当社グループは2019年5月にTCFD※1提言への賛同を表明しました。当社グループは気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題と認識しており、TCFD提言を踏まえ、リスクと機会を特定し、シナリオ分析による戦略のレジリエンスを検証しています。また、投資家等とのエンゲージメントを実施することを想定し、TCFDが推奨する開示項目である「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について情報開示を行っています。
※1 Task Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受けて、金融安定理事会により設置された気候関連財務情報開示タスクフォースのことであり、2017年に提言を公開
ガバナンス
当社グループでは、環境経営推進体制のトップには取締役会が位置しており、グループ環境経営について取締役会への報告を実施しています。
また、グリーンプラン2021で社会に約束した環境目標の主要項目に対する進捗と実績は、グループCEOと事業会社社長などの経営幹部が出席するグループ経営会議で確認し、方向性や課題、特に重要な施策について意思決定しています。特に重要内容は取締役会に諮られています。新たなグループ長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」は、このプロセスを経て、2022年4月に発信しております。グループの環境経営活動の推進にあたっては、2021年12月に設置された、グループCEOが主宰するサステナビリティ経営委員会での意思決定を通じて、グループ全体で連携して推進できる体制を構築しています。またテーマ別に推進する取り組みとして、具体的には、環境方針や環境目標の周知徹底や、課題に対する対応の討議についての委員会や製品化学物質管理についての委員会などがあります。
戦略
気候変動がもたらす影響について、当社グループ事業のリスクと機会を把握した上で、影響のある項目について当社グループ事業へのインパクト分析を行い、もっとも影響のある項目を軸に2030年を想定した社会シナリオを策定し、そのシナリオに対応した戦略を検討し、当社グループの戦略のレジリエンスを検証しました。
また、社会の低炭素経済への移行を支援する当社グループの目標として、以下のように設定しました。
- 2030年全事業会社のCO2排出(スコープ1、2)を実質ゼロとする
- 当社グループが販売した製品の使用によるCO2排出量を2030年までに2019年比で30%削減する
その具体的な取り組みとして、エネルギー削減、社会のエネルギー変革への貢献について紹介します。
まず、エネルギー削減の取り組み事例として、スコープ3の製品使用に伴うCO2排出が大きい照明の取り組みを紹介します。従来の照明設計で用いられる「床や机などの平面の照度」に加え、培ってきた快適性研究によって「空間の明るさ感」を指標化し、「光制御技術」と「適所適光による空間演出」のノウハウを駆使することで、快適性を損なわず、最大30%の省エネを実現していきます。
次に、社会のエネルギー変革への貢献事例として、電化によるエネルギー変革を紹介します。
社会のエネルギー変革の加速には、需要サイドで、化石燃料を燃焼させる機器を電気機器に置き換える、すなわち電化を進めていく必要があります。例えば、空気中の熱をヒートポンプで効率よく集め、少ない電力で温水をつくることができるヒートポンプ式温水暖房機は、新築住宅だけでなく、石油やガスのボイラーを使った既存住宅にも配管をそのまま活用して置き換えることができます。電化によって再生可能エネルギー由来の電気の活用機会が増えることに加えて、不安定な再エネの電力を温水として貯めることでエネルギーのタイムシフトができ、電力グリッドにかかる負担を抑えることで再エネの普及促進に貢献します。
リスク管理
当社グループは環境リスクを継続的に低減させていくためのマネジメント体制として、事業会社ごとの環境リスク管理体制を組織し、グループ全社のリスクマネジメントの基本的な考え方に則り、(1)毎年度、環境リスクの洗い出しとグループ全社リスクマネジメント推進、(2)環境リスク発現時の迅速な対応、を進めています。
また、当社グループでは、パナソニックホールディングス(株)(PHD)、事業会社および事業部の3つのレベルでリスクマネジメントを推進しています。事業会社で決定した重要リスクはPHDエンタープライズリスクマネジメント委員会に報告され、最終的にPHD機能の評価と各事業会社の評価を総合的に判断し、グループ重要リスクを決定します。2022年度は、グループ重要リスクのうち、戦略リスクとして気候変動への対応、オペレーショナルリスクとして地震・津波、水害・土砂災害が取り上げられています。
指標と目標
当社グループは、エネルギーを機軸とした環境ビジョン2050を公表し、環境ビジョン2050の実現に向けて、グリーンプラン2021を定めエネルギー量を指標とした短期の目標を設定していました。
また、エネルギーの指標に加え、温室効果ガス(GHG)削減の中長期の目標を設定し、2017年10月にSBT※2として認定を受けました。エネルギーの指標については、環境行動計画「グリーンプラン2021」で詳しく紹介しています。
※2 Science Based Targetsの略で、世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べ2度未満に抑えるという目標に向け、科学的知見と整合した削減目標
GHG排出量目標(SBT認定)
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目標 |
目標進捗率 |
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当社グループ事業活動における排出量 |
2030年に30%削減(2013年度比) |
137% |
2050年にゼロ |
41% |
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当社グループ製品使用に伴う排出量 |
2030年に30%削減(2013年度比) |
27% |
また、2021年5月、環境ビジョン2050実現へのマイルストーンとして、2030年 全事業会社のGHG排出量(スコープ1、2)を実質ゼロとするという目標を発表しました。
さらに、以下の気候関連指標について、それぞれの目標設定を検討中です。
移行リスク
将来的にカーボンプライシングが導入されることによる事業への影響はありますが、2022年3月、経済産業省が公表した「GXリーグ※3基本構想」に賛同表明し、自主的な排出量取引のしくみづくりに参画しています。
※3 「GXリーグ」とはGX(グリーントランスフォーメーション)に積極的に取り組む「企業群」が、官・学・金でGX に向けた挑戦を行うプレイヤーとともに、一体として経済社会システム全体の変革のための議論と新たな市場の創造のための実践を行う場として設立されるもの
物理的リスク
事業会社ごとに、自然災害リスクに対してリスクアセスメントやモニタリング、災害時対応などを実施しています。また、想定されるリスクに対して、影響度の大きさについて財務的評価基準を設定し、100億円以上を高とし、以下、中・低で評価しています。
気候関連の機会
2022年4月に発信したGREEN IMPACTにおける、CO2排出量の削減インパクトの3つ目が、水素エネルギー領域などの新技術を創出することで、社会のエネルギー変革にインパクトを与え1億トンを削減貢献するインパクトであり、その将来的な事業活動による売上高が相当します。
また、2022年4月、滋賀県草津拠点において、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電により、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う「RE100ソリューション」実証施設「H2 KIBOU FIELD」を稼働開始し、「RE100ソリューション」の事業化を目指しています。※4
資本配分
当社グループは、中長期戦略における投資として、2022年~2024年の3年間で成長領域に4000億円、技術基盤に2000億円の投資を行います。成長領域として、車載電池領域、サプライチェーンソフトウェア領域、空質空調領域があります。車載電池領域では、ガソリン車を凌駕するコストと安全性を電動車で実現することで、化石燃料に依存しない脱炭素社会への貢献ができます。サプライチェーンソフトウェア領域では、自律化ソリューションでサプライチェーンのあらゆるムダと滞留を無くし、環境負荷軽減に貢献できます。空質空調領域では、世界で多くの電力が空調機器で消費されており、大きく貢献可能です。また、技術基盤投資の一部として、環境関連技術があり、その一例として水素エネルギーへの取り組みがあります。水素の製造・利活用を拡大し、社会のクリーンエネルギーへの変革に貢献していきます。
インターナルカーボンプライシング
2022年3月に、設備投資判断におけるインターナルカーボンプライシングの導入を開始し、CO2排出量の価格を6,000円/t※5と設定しました。将来予想される炭素税等の影響を考慮することにより、将来の経済合理性と矛盾することなく、省エネルギーに貢献する設備や太陽光発電等の再生可能エネルギー機器の導入を進めます。さらなる範囲の拡大や価格については、事業の判断に活用しながら設定していきます。
※5 市況により変動します
報酬
持株会社の取締役と執行役員および事業会社社長の報酬について、2022年4月より新しい評価制度を適用し、業績連動報酬には環境貢献等のサステナビリティ視点での評価項目も含まれています。