一人ひとりがビジネスの視点を身につけることで
財政規模が拡大し、全員が活躍できる組織へと成長

ビジネスをゼロから学び、セレクトショップを展開


「NPO法人あきた結いネット」は秋田県初のホームレス支援団体として2013年に設立され、障がい福祉サービスや触法者の支援にも力を注いできました。理事長の坂下美渉さんは、サポートファンドに応募した背景を、次のように話してくれました。
「2015年くらいから福祉サービスを始めたのですが、財政規模が5000万円から伸びず、いろいろな種類の資金を集めて、“誰もが働きたいと思った時に働ける場所をつくる”という目標を達成したくて、申請しました」
まず、2019年に組織診断を実施。スタッフ全員が主役になる組織に変わる必要があり、広報力にも課題があることが明らかになりました。「福祉的なサポートをしながら収益を上げる障がい者の就労継続支援B型事業を担当する職員は福祉専門職がメインで、ビジネスの視点がなく、お金をもらうこと自体に抵抗があるスタッフも少なくありませんでした」

写真

特定非営利活動法人 あきた結いネット
理事長 坂下 美渉さん

そこで、助成2年目の組織基盤強化では、外部のコンサルタントを招いて、職員と利用者にワークショップを開催。「商品を売るための見せ方や付加価値の乗せ方をゼロから学びました。その頃、全国の障がい者施設ではコロナ禍の影響で、つくった商品を販売する機会が失われていたため、作業所の一部を店舗にして、3年目の2021年に、全国の障がい者施設から商品を集めたセレクトショップを始めました」
ここでは、コンサルタントの指導のもと、「何のためにいくら必要なのかを明確にし、中長期的な売上目標を設定できたことが役に立った」と、坂下さんは振り返ります。
と同時に、職員全体研修を実施し、各職員にプロジェクトリーダーを任せることにしました。「一人ひとりに力があったのに、すべての事業を私が見なければいけないと思い込んでいましたが、報告を受けて承認を出すだけでよくなったおかげで、100万円単位の大きな補助金や助成金の申請に注力できるようになりました」

財政規模が拡大し、誰もが働ける体制を整備


3年間の助成を終えた2022年には、店舗を繁華街にある大きな建物に移し、家賃は3倍になりましたが、それまで10~15万円だった売上が50万円くらいまで増えました。しかし、2023年の秋田豪雨に見舞われ、店舗があるエリアも被災。「店舗を拠点に、復興支援を今も継続しています。被災直後は売上が下がりましたが、復興支援をしたおかげで認知度が上がり、売上は上昇。今では70クリエーターと契約し、クラウドファンディングをしながら、商品開発も手掛けています」
さらに、5000万円から伸び悩んでいた財政規模は8000万円まで拡大。2023年には休眠預金等活用事業に採用され、業務用厨房を備えた建物とキッチンカーを購入しました。「子育てや病気、家庭の事情などでフルタイムで働くことが難しいスタッフが福祉施設で販売するなど、さまざまな事情を抱えた方が働ける体制を整えることができました」
この経験を、ほかの団体にも活かしてもらうために、坂下さん自ら准認定ファンドレイザーの資格を取得し、この3月から伴走支援を始めました。そして、設立20周年を迎える7年後までには、就労部門を切り離し、株式会社を立ち上げようと計画しています。3年間の助成により、ビジネスの視点を養ってきたおかげで、「職員が新しいことにも抵抗なく、わくわく楽しみながら取り組み、それを見て理事もやる気を出す」という、いい循環が生まれているようです。