新しい命を照らすあかり
― アフガニスタン医療施設でのソーラーランタンの役割
アフガニスタンでは、女性が安心して出産できる環境を手に入れることは、世界でも最も難しい国の一つです。2023年時点の最新統計では、妊産婦死亡率(MMR)は出生10万件あたり521人と、アジア太平洋地域で最も高く、世界的に見ても深刻な数値です。しかし、データが限られており、人口動態の記録も十分でないため、実際のリスクはさらに高い可能性があります。
国全体で推定3,820万人のうち、約950万人、つまりおよそ4人に1人は「ホワイトエリア」と呼ばれる遠隔地に暮らしています。ここでは医療施設や助産師がほとんどおらず、出産は大きな命のリスクを伴います。2023年の多指標クラスター調査(MICS)によると、全国で熟練助産師が立ち会う出産は67.5%にとどまり、農村部ではわずか61.1%。地域社会の中で、安全な出産を支える専門家への需要がいかに高いかが浮き彫りになります。
こうした現状に対応するため、UNFPAは医療サービスが行き届かない地域に「ファミリーヘルスハウス(FHHs)」を設置しました。FHHは、地域の女性や子どもたちに必要な母子保健・生殖保健サービスを届けるための小規模診療所です。ここでは、生殖や母体の健康、新生児・小児・思春期のケアといった基本的な医療サービスが提供され、特に農村や僻地に住む人々の命を支えています。戦略的に遠隔地に配置されたFHHは、医療アクセスが極めて限られた地域にとって、唯一の安全な医療の拠点となっています。
このFHHには、電気がありません。そんな現場に、パナソニックのソーラーランタンが届けられました。
真夜中の出産
アフガニスタン北部・ファリヤブ州カイサル地区。州都マイマナから70kmも離れたこの村には、電力の届かない小さな診療所「チャルシャンベ・ファミリーヘルスハウス」があります。
ここで唯一の助産師として働くユルドゥズさんは、昼も夜も24時間、妊婦からの呼び出しに応じています。
ある夜、診療所に最初の妊婦が運び込まれたのは夜8時過ぎ。間もなく、もうひとりの妊婦がやって来ました。しかも双子を身ごもっていました。
暗闇と静けさの中、ユルドゥズさんと看護師はふたりの妊婦を同時に見守ります。最初の母親は深夜を過ぎて無事出産。その間も、双子を抱えたもう一人の母親は苦しい陣痛と格闘していました。
夜中2時を過ぎる頃、いよいよ出産の時。ユルドゥズさんは8年間の経験を頼りに、慎重に、そして力強くふたりの命を取り上げました。小さな産声が静かな夜に響き渡り、診療所は喜びと安堵に包まれました。
朝4時。長い一夜を終えたユルドゥズさんは、ようやく診療所の扉を閉じ、数時間の休息を取るために自宅へ戻りました。
「とても疲れました。でも、母子の命を守ることが私の責任です」
彼女はそう話します。
暗闇との闘い
この診療所には夜間照明がないので、夜の出産や緊急対応の際、ユルドゥズさんが頼れるのは懐中電灯やろうそく、あるいは自分の携帯電話の小さなあかりだけ。
命を預かる現場で、あかりの不足は大きなリスクでした。産道の確認、母体の出血、赤ちゃんの呼吸…そのすべてに「十分なあかり」が不可欠だからです。
パナソニックのソーラーランタンがもたらした変化
ソーラーランタンのあかりの元で診察ができるようになったユルドゥズさん
そんな現場に、パナソニックのソーラーランタンが届けられました。
ユルドゥズさんは箱を開け、初めてランタンにあかりをともした瞬間を今も鮮明に覚えています。
「これで夜の出産がずっと安全になります。母親も赤ちゃんも、もっと安心してお産に臨めるのです」
ソーラーランタンのやわらかなあかりは、診療所の分娩室を隅々まで照らし、夜間でも落ち着いた環境を生み出しました。あかりの下での出産は、妊婦に安心を与えると同時に、医療者の判断を支える大きな力になります。
あかりの元でカルテに書き込むこともできるようになりました
未来を照らすあかり
ユルドゥズさんの名前「ユルドゥズ」は、現地の言葉で「星」を意味します。
星のように暗闇の中で輝き続ける彼女の献身を、ソーラーランタンのあかりがさらに支えていきます。
パナソニックはこれからも、「あかり」を通じて世界中の人々の未来を照らし続けます。
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