第4回「グループDEI推進委員会」開催レポート

写真:「グループDEI推進委員会」に参加した多様な社員、事業会社社長、楠見グループCEO 写真:「グループDEI推進委員会」に参加した多様な社員、事業会社社長、楠見グループCEO

グループDEI推進委員会は、パナソニックグループの目指す「一人ひとりが活きる経営」に向けて対処すべきDEI課題について共通認識を持ち、グループ共通の取り組みについて継続的に対話する場です。

2023年3月開催の第4回グループDEI推進委員会には、各事業会社、パナソニック ホールディングス株式会社およびパナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社の社長9名と人事責任者、DEI推進担当の社員がオンラインで参加。2022年度のDEI推進活動による成果の共有と今後の課題について議論しました。

※所属や肩書などの情報は、イベント開催当時のものです。

楠見CEOからのメッセージ

はじめに、パナソニック ホールディングス株式会社 楠見CEOから参加者に向けて、パナソニックグループがDEIを推進する意義と第4回グループDEI推進委員会に込めた思いを次のように発信しました。

「DEI推進の活動には2つの側面があります。1つは『経営戦略』として、多様な意見や知見を活かし、マーケティングや商品戦略につなげるという側面です。もう1つは多様な属性の人々が安心して働き、ベストなパフォーマンスを発揮できる『環境づくり』の側面。いわば物理的・精神的な障壁を取り除くバリアフリー化です。

特に1つ目の『経営戦略』に必要なのは、誤解を恐れずに言えば“異才を活かす”ことではないでしょうか。”異才”と呼ばれる人はイノベーションを起こす力がすごい反面、物議を醸すことも多い。こういった“異才”や、自分とは違う属性の人と相対すると、どうしても短所にばかり目が行きがちです。しかし長所に目を向けて理解し、尊重し合うことが新たな力を生み出すきっかけになるはず。創業者・松下幸之助も『短所4分、長所6分で人を見る』ことの大切さを語っています。

私は“異才”については『短所2分、長所8分』で相対し、理解し支援するべきだと考えています。当グループがDEIを推進するのは世間のトレンドだから、ではありません。『経営戦略』の1つとして捉え、強い意志で積極的に推進しているのです。本日共有されるアクション事例にもヒントを得ながら、DEIをどう経営に活かしていくかを考える機会にしていただきたいと思います」

DEIアクション事例の共有

今回は、パナソニック インダストリー株式会社、パナソニック インフォメーションシステムズ株式会社、パナソニック ホールディングス株式会社の出席者が、各社のユニークな取り組み内容を紹介しました。

パナソニック インダストリーでは、2021年から「Differences Are Wonderful」のステートメントを掲げ、DEIを推進してきました。2022年度は「“個”のニーズの徹底理解と対応、選択肢の拡大」の施策として「バリアフリープロジェクト」に取り組みました。

2024年度までに国内主要製造拠点(27カ所)をバリアフリー化することをゴールに、ダイバーシティ経営やバリアフリーに関する知見・実績を持つ株式会社ミライロと協働し、拠点調査・ガイドライン作成を実施しました。一部の拠点では、優先事項である避難経路や屋外通路のバリアフリー化をすでに実現しています。

障がいのある人の目線だけでなく、外部の専門機関の力も活かし、地道に改善点を洗い出すなどの正攻法で、DEI推進に挑戦しています。

改善前

避難経路

写真:改善前の避難経路

車いすでは通れない、階段のある避難経路

改善後

写真:スロープの設置された避難経路、非常用階段避難車

安全性を考慮した粗面仕上げのスロープを設置し、避難経路を確保。非常用階段避難車も設置

屋外通路
歩道の段差

写真:改善前の歩道

インターロッキング舗装による凹凸と傾斜のある歩道

写真:アスファルト舗装された歩道

耐久性・水はけを考慮したアスファルト舗装により段差を解消

避難経路

写真:改善前の避難経路

車いすでは通れない、階段のある避難経路

写真:スロープの設置された避難経路、非常用階段避難車

安全性を考慮した粗面仕上げのスロープを設置し、避難経路を確保。非常用階段避難車も設置

屋外通路
歩道の段差

写真:改善前の歩道

インターロッキング舗装による凹凸と傾斜のある歩道

写真:アスファルト舗装された歩道

耐久性・水はけを考慮したアスファルト舗装により段差を解消

パナソニック インフォメーションシステムズでは、2022年から「私らしさを出す」「お互いを知る」「DEIを識る・学ぶ」「組織でDEIをドライブ」の4カテゴリで、さまざまなDEI推進活動を展開しています。このうち「組織でDEIをドライブ」の一環として、幹部・管理職を対象に「DEIキャラバン」を実施しました。

「DEIキャラバン」とは、「理想の職場の姿」のかるたを通じて語り合うという、DEI職場活性ワークショップを利用した取り組みです。幹部は自分が選んだ「理想の職場の姿」のかるたについて社内SNSで発信し、管理職はリアル・オンラインで開催されたワークショップと対話会に参加。実施後のアンケートでは参加者の95%が「参加して良かった・やや良かった」と回答し、「DEIを“自分ゴト”にできた」「理解度が深まった」といった声が寄せられるなど、管理職への理解浸透に寄与しました。

写真:かるたを手にする4人の幹部。左上から時計回りに「命令ではなく主体的にメンバーが行動している」、「メンバー各人の挑戦を後押ししてくれる」、「今までのPanasonicの例外を認める」、「部署外とのコラボでイノベーションが生まれている」

自身の選んだかるたについて発信する幹部

第3回グループDEI推進委員会にて紹介した、パナソニック ホールディングスによる「アクセシブルマッププロジェクト」ではその後、有志メンバーからの提案を受けてUX(ユーザー体験)可視化リストを導入しました。

可視化リストは、デザイン思考プロセスにおける「つくる」「伝える」「気づく」「考える」のうち、「気づく」「考える」に重きを置いたもの。書き込まれたメンバーの気づきをもとに、気持ちが伝わるピクトグラムを作成することとなりました。また、「伝える」のプロセスも重視しており、社内ホームページにアクセシブルマップサイトを開設するなど、利便性の高いサイト構築を目指しています。

成果物の作成プロセスにも多様な意見を採り入れ、協働で良いものをつくり上げていくというDEIの考えを反映しています。

現地調査プロセスとUX可視化のためのフォーマット

フォーマット化することで、短時間で気づきを抽出し、深い調査の実施が可能に

各チームでのディスカッション

後半は3チームに分かれ、DEI推進における今後の課題について以下の2つをテーマに議論を深めました。

各チームでは、次のような意見が共有されました。

  • 「過去30年間、日本企業が成長できなかった要因は”同質性”にあると思う」
  • 「各拠点や組織の個性に合わせて、DEI推進プロセスにも多様性を持たせる必要がある」
  • 「多様性を大切にしながら、いかに同じビジョンを共有して進んでいくか。両者のバランスの取り方を経営層がもっと考えるべき」
  • 「多様な人材によって幅広い知見を集めれば、他にない付加価値を持つ商品開発が可能になるはず」
  • 「多様な人のまじり合いにより現場でイノベーションが起きているか、キャリア・新卒採用で長期的な人材確保ができているかどうかなどを注視する必要がある」

参加者の気づき

各チームのディスカッション内容を共有した後、参加者は「気づきシート」を作成。トップの強い覚悟と明確なメッセージ発信の重要性に触れたものや、現場の隅々までDEI推進を行き渡らせ”自走化”するヒントに触れたもの、なぜDEIが必要なのかという核心に触れたもの、2022年までの進化を踏まえた前向きな意見など、バリエーション豊かなキーワードが記されました。

  • 「経営者の覚悟とトップダウンのアプローチ」
  • 「自走するまで全体活動を強化」
  • 「DEIに一律はない!」
  • 「一人ひとりの個性が強みの源泉」
  • 「活動は進み出している。経営がもっと光をあて、エネルギーを注ぐ!」