⾳を愛するお客さまと、共有し続けた「体験の追究」

テクニクス

「テクニクス(Technics)」というブランドは、1965(昭和40)年の発売以来数十年にわたり、世界中で、そしてオーディオマニアから一般ユーザーまで、実にさまざまな人々に愛され続けてきました。2010(平成22)年にいったん休止するも、2014年に復活を発表。その絶え間ない追求を続けている「音」「感動」を軸に、技術者が没頭し、ユーザーが愛した幸せな技術ブランド「Technics」、それがどのように生まれ、育まれていったのかを紹介します。

スピーカー編

1954-

30年愛され続けたTechnics前史の名機

当社のスピーカー1号機は1932(昭和7)年に発売した「#265」ですが、最初のヒット商品は、1954年に発売された「8P-W1」です。基本を変えずに1984年の販売終了までの30年もの間現役であり続けたこの名機は、「ゲンコツ」と呼ばれ愛されました。

翌年にはアメリカへも輸出され、現地の専門誌でも高い評価を獲得しました。
アメリカでは「National」が既に商標登録されていたため、「松下電器が創りだす音があまねく世界に広がっていくように」という思いを込めて「Pana Sonic」という商標を考案。これが現在の社名の「Panasonic」のもとになっています。

Technicsシリーズの源流ともいえる
初代「ゲンコツ」スピーカー「8P-W1」
“ゲンコツ”の由来は?

1965-

「Technics」ブランド誕生。
従来の常識を破った超小型スピーカー

1965年、超小型でありながら大型スピーカー並の低音が再生可能なスピーカーを開発。「技術に裏付けられた特性のよい商品で、感動を与える」という開発者の想いをユーザーに伝えるため、「技術」という意味に基づく「Technics」を用い、1号機であるこのスピーカーを「Technics1」と命名しました。

ブランド1号機
「Technics1」

1975-

平面への挑戦。位相特性の平坦化をシステム思考で解決する

波形を忠実に再現するため、課題である位相のズレの解決に挑戦。1975年に発売した「Technics 7(SB-7000)」では、当時はまだ黎明期だったコンピュータを使ったシミュレーションを行い位相補正を最適化しました。

開発検証においては、18種類もの楽器を同時に奏でた複雑な波形の再現性に挑戦。名器・ストラディバリウスを所有するヴァイオリニスト・辻久子氏にも協力いただきました。

位相を揃える技術思想は「リニアフェイズ」と命名され、1979年には位相を完全になくすための理論的到達点「平面振動板」を初めて採用した「SB-10」を発売。1987年には「フルフラットパネルスピーカーシステム」を採用した「SB-AFP1000」を開発、ウィーン国立歌劇場にも納入されました。

スピーカー「Technics7」
コーン型スピーカーと平面スピーカーの違い

アンプ編

1966-

スピーカーの音を、さらに忠実に

1966年に発売された2つのアンプ「Technics 20A」と「Technics 10A」は、「Technicsはこんなものも作れるのだ」ということを見せようという思いでつくった、オリジナリティの塊のユニークな回路を随所に盛り込んだ製品で、開発者は「実は売るつもりはあまりなかった」と言っていました。しかし、発表したところ音が非常にいいと評判になり製品化に踏み切りました。

ステレオパワーアンプ
「Technics 20A」

1972-

限界への挑戦。歪み率を品番に

音響機器のトランジスタ化が進む中、当社もアンプのトランジスタ化に挑みます。1972年に発売したステレオパワーアンプ「SE-10000」は世界で初めて大容量全段定電圧電源を採用し、歪み率1万分の1(0.01%)という驚異的な水準を達成。その「10000」を品番にしました。ペアで発売されたコントロールアンプ「SU-10000」は、回路の一部に当時最新のアナログコンピュータ回路技術を取り入れています。

ステレオコントロールアンプ
「SU-10000」

1977-

位相と歪みを徹底追求。至高の名機誕生

1977年、低域における位相・周波数特性を改善した、ステレオDCパワーアンプ「SE-A1」と、ステレオDCコントロールアンプ「SU-A2」を発売。その後もアンプ技術は高音質への追求を続け、1992年には、MOS class AA回路搭載ステレオパワーアンプ「SE-A7000」、バッテリー電源搭載ステレオコントロールアンプ「SU-C7000」を発売しました。

ステレオDCパワーアンプ
「SE-A1」

ターンテーブル編

1970-

「モーターは振動するもの」という「常識」に挑戦

ターンテーブルは、モーターの駆動をそのままレコードを載せたテーブルに伝えればよいのですが、1960年代はまだ低速で安定して回転するモーターが実用化されていなかったため、1966年に発売されたレコードプレーヤー「Technics 100P」は、高速で回転するモーターとターンテーブルの間に駆動ベルトを噛ませて減速するベルトドライブ方式でした。この方式は、モーターが高速回転するため振動が発生したり、ベルトの伸縮による回転ムラが生じたり、ベルトの寿命が短いという課題がありました。

これらを解消するため開発陣は、低速で高精度に回転するモーターの独自開発を決断します。苦心の末、1970年に世界初のダイレクトドライブ方式ターンテーブル「SP-10」が誕生。オーディオファンはもちろん、放送局などの業務用の業界でも高い支持を得ました。
それからわずか5年後の1975年に発売された「SP-10MK2」は、クオーツ制御を取り入れ「30分のLPレコード演奏後の誤差±0.036秒」という、人間の検知限界を超えた値を達成。世界25ヵ国で1300台が放送局用として採用され、ターンテーブルの「標準原器」と呼ばれるようになりました。

ターンテーブル「SP-10」
ダイレクトドライブとベルトドライブの違い
無音の静寂の中での検証

1979-

レコード文化の多様性を推進。
「気軽さ」や「楽器」への進化

1979年には、コンパクト化と自動化を極限まで追求し、気軽な音楽体験を提案した「SL-10」と、当時のディスコブームを牽引するDJ仕様で、プレーヤーを音楽観賞用から「楽器」にへと進化させた「SL-1200MK2」を発売しました。

ターンテーブル「SL-1200MK2」

1981-

デジタル時代への鼓動。
鑑賞スタイルの変化に応え続ける

CDが登場する直前の1981年には「最高のレコード再生」を目指し、更に高精度の回転数偏差± 0.001%を実現した「SP-10MK2」を発売しました。

CDが発売された1982年には、Technicsシリーズの初代CDプレーヤー「SL-P10」を発売。これはオーディオ技術に加え、デジタル系の回路技術、半導体技術など、総合電機メーカーとしての実力を結集したものになりました。
さらに1985年には、ポータブルCDプレーヤー「SL-XP7」を商品化しました。

初代CDプレーヤー「SL-P10」
ポータブルCDプレーヤー「SL-XP7」

「Technics」の復活

2015-

音の感動がある限り、挑戦は続いていく

さまざまな要因が重なり、Technicsブランドは、2008年発売のターンテーブル「SL-1200MK6」を最後に2010年に休止しました。しかし、高品位再生に対する研究はその後も継続されていました。

「住空間の中の音をどう考え直すか」という新たな課題に対して、「音を愛する技術者と、音を愛する全ての人との幸せな出会い。Technicsとは、そうした奇跡のめぐり合わせが生み出したライフスタイルの総称といえるのかもしれない」という考えのもと、2014年、「Technicsの復活」が世界的に発表されました。

スピーカーシステム「SR-R1」
(2015年)
ステレオパワーアンプ「SE-R1」
(2015年)
ダイレクトドライブ
ターンテーブル「SP-10R」
(2018年)
テクニクス製品

関連リンク

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