
テーマ:雷サージシリーズ
雷サージから電気製品を守るために その一
2013年6月21日
EMCの稲田です。久しぶりの記事アップです。
梅雨が明けますと夏本番、EMCの視点では、太平洋側での雷が増える季節です。
雷による電気製品のトラブルはかなり古くからある問題ですが、近年ではさらに増加の傾向にあるようです。それには以下のような背景があると考えています。
1. 通信線を有する機器の増加
2. 製品の小型化による絶縁性能の低下
3. 日本の配電事情を考慮していない
まず、1についてですが、市場にて雷サージで電気製品が破壊する場合、ほぼ全てのケースでコモンモードの経路で雷サージが印加されたことが原因です。下図のように複数の機器が通信線で接続されたシステム商品では、機器の台数が増えるにつれコモンモードの経路が指数的に増えてしまいます。そして、雷サージによるトラブルを防ぐためには、すべてのコモンモードの経路に対して、配慮を行っておく必要があります。

また、実績がある製品であっても、システムの組み合わせによって、雷サージの耐性が低下することも起こり得ます(下図)。さらに伝導エミッション用のコモンモードチョークコイルによって、コモンモードの共振が発生し、雷サージ電圧が上昇してしまうこともあります。

以上の理由から、システム機器では、設計の初期段階から雷サージに対する設計思想を決めておく必要があります。そして評価のステージでは、コモンモードの経路を考慮した評価が重要となります。
2、3については、次回に述べたいと思います。