「グループDEIフォーラム 2022」開催レポート

写真:「グループDEIフォーラム 2022」の様子。スタジオには司会者2人が立っており、登壇者5人が着席。和やかな雰囲気で談笑している。 写真:「グループDEIフォーラム 2022」の様子。スタジオには司会者2人が立っており、登壇者5人が着席。和やかな雰囲気で談笑している。

パナソニックグループでは多様性推進の機会の一つとして、毎年、社内イベント「D&Iフォーラム」を開催してきました。2021年度からは、Panasonic Group DEI Policyの制定と合わせ、「グループDEIフォーラム」として展開しています。

2022年7月、第2回となる「グループDEIフォーラム2022」が2日間にわたり開催されました。社外からのゲストを含めた多様な出演者が東京・日比谷のオフィスを中心に集い、「話そう。気づこう。越えよう。」をスローガンにそれぞれの思いを語り合いました。その様子はオンラインで発信され、のべ14,000人を超える従業員がライブ視聴を通じて参加しました。現在は、アーカイブ映像や記事をグループ内に配信し、より多くの従業員の視聴を促進しています。

本フォーラム開催の目的は、「多様性を受け入れ、挑戦する一人ひとりが活躍できるように、DEIがグループの文化として醸成される契機にする」ことであり、主役は従業員一人ひとりです。
今回は、「DEIは『自分自身のこと』であることに気づき、一人ひとりが本気になる」こと、特に、「『これまでDEIに触れる機会がなかった従業員』にも新しい対話、気づきが生まれる」ことを意識しながら、各セッションが企画されました。

※所属や肩書などの情報は、イベント開催当時のものです。

グループのDEIポリシーや昨年の「グループDEIフォーラム 2021」を振り返り、グループ内のアンケート結果などを紹介。「あなたが思い描く、働きがいNo.1の会社像は?」という質問に対して最も多かった回答は「世の中、社会のためになる仕事ができる会社」でした。

写真:オープニングセッションの司会・進行担当を務める男女2人

オープニングセッションの司会・進行を務めたのはパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション(株)と、パナソニック オペレーショナルエクセレンス(株)のメンバー。

「アンコンシャス バイアス・トレーニング」の受講者が複数登壇。関連する自身のエピソードや、思い込みに囚われないようにすることの大切さについて意見を交わしました。

写真:オープニングセッションのパネルトークの登壇者たち

「組織の壁」「立場の壁」「障がいの有無」などをテーマに「思い込み」についてのエピソードを語り合った。登壇メンバーの一人である産業医からは「DEIへの取り組みは一人ひとりの心身の健康、特に心の健康に大いに役立つ」との見解も。

エピソード:「組織の壁」を話し合いで解決

工場の風土改革を担当しています。工場内の各部門で役割や求められることが違うため、部門間に摩擦が生じているかも、と感じるときがありました。しかし各部門のメンバーが集まって会話をすると、空気がほぐれ、よい雰囲気でコミュニケーションが取れました。皆、「いいものを作りたい」という思いは同じ。「少し話をすれば解決する」ことは実は多いのかもしれません。

エピソード:自分の「思い込み」と「決めつけ」にハッとした経験

以前の職場は忙しく、常に皆が仕事に追われている状況でした。ある日、私と後輩が上司に呼ばれ、新しい仕事を割り振られました。ところが後輩は「僕できないです」と言ったのです。私はそれを聞いてモヤモヤした気持ちに。上司は、「そうか、じゃあどういうヘルプがあればできる?」と尋ね、後輩は「これこれのヘルプがいただければできます、やります」と言いました。このやり取りから、私には、上司の指示にはとにかくイエスと答えねば…という「思い込み」があり、そうでない後輩に対し、「やる気がないの?」と「決めつけ」てしまっていたことに気づくことができました。以来、モヤモヤを感じたときは、相手に矛先を向ける前に、自分の心を見つめて言語化してみることにしています。

エピソード:上司と部下の「ミスマッチ」

産業医として受ける相談の中で、「思い込み」によるミスマッチに起因するものはよくあります。「上司が抽象的な指示をするタイプで仕事がしづらい」という相談が来ました。上司に聞いてみると、「この人は優秀でベテランなので、本人の裁量に任せるほうがいい」と考えて指示を出していたのです。しかし相談者は逆に、自分で采配をするのが苦手なタイプだった。そうした思いをお互いに素直に打ち明け合ってもらうことで関係が改善されました。

「発達障がいがあることを打ち明けてみたら、仕事内容は変わる?」「社内独自の用語によるすれ違い」といった、実際の業務上で起こり得るシチュエーションをベースに、ロールプレイを展開。視聴者もオンラインでアンケートに答え、リアルタイムでその結果が共有されるなど、インタラクティブな要素も盛り込まれたセッションとなりました。

写真:ロールプレイセッションの司会・進行担当を務める女性

司会・進行役は、パナソニック ホールディングス(株)のメンバー。

写真:ロールプレイを進行する女性2人

ロールプレイ視聴の後は、「発達障がいと一口にいっても、その症状は一人ひとり違うこと」「その人の能力を最大限発揮してもらうためにも『対話』が大切であること」などが語られました。

ロールプレイを実際に演じてみての所感

ロールプレイ テーマ1:

発達障がいがあることをチームメンバーに打ち明けてみたら、仕事内容は変わる?

障がいのことを上司に打ち明ける立場を演じました。言う前にすごく悩むだろうし、勇気のいることだということが想像できました。

同僚役を演じました。その障がいの内容を知っている場合とそうでない場合で、対応のしかたも違ってくるなと感じました。

上司役を演じました。当事者と周囲の人たちがお互いに情報開示して、どうすればいいかを相談し合う。そうすれば不必要な溝や「思い込み」も生まれず、うまくいくのではと思いました。

ロールプレイ テーマ2:

社内独自の用語による、すれ違い

キャリア入社(中途入社)をした立場を演じました。もしも会議中に自分の知らない社内用語が飛び交っていたら…私自身は性格的に「知らないので教えてください」と聞くと思いますが、もし深刻な会議で発言しづらい雰囲気だったら、人によっては聞けないまま、わからないままになるかもしれません。

社内独自の用語だということを特に意識せず使っている社員を演じました。自分にとっては当たり前の用語でも、社歴の浅い人をはじめ、実はその場にいる全員には通じていないかもしれない。その点をもっと意識しないといけないなと思いました。

上司役を演じました。シリアスな会議の場でも、皆が質問しやすい、発言しやすい雰囲気を作って、全員が意味を知った状態で議論を進めることの大切さに気づくことができました。

2日目・最初のセッションでは、ゲストとして認定特定非営利活動法人ReBit 事務局長の中島 潤(なかじま じゅん)氏が登壇。参加メンバーとの意見交換では、時として両立が難しく思われがちな「DEIと組織パフォーマンスの関係」を中心に、社会における様々な事例も交えつつ、会社と社会を変えるための身近なアクションについて考察しました。

写真:ヘッドホンをつけて、マイクを前に語る、認定特定非営利活動法人ReBit 事務局長の中島 潤(なかじま じゅん)氏
写真:社外有識者と対話する社員2人

トランスジェンダーであることを明かして民間企業で勤務した経験もある中島氏との対話が展開されました。

LGBTQを含めた、全ての子どもがありのままで大人になれる社会をつくるため、学校での出張授業や、企業のDEI推進支援を行っている中島氏。企業からは「DEIの推進で組織のパフォーマンスが下がってしまうのでは?」という疑問・相談を受けることも多いそうです。
「マネージャー層の方などから多くいただくお悩みは2つあります。1つ目は『多様性を認めると、何でもアリになって目標達成ができないのでは?』、2つ目は『色々な人が色々な意見を出すとコミュニケーション面のコスト増やスピードダウンが起こるのでは?』というものです」。

1つ目については、企業としての目標を語る際に、多様性を認めると「その目標は違うのでは?」という声が出てくることで、目標自体が迷子になってしまう、という事例があるそうです。
「大切なのはDEIを進めることが目標を変えてしまうことではない、ということ。例えるならば、あの山の頂上を目指すという目標があった時、山頂というゴールは変わらないけれど、誰がどうやって登るかは色々あって良い。DEIの推進は、登り方に幅や遊びを持たせることかなと思っています。

2つ目については、同じような人ばかりいた方が、阿吽の呼吸で業務を進められるのでは、と思われるようです。でも実際は、それが必ずしも組織としての成果に結びつかない。また、異質な人がいるチームのコミュニケーションコストが本当に高いかを分析してみると、必ずしもそうではない。
新しいことをする時、均質的なチームはまとまりが強く、スムーズに進むように見えます。しかし、いったん何らかの課題にぶつかった時に、『もう決まっているし、このままいこう』となりがちです。一方で、均質的でないチームの方が、途中からのやり直しや路線変更がしやすく、プロジェクトの成功までにかかったトータルのコストで見ると成果につながりやすいと言われています。
DEIが進んでいれば進んでいるほど、その組織はリスクを察知する力が高くなります。特に、意思決定層に多様性があることは、危機対応能力やレジリエンス(回復力)という側面でも重要という調査結果があります。DEIは組織の生存戦略の面でも重要な取り組みと言えるのです」。

グローバル各地でパナソニックグループのDEI推進を担当するメンバーが各国・地域の最新の取り組みについて語り合いました。日本代表として参加したのは、パナソニック ホールディングス株式会社 執行役員CHROでDEI推進担当の三島 茂樹(みしま しげき)。

写真:「Global DEI Meeting」のセッションにて、オンラインで意見交換するグローバル社員9人。画面右下に、手話で同時通訳している女性。

オンラインで日本・北米・南米・欧州・アジアのDEI推進担当者を繋ぎ、意見交換を行いました。執行役員 三島は中段左。

三島は、グローバルにDEIを広げていくうえで、今年度は「アンコンシャス バイアス・トレーニング」に注力していくこと、またグローバルメンターシッププログラムの導入を計画していることなどを述べました。
また、参加者がそれぞれの国・地域での取り組みを発表。グローバルとしての共通方針の推進と並行して、地域ごとに社会的関心や課題意識などに差異が大きいことも踏まえ、ローカル独自でのアプローチも重要との意見も挙がりました。

三島は次のように語りました。「グローバルにDEIを広げていく上で、大事にしていきたいこと。まずは、それぞれの国・地域の文化に根差した取り組みが重要である、ということです。どこででも通用する方法というものはありません。一律ではなく、それぞれの地域の創意工夫が必要です。もう1つは、そうした経験を国・地域や組織を越えてシェアしながら、お互いにサポートしあえる関係でありたいということです」。

参加者の声

DEIをこれから始める国や地域の人にアドバイスをするとしたら、「実現できないようなことをしようとしてはいけない」。明確なアプローチを選択すること。そして「なぜ」そのアプローチなのか、その根拠を明確にすること。そして「1に計画、2に計画」。持続性を保って前へ進むことが大事です。

冒頭、三島は、この1年間で多くのDEIの取り組みを実践してきたことを報告し、「全ての人が多様であり、その一人ひとりが挑戦をあきらめることなく社会へのお役立ちに向かっていく、そのためのDEIを推進していく」と、今後のさらなる取り組みへ向け強い意志を示しました。

写真:クロージングセッションに登壇したDEI推進担当役員の三島

このコメントを受けた最後のトークセッションでは、様々なバックグラウンドを持つ多様な従業員のほか、グループCEOの楠見 雄規(くすみ ゆうき)も参加。「自らの弱み」を付箋に書いて並べ、その弱みを他のメンバーの視点から見直してもらうことで「価値のあるもの」として捉えなおしてみる、という対話形式のワークショップが展開されました。

写真:トークセッションの様子。スタジオには司会者2人が立っており、登壇者5人が着席。和やかな雰囲気で談笑している。

楠見も含め登壇した社員がそれぞれ自分の認識する「自らの弱み」を披露した上で、それらを互いにポジティブに評価しました。それぞれが持つ「弱み、苦手なこと」にも、実は価値がある――お互いにそれを受け入れ、補い合っていくことの大切さを体感することができました。

フォーラムの締めくくりとして、楠見は「私自身にも苦手なことはたくさんあります。特に苦手なこと、分かっていないことは、いろんな方に知恵をもらったり、お任せしたりすることで補ってもらっている。この補い合いながら仕事をするというスタイルは、グループのあらゆるレベルの仕事の中で一番大切なことではないかと思う」と述べました。そして、「異なる視点で異なる意見を言うことで、多様な経験や知識を持つ皆さんの知恵や発案を結集し、 経営を行う。すなわち『社員稼業』と『衆知経営』を、本当に皆で実践するということを、グループとして目指していきたいと思います」とのメッセージを発信しました。

写真:クロージングセッションに登壇した楠見グループCEO

フォーラムの視聴者に実施したアンケートでは、以下のような声が寄せられました。

様々な切り口の「当事者」が登壇し、DEIとは誰か特定の人にスポットを当てることではなく、「一人ひとり」のことである、というメッセージが何度も繰り返されたのが良かった。

正直、DEIについては、「マイノリティのわがままを聞く」というイメージもあるんじゃないかと思っていたが、「マイノリティの声を聴き、改善することで全体が良くなる(WIN-WINになる)」という認識のうえで推進されているのを知り、新しい社会をイメージしているのだと、腑に落ちた。

とても良い取り組みと感じる一方で、「やっとここまで来た」とも思う。

寄せられた声を、今後のさらなる活動の推進に活かし、グループ全体で、意識向上に努めていきます。