第67回電気科学技術奨励賞並びに電気科学技術奨励会会長賞を受賞

2019年11月20日、第67回電気科学技術奨励賞(旧オーム技術賞)が決定し、パナソニックグループから1件が受賞しました。さらに、本テーマは受賞テーマの中で2番目に高い評価を得て、電気科学技術奨励会会長賞を受賞しました。

同賞は、電気科学技術に関する発明、改良、研究、教育などで優れた業績を挙げ、日本の諸産業の発展および国民生活の向上に寄与し、今後も引き続き顕著な成果の期待できる人に対し、公益財団法人 電気科学技術奨励会より贈呈されるものです。

今回の当社の受賞者と業績は、以下のとおりです。

写真:受賞式

受賞式

電気科学技術奨励賞並びに電気科学技術奨励会会長賞

『追従走行ロボティックモビリティの開発と実用化』

受賞者

上松 弘幸:マニュファクチャリングイノベーション本部 主任技師
グエン ジュイヒン:マニュファクチャリングイノベーション本部 主任技師
廣瀬 元紀:マニュファクチャリングイノベーション本部 主任技師

写真:左から廣瀬、上松、グエン

左から廣瀬、上松、グエン

開発の背景

近年、移動に不自由のある高齢者の増加に対し、自宅から目的地までの移動については公共交通や自動車などを利用した各種のサービスが展開されています。しかしながら、実に1100万人超の高齢者は、杖等の補助具を用いたとしても500m以上の歩行は困難です。そこで我々は、移動経路や目的地で広い空間を有する空港や商業施設などの施設に着目し、人と共存して安全・安心に移動サポートできるロボティックモビリティを開発しました。

開発技術の概要

ロボティックモビリティは、電動車いすにセンサと制御ユニットを搭載しています(図1)。センサは追従走行のための前方車両検出、安全停止のための障害物検出、制御ユニットは、センサ情報を元に追従走行、安全停止制御を行うと共に、無線通信機能で隊列走行時の運用サポートのための車両間制御も行います。

(1)追従走行技術
ロボティックモビリティは、先行車両の後方に設けたマーカをセンサで検知して、追従走行を行います。複数台で追従走行を行うと、後方になるほど先頭車両の走行経路からのズレが大きくなり、壁や障害物へ接近、停止してしまいます。そのため、先行車両の位置を精度良く認識できる独自の円筒マーカ(図2)、先行および後続のロボティックモビリティの車輪角度センサ、ジャイロ、加速度センサにより、後続車両を先行車両の挙動に応じて最適制御することで、先行車両と後続車両の経路のずれを50mm以下にすることができました。これにより、世界最高水準である10台の隊列で人共存環境を安定走行できる追従走行技術を実現しました。

(2)2重の衝突安全技術
屋内で稼動するロボティックモビリティは、歩行している人と共存して動作できる必要があります。本開発では、モビリティの直進速度vと旋回速度wから算出される制動軌跡をもとに障害物検地エリアをリアルタイム推定する安全停止機能を開発しました(図3)。これにより進行方向の衝突判定を精度良く実施し、安全性と移動効率を両立することに成功しました。さらに、リスクアセスメントを実施した結果、世界で初めて機能安全規格IEC62061に準拠(SIL2)した安全制御モジュールを開発・搭載することによって、安全規格準拠のロボティックモビリティを実現しました。

(3)車両間連携による隊列制御技術
複数のお客様を一人のスタッフが案内する運用を実現場で成立させるために、任意の車両で通信連携を行なっています。そのため、車々間通信は、隊列内の機体順番変更・追加・分離に対して柔軟かつ簡単に切替えできる運用システムを構築しました(図4)。これによって、スタッフ1名で隊列全体を自由にコントロールし、乗客とのコミュニケーションも可能になり、実運用で活用するための重要な機能となっています。

開発技術の成果

これらの開発により、最低限のスタッフで、複数の乗客を目的地までご案内することができ、空港のサービスレベルを低下させることなく、効率的な移動サポート業務を実現しました。これにより、来る人生100年社会に対し、だれもが移動の不安なく自由に出かけ、充実した生活を送ることのできる社会の実現に貢献してゆきます。

図1 ロボティックモビリティ

図1 ロボティックモビリティ

図2 独自円筒マーカ

図2 独自円筒マーカ

図3 安全停止機能

図3 安全停止機能

図4 隊列内を2つに分離する場合

図4 隊列内を2つに分離する場合

受賞者コメント

写真:上松 弘幸

上松 弘幸

この度は大変名誉ある賞をいただき、まことにありがとうございます。本取組みでは、移動に不安を抱える方々へのお役立ちを目指し、我々の培ってきた安全な移動ロボット技術を活用した追従走行ロボティックモビリティの開発・実用化を行いました。関係各位の皆様の多大なご協力によって、現場で活用可能な実用性を実現することができました。今回の受賞を励みに、事業拡大に向け、より一層の精進を重ねて参ります。

写真:グエン ジュイヒン

グエン ジュイヒン

この度は大変名誉ある賞を頂くことができ、非常に光栄であると共に、ご支援いただいた皆様に感謝申し上げます。本取り組みは、空港などの人混み環境でも確実に前方のモビリティを検出する新技術の開発と、先輩方が培ってきた自律移動ロボットHOSPIの経路追従技術の応用で実現することができました。今後も、新たな顧客価値の創出、社会発展への貢献を実現するロボティクスの開発に努力、邁進していきたいと思います。

写真:廣瀬 元紀

廣瀬 元紀

このような名誉ある賞を頂き、大変嬉しく感じております。本取組みでは、実用化に拘った移動サポートサービスのとして追従隊列走行の可能性に注目し、技術開発・機器設計・ユーザー実証を高速に繰り返す事で、短期間で実用レベルまで確立できました。関係各位の皆様の熱意とご協力があってこその成果と感じております。家族や友人・大切な人たちが移動に不安を抱えていても「行きたい場所に行く」事を諦めなくてすむ世界、移動ロボット技術が特別でなく当たり前のテクノロジーとして日常に寄り添う未来を目指し、社会実装を益々加速して参ります。