を獲得

21世紀に入ると、世界No.1シェアをめざして、シェーバー専用のカテゴリーネーム「ラムダッシュ」を確立しました。
2002年に、“世界初 30度鋭角内刃”“世界最大可動全方位フロートヘッド”“世界最高速 ダイレクト・リニアドライブ”の「3つの世界一」を搭載した「ラムダッシュ ES8093」を発売しました。

開発メンバーは“ワンシェーブ・フィニッシュ”にこだわり、「4枚刃シェーブでの仕上げの深剃り」をめざし開発を推進。2007年にアゴ下の形状に密着するように開発した、立体構造のマルチフットアーク刃を搭載した「ラムダッシュ ES-8259」を発売しました。

2011年、5枚刃の「ラムダッシュ ES-LV90」を発売。肌と刃の接着面積を拡大することで、肌にかかる負担を軽減し、シェービング時間も4枚刃タイプの2/3に短縮しました。
さらに、リニアモーターの材質や構造を0.1mm単位で検証して、小型化した新しいリニアモーターを開発。この商品は、優れた機能・性能に加え、デザイン面でも評価され、ヒット商品になりました。

ラムダッシュ「ES8093」
Λ(ラムダ)はギリシャ語で「刃」を、ダッシュは「鋭さ、先進性」をを意味する
ストレート刃とマルチフットアーク刃の違い
5枚刃ラムダッシュ「ES-LV90」
シェーバーの変遷

関連リンク

パナソニック ミュージアム