第54回市村産業賞 貢献賞

『電動車向け水素封止カプセル型直流高容量リレーの開発』

パナソニック インダストリー株式会社は、『電動車向け水素封止カプセル型直流高容量リレーの開発』の功績に対し、公益財団法人 市村清新技術財団より、第54回(令和3年度)市村産業賞 貢献賞を受賞し、4月15日に贈呈式が行われました。パナソニックグループとして4年連続の受賞となります。

市村産業賞は、わが国の科学技術の進歩、産業の発展に顕著な成果をあげ、産業分野の進展に多大な貢献・功績のあった技術開発者に対して行なわれ、国内で権威ある技術賞のひとつです。

左から 西村司さん 尾崎良介さん、坂井智史さん

開発の背景

パナソニック インダストリー株式会社は、1997年にハイブリッド車(HEV)の高電圧バッテリ制御用途として、世界で初めて水素封止カプセル接点技術を採用した直流高容量リレー「EVリレー」を実用化しました。以降、電動車における高電圧システム進化が著しく、Ni-MH電池からLi-ion電池への進化およびハイブリッド車から電気自動車(BEV)へのシステム進化に対し、電動車の高電圧に対する安全性を実現する直流高容量リレーが強く求められていました。

開発技術の概要

電池の性能向上により直流高容量リレーに流れる電流が増加する中、車載に適した小サイズを維持しながらも、電流増加に対する安全性等の諸課題を克服するため、以下の技術開発を行いました。

  1. 従来同等サイズで、Li-ion電池短絡時の過大電流に対しリレーの接点開離抑制を実現した高短絡耐量技術、および車両走行時・減速時ともに高い電流遮断性能を実現した順逆同等遮断技術
  2. 高出力の小型有極電磁石により通電時の接点発熱を抑制し、電気自動車に必要な大電流連続通電を業界最小サイズで実現した小型高通電技術

開発技術の成果

本技術を適用した「電動車向け水素封止カプセル型直流高容量リレー」は、大電流通電、高容量遮断、高短絡耐量などリレーに求められる性能を小サイズで実現しており、さまざまな電動車にグローバルで幅広く採用されています。また、本技術は車載用途に留まらず、直流高電圧・大電流制御が必要とされる電気自動車の急速充電器や太陽光発電・蓄電設備などにも適しており、直流制御用途への幅広い展開が期待されています。

図1:BEVの高電圧システム
図1:BEV対応EVリレー

受賞者コメント

写真:尾崎 良介さん
尾崎 良介さん

このたび名誉ある市村産業賞を受賞でき、大変光栄です。
1980年代の水素封止カプセル接点技術に端を発し、絶えず技術開発・商品開発・安定生産・品質向上を続けてきた先人の取り組みを礎として、時代に沿った車両進化に伴う課題を解決するEVリレーの創出が評価されたことを、誠に嬉しく思います。従来からのハイブリッド自動車に加え、近年は電気自動車が急速に普及し始め、EVリレーに対する期待・要求はこれまで以上に幅広く、難易度が増しています。今後もお客様のお役立ちとなる商品創出・技術開発に引き続き取り組んで参ります。

写真:西村 司さん
西村 司さん

HEV、PHEV、BEV、FCV(燃料自動車)と車の進化に同調する形で、EVリレーの開発に携われることができ、この度、受賞を頂けたことは大変光栄に感じております。
ニッケル水素電池からリチウム電池への性能向上に伴い、EVリレーに求められる仕様も通電性や耐短絡性の向上に変化し、水素封止カプセルを基軸に商品を開発し造出してきました。今後、環境車への期待は高まるとともにシステムの進化も加速すると考えられますので、お客様の新たなニーズを取り込んだ商品開発にチャレンジし続けていく所存です。

写真:坂井 智史さん
坂井 智史さん

環境対応車の普及にEVリレーの進化という形で貢献できたこと、更にはこのような名誉ある賞を受賞できたことを大変嬉しく思います。私が開発を担当した小型有極電磁石は、二つの磁力とばねの力の絶妙なバランスを取ることで性能が発揮される非常に繊細な技術です。この繊細な技術を搭載した製品を立ち上げ、現在も品質維持にご尽力頂いている関連部門の方々に感謝申し上げます。今後もお客様に喜んで頂ける商品を産みだすべく、精進して参ります。