【子ども分野】選考委員長総評
Panasonic NPOサポート ファンド 2012年募集 子ども分野 組織診断事業選考委員会での、選考経過についてご報告します。
今年度は、私を含む4名の委員で、選考させて頂きました。応募件数が10件と少なく、いささか寂しい状況でしたが、その分、1件毎の審理をじっくり行うことができました。最終的に採択されたのは、5件にとどまったのですが、これは予算の制限の問題ではなく、本助成の目的である組織診断を行うことが、当該団体にとって意義があるかどうかの判断を、慎重に行ったためです。
事前の書面審査の段階で、委員全員が一致して採択をしたのは、1団体のみでした。それ以外の団体の中の数件については、委員会での審議を経て、委員会が必要と判断した条件を定め、事務局、協働事務局がインタビューを行って再確認をしたうえで、採択を決定するということにしました。そもそも応募要件を満たしていないケース、明らかに助成の趣旨とは異なる事業を目的としているケース、実現可能性がいたって低いと判断されるケースなどは、この時点で不採択としました。
事務局による丁寧なインタビューが、時間をかけて行われました。その結果を踏まえ、事務局と委員長が再選考を行いました。この時点で採択に到った団体は2件でした。さらに、ここでただちに採択することができなかった中に、その活動の社会的意義が大きく、組織診断の意義を団体がもう一歩深く理解するなら、成果が望まれる可能性があると考えられた団体が2件ありました。そこで事務局が再度の面談を行い、助言も与えて、計画の若干の変更を行ってでも、組織診断を受ける意思があるかどうかを見極めたうえで、最終的に採択することにいたしました。こうしてようやく、5件のNPOが本助成を受けることとなったのです。
選考委員長 坪井 節子
(社会福祉法人
カリヨン子どもセンター)
正直なところ、助成団体の選考に、ここまで時間と労力をかける本ファンドの姿勢、事務局のご努力には、委員会としても頭が下がりました。日本のNPOが、その活動を充実させ、維持発展させていくことが、この社会を少しでも暮らしやすく、人々が幸せになれるように変革するために必須であり、そのためにはNPOの組織基盤強化が不可欠であるということを、NPOの世界に広く共通する理解としたいという熱意を、ひしひしと感じます。そしてこの選考過程そのものが、組織基盤強化の道になっているのだとも思いました。
NPOを運営していれば、その活動に行き詰まりを感じることは、いくらでもあります。その原因がどこにあり、どうすれば打開できるのかと、どのNPOも必死で考えているはずです。行き詰まりは、表面的には、資金難、人材難などの形で見えてくるわけですが、本助成は、直接にそうした難局を支援するものではありません。
あるいは事業内容そのものが問題となることもあるでしょう。そもそも社会のニーズをきちんととらえているか、ニーズと事業がマッチしているのか、事業の成果が出ているのか、事業の仕組みが採算のとれるものとなっているのか等々。しかし本助成は、そうした事業の評価を行うためのものでもありません。今回不採択となったり、ただちに採択することができなかった団体には、この点に誤解があると思われるものでした。
最終的に採択された団体は、行き詰まりの原因は、組織のあり方そのものに弱点があるのではないかということに気づいた団体だと言えます。そして外部のコンサルティングを率直に受け止めて、組織改革に挑むことを決意していました。組織改革には、痛みが伴います。理念や活動目的と事業との整合性判断、理事会や事務局メンバーの交代、意思決定プロセスの改革、外部の関係団体や行政との関係の変更や新たな構築など、それまで自分たちの中で良かれと思って走り続けてきた態勢そのものを、根底から見直すことになるのです。それはNPOを支えてきたメンバー、特に創成期を担ってきたメンバーにとって、かなりの覚悟を必要とするものとなるはずです。しかし、それを経なければ、当該組織は衰退し、活動の維持発展も望めなくなるのです。
今回、助成を受けることとなったNPOは、現在の行き詰まりを打開するためには、根本的な組織基盤強化が必要であるという認識に到り、最終的には内部のメンバーが一致して、これに取り組む意欲をもって、行動計画を立てられました。どうか組織診断がその目的を達して、それぞれのNPOの課題を明らかにし、対応策が見つかりますように。そして第二ステージのキャパシティビルディング助成に挑んで、実際に組織基盤強化に取り組まれますよう、祈念します。
そして願わくは、来年度以降の本事業への応募が、助成の趣旨を十分に理解する多数のNPOの申請であふれるようになり、選考委員にとって、不採択とすることが残念でならないと思える申請が続出するようになってほしいと思います。私自身、NPOの運営に携わる者のひとりとして、本ファンドの助成を通じて、日本のNPOの組織基盤強化が進み、NPOの活動が益々盛んになることを願ってやみません。