Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs【国内助成】 成果報告会


組織基盤強化に取り組んだ9団体が
成果と学びを発表

2025年3月6日、官民共創HUB(東京都港区虎ノ門)で「Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs【国内助成】」の成果報告会を開催しました。会場には、「組織診断からはじめるコース」に取り組んだ3団体と「組織基盤強化コース」に取り組んだ6団体の皆様、選考委員、事務局、参加のお申し込みをいただいた皆様など、約40名の方々がお集まりくださいました。9団体の成果発表のあとには、選考委員からの講評や会場との質疑応答の時間を設けました。終了後には交流会の時間をもち、団体の皆様同士で、この日の感想や学びを共有し、自団体の組織基盤をさらに強化する方法について、理解を深めることができました。

開会挨拶

従業員を募り、能登や福島の1日も早い復興を応援



パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部 部長 堂本 晃代

能登半島地震から1年以上経ちましたが、パナソニックでは1日も早い復興を応援するために、昨年のGWと秋に従業員を募り、現地でボランティア活動を行いました。現地に行けない従業員は福利厚生のポイントを寄付したり、在宅ボランティアとして、現地で使うぞうきんをつくったり、子どもたちに送る学用品を仕分ける活動に取り組みました。また福島では、東日本大震災から10年以上経った今も風評被害が続いています。私たちは「福島『復興』応援アクション」と題し、社員食堂で県産品を使ったメニューを提供したり、県産品を購入するマルシェを開催するなどして福島県を応援しています。創業から107年目を迎えるパナソニックは、事業活動と企業市民活動の両方で社会課題の解決を目指し、新たな社会価値の創造に取り組んでいます。企業市民活動においては「貧困の解消・環境・人材育成(学び支援)」の3つを重点テーマとしています。引き続き、NPO/NGOの皆様とのパートナーシップを通じて、活動を推進していきたいと思っております。

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堂本 晃代

第1部 組織診断の成果報告【1年目/組織診断】


代表に集中した役割を分散し、持続可能な組織へ



一般社団法人 Masterpiece 代表理事 菊池 真梨香さん

児童養護施設や里親家庭を巣立った若者の居場所・食料配送・住居のサポートをしています。事業は拡大し、スタッフは増える一方で代表の私に役割が集中し、若者へのきめ細やかなフォローや将来を見据えた事業開発ができていませんでした。そこで2名のコンサルタントを交えて、毎月の定例ミーティングと組織診断を実施。第三者に内部関係者へのインタビューをしてもらい、3年未満のボランティアの自己有用感が低いことがわかりました。さらに、4団体を視察して自団体を評価。視察内容を自団体に落とし込むための合宿を行い、ビジョンと組織図をつくり直しました。そこから見えてきた課題をもとに、ボランティアマネジメントとして学べる場や語れる場をつくり、管理部基盤を強化するために人員を増強し、ファンドレイズのブラッシュアップを図ることで、財政基盤の強化に取り組んでいるところです。チームとして団体のことを考える仲間ができたことが、この1年の最大の収穫でした。

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菊池 真梨香さん


提供価値や寄せられている期待、課題を言語化



特定非営利活動法人 青少年自立支援施設淡路プラッツ 代表理事 石田 貴裕さん、事務局長 浅井 紀久子さん

大阪で若者の居場所支援・ひきこもり支援・不登校支援・学習支援・貧困世帯支援を行っています。コロナ禍以降の経済の悪化で、受益者負担で運営してきた事業の継続が困難になり、組織力の強化を図ることにしました。1年目の組織診断では、PEST・SWOT分析による外部環境/内部環境の分析、利用者やスタッフ・役員へのインタビュー、財務状況に関する調査、ベンチマーク先3団体への視察、ファンドレイジングのコンサルティングを通して、自分たちの提供価値や寄せられている期待、課題を言語化でき、優先順位をつけることができました。これをもとに2年目の今年は、集客力のあるウェブサイトを構築し、団体の認知から継続利用までのプロセスを設計。外部化・自動化できる業務を切り出して、ファンドレイジング体制の整備にも力を入れていきます。さらに新しい人材採用要件を明確化し、採用チャネルを導入することで、活動を支える人材の候補者とつながる機会を増やしていきたいと思います。

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石田 貴裕さん、浅井 紀久子さん

災害救助から地域の孤立解消へ活動形態を転換



特定非営利活動法人 移動支援Rera 代表 村島 弘子さん

東日本大震災から14年間、移動困難な住民の送迎や、お出かけの機会の創出などを行ってきましたが、思考がボランティアベースでお金や持続性についての考えが甘く、災害救助活動ベースの活動形態から脱却したくて助成を申請しました。組織診断では、現場のスタッフ全員と理事会のメンバーにアンケートとヒアリングを実施。普段、声を上げないメンバーの声も拾えましたが、直後にスタッフの半分が退職・退任の意向を示すという波乱も起きました。さらに、活動エリアの全地域包括支援センターにアンケートを行ったところ、ほぼ100%が移動手段に問題があるとしながらも,Reraに相談したことがあるのは半分で、中には断られたケースもあることが判明。変わりきれずに閉じていたReraの姿が明らかになりました。そこで、会員・理事・現場スタッフに石巻に集合してもらい、全員研修会を開き、顔の見える関係をつくってもらいました。今後は利用者さんだけでなく、地域全体の孤立解消を目指していきたいと思います。

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村島 弘子さん


選考委員からの講評


組織診断には、より効果の高まるタイミングがある



パナソニック オペレーショナルエクセレンス株式会社 企業市民活動推進部 ソーシャルアクション推進課 課長 東郷 琴子

3団体の皆さんは、団体が次のフェーズに上がろうとしていたり、岐路に立つなど、より効果が高まるタイミングで組織診断を実施されました。Masterpieceは、交流会や合宿を通して組織基盤強化が自分事になり、組織図をつくって役割を明確化したことで、チームで団体を愛する意識の変化が生まれ、今後の大きな原動力になるのではないかと思います。青少年自立支援施設淡路プラッツは、32年取り組んできた事業の提供価値を言語化できたことが大きな成果です。インタビューには「団体の活動に協力したい」との声も寄せられたそうで、これも真摯に取り組んできた実績によるもの。大きな自信につながったのではないでしょうか。移動支援Reraは、半数のスタッフが組織から離れるという大きな困難が伴いましたが、これまでの助成先の皆さんも「組織基盤強化は痛みが伴う」「血が流れる」と表現されていました。それでも、理事や会員も参加して活動の意義や思いを深め、並行して組織改革も行ったのは素晴らしいと思いました。これからもぜひ、経営改革に多様な人の視点を採り入れてください。

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選考委員 東郷 琴子


会場との質疑


3団体からの発表後、質疑応答の時間を設けました。会場からはReraに対し、「内部の入れ替えがあったあと、採用の際には、どんな工夫をされたのでしょうか?」との質問がありました。Reraの村島さんは、「これまでは人の紹介などがほとんどでしたが、初めて求人サイトに募集を出しました。NPOであることを前面に出し、面談の時も企業との違いを伝えた上で、関わりたいという方を採用し、すぐに全員ミーティングを行って、今のところ楽しく働いています」と回答しました。

第2部 組織基盤強化の成果報告


【1年目/基盤強化】

活動の全国展開を機に組織マネジメント体制を強化



特定非営利活動法人 チャイボラ 代表理事 大山 遥さん、理事 牛堂 望美さん

私たちは6年前から、児童養護施設等の社会的養護施設の人材を確保し、定着させる活動をしています。興味のある人と施設をつなぐ「社会的養護総合情報サイト チャボナビ」を運営し、施設見学会や就職した人への研修などを実施。近年、全国規模で展開するようになり、急拡大する事業と組織基盤のレベルがアンバランスになり、組織基盤強化に取り組みました。組織体制の整備として、紹介がベースだった採用の手法を整備し、一般公募で2名を採用しました。人事労務では、専従のメンバー増加にあたり社労士を外注し、就業規則をアップデート。勤怠管理ツールを導入し、長く働き続けられるようにさまざまな整備も行いました。経理についてはリスクと課題を洗い出し、支出の決済方法など、ルールをメンバーに周知。税理士に財務戦略の相談もできる体制を整えました。さらに、情報セキュリティ規程を作成し、システムの安全面を強化。「職員があと一人いれば、将来について子どもたちにしてあげられることがある」といった施設職員の願いを実現していくことが、私たちの願いです。

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大山 遥さん、牛堂 望美さん

【1年目/基盤強化】

助成を大義に立ち止まり、組織課題の共通認識を醸成



特定非営利活動法人 パノラマ 事務局長 谷口 真梨子さん

神奈川県立高校で高校生・卒業生のための校内居場所カフェと、横浜市内で小中学生の放課後の居場所を運営したり、ひきこもりなどの困難を抱えた若者の支援をしたりしています。事業拡大の一方で、組織体制の強化が追いついていない状況でした。そこで、コンサルタントの伴走支援でスタッフ・理事全員に外部ヒアリングを行い、組織課題を明確化し、共通認識を醸成。若者支援と子ども支援の2部門の違いも明らかになりました。初めての管理職研修や人事施策の策定も実施し、財務改善としてはマンスリーサポーターキャンペーンに挑戦。さらに、コンサルタントが7つの課題と課題解決に向けた26の取り組み例を提案してくれました。想定以上にコミュニケーションのコストがかかりましたが、普段は現場で走り回っているので、助成を取ることが立ち止まる大義となって、課題が明確になり、スタッフや管理職の意識が変わり、理事が現場に来て、スタッフと話すようになりました。2026年度に向けたロードマップはつくったので、研修や理念共有のワークを経た上で、行動指針を策定していきたいと思います。

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谷口 真梨子さん


選考委員からの講評

団体の膿を出す組織基盤強化に終わりはない



認定特定非営利活動法人 エンパワメントかながわ 理事長 阿部 真紀さん

私たちの団体も10年以上前に3年間、組織診断と組織基盤強化に取り組みました。団体のネガティブな面に目を向け、膿を出す、あの作業があったからこそ今があると信じています。一方で、組織基盤強化には終わりがないことも感じています。パノラマは高校の居場所カフェが神奈川県に広がり、日本全国に広がり、それをまとめる大きな働きをされていることを、同じ神奈川の団体として誇りに思います。あえて立ち止まり、全員のヒアリングをしたことでコミュニケーション力が格段に上がって、2部門の違いを可視化でき、改善につながったのだと思います。チャイボラは、若い人が入ってくるのが難しい社会的養護施設の人材を、日本全国の施設のために確保しようとしているところが素晴らしいと思いました。そこにコンプライアンスが必要になった時、外部の専門家の力を借りるのも大事なことです。労働条件を改善して、長く働き続けられる環境をつくり、船の土台が大きくなったことで、さらに大きな海に前進されることを期待しています。

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選考委員 阿部 真紀さん


会場との質疑


2団体の発表後、会場からはチャイボラに対し、「今回、公募をされたとのことですが、NPOの求人媒体としては何がいいでしょうか?」との質問が寄せられました。チャイボラの大山さんは、「HPとSNSに求人を出し、初めて採用プロセスをちゃんと踏みました。エントリーは5人でしたが、2人が採用になり、人が必要だと発信したことで、ボランティアやアルバイトとして力になりたいと言ってくれる方も増えたので、とてもよかったです」と答えました。


【2年目/基盤強化】

メンバーの多様性をビジョン・ミッション・バリューに反映



特定非営利活動法人 多様な学びプロジェクト 理事 梅林 千香子さん

不登校の子どもたちやその家族、居場所を運営している方たちのための情報サイトやオンラインコミュニティを運営しています。事業拡大の一方で、全員がフルリモートで活動しているため、リアルで会う機会が少なく、組織基盤が脆弱でした。1年目の組織診断で、ビジョン・ミッション・バリューの検討の必要性や、労務・法務・知財等の課題が明らかになりました。また、メンバーには不登校の当事者や親が多く、合宿を通して、お互いの背景や課題、団体の強みや活動の意義を共有できました。2年目は、10名の運営メンバーを中心に16回のセッションを経て、ビジョン・ミッション・バリューを策定。これを浸透させるために全体セッションを行いました。ウェブサイトの更新にも着手し、専門家の提言を受けて、団体会員制度を導入。これに合わせて、個人情報保護方針や利用規約等も改訂しました。内部の体制に関しては事業リーダー制を導入し、各事業体制を整備。メンバーが自分事としてビジョン・ミッションを語れるようになり、業務の改善提案が盛んに出てくるようになりました。

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梅林 千香子さん


【2年目/基盤強化】

ニーズの増加を受けて、持続可能な組織を目指す



一般社団法人 やまがた福わたし 代表理事 伊藤 智英さん

フードバンク活動を軸に、関連団体と連携し、貧困の連鎖を断ち切る活動をしています。コロナ禍や物価高騰でニーズが増加し、事業は拡大しましたが、事業収入がなく、ボランティアのみでの対応も難しくなってきました。そこで1年目はコンサルタントに入ってもらい、組織診断で課題を明らかにし、ステークホルダーへのインタビューで施策を検討。各会派の県議にも現状を説明したことで、各市町村の福祉課にフードバンクの窓口ができました。また、初めての寄付者アンケートを実施し、私自身がファンドレイザーの資格を取りました。2年目は、ボランティアミーティングを重ねたことで、活発に意見が出るようになりました。また寄付ツールを作成し、渡していったことで、寄付者が徐々に増えています。さらに、福岡のフードバンク2団体を視察。1つは、サポートファンドの組織基盤強化に取り組んだ団体だったので、私たちが目指すところを確認できました。山形県は高齢化が進んで、ボランティアの確保が難しく、子ども食堂や行政などとのネットワークづくりの必要性も感じています。

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伊藤 智英さん


選考委員からの講評

つまずいた時に立ち戻る活動の理念は団体の財産



特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台 理事長 立岡 学さん

NPOの活動で1番大事なのは、私たちは何を目的に、この仕事をしているのかという理念で、つまずいた時は、そこに立ち戻るのだと思います。多様な学びプロジェクトは16回ものセッションで、一言一句を丁寧にみんなで話し合って決めました。そのことが皆さんの財産にもなり、何よりも受益者の方が恩恵を受けるのではないでしょうか。そして、組織を運営する中で必ず出てくるのがガバナンスの問題です。特に労務の制度は毎年変わるので、専門家のアドバイスを受けながら、最新の情報を得ることが大事だと思います。やまがた福わたしに関しては、フードバンクの中でもひたむきに、誠実さをもって活動に取り組んでいるという評判を、あちこちで耳にしています。ただ今日の報告では、後継を任せられそうなスタッフが見つかったという報告を聞けなかったことが残念でした。緊急の案件が入ってくると、どうしても現場の業務に集中してしまうとは思うのですが、進捗管理をしながら事業をつくり上げていくことが、今後は求められるのではないかと思います。フードバンクは必要な社会資源なので、皆さんで知恵を出し合って、活動を維持できる取り組みを考えていってください。

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選考委員 立岡 学さん


会場との質疑


2団体からの発表に続いて、会場からは多様な学びプロジェクトに対し、「ビジョン・ミッションの共有のプロセスで工夫された点を教えてください」との質問がありました。多様な学びプロジェクトの梅林さんは、「コンサルタントの助言で、ビジョン・ミッションの策定に関わった雇用メンバーと、策定に関わっていない有償ボランティアでは、理解度に濃淡があるということで、属性で分けて共有を行い、その後、全体のセッションをすることで共通の理解を深めました」と回答しました。


【2年目/基盤強化】

組織の価値観を言語化し、中長期的なロジックモデルを再設計



特定非営利活動法人 サンカクシャ 事務局次長 塚本 いづみさん

東京都豊島区を拠点に、親や身近な大人を頼れない若者をサポートしています。団体は6年目で規模は拡大しましたが、代表の思いを言語化できず、客観的な社会的インパクトを示す数字に弱く、助成金の割合が高いという課題があり、組織基盤強化に取り組みました。1年目は事業リーダー制度を導入し、2年目は組織が大事にしている価値観を言語化するために、行動指針のワークショップを実施。スタッフが自分らしく生きられるように、事業リーダーにメンターとコーチングをつけ、給与テーブルを整備し、福利厚生として、オンラインのカウンセリングサービスを導入しました。また、中長期計画に合わせたロジックモデルの再設計として、アウトプット指標となる数字を自動集計できるシステムを構築。さらに「ライバルは闇バイト」というメッセージを打ち出したことで、対面している問題の深刻さが伝わるようになりました。クラウドファンディングやマンスリーキャンペーンを実施し、企業との連携を強化したことで、助成金の比率も減り、2024年度は寄付が2023年度の数倍に増える見込みです。

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塚本 いづみさん

【3年目/基盤強化】

タスクフォースチームで支援力の強化に向けた組織づくり



一般社団法人 サステイナブル・サポート マネージャー 三ツ口 和美さん

岐阜市を拠点に、精神障害や発達障害のある方の就労支援事業を行ってきましたが、制度のはざまにある方の就労支援に活動を広げる中で、職員の間に意識の乖離が出てきました。そこで1年目は組織診断で優先課題を明らかにし、2年目は、全職員を「人を育てる仕組みづくり・組織内コミュニケーションとやり甲斐強化・見える化」の3チームに分け、4回の全体ミーティングとオンラインサーベイ、全職員のヒアリング、100回のタスクフォースミーティングを行い、今も委員会活動として運用しています。そして3年目は外部アドバイザーのもと、「育成・採用・広報」の3チームに分かれました。育成チームは支援職育成のためのプログラムを検討し、採用チームは代表に一任してきた採用フローを見直し、採用基準を策定。広報チームは広報勉強会を開催し、発信力を強化したことで、昨年度は10社以上の取材を受けました。3年間の成果として、中核メンバーの主体性が向上。外部アドバイザーに入ってもらったことで視野が拡大し、新入職員も含めて、意見が出しやすい環境が整いました。

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三ツ口 和美さん


選考委員からの講評


多様性が起こすハレーションが組織を強くする



特定非営利活動法人 ワンファミリー仙台 理事長 立岡 学さん

サンカクシャは、「助成金の申請に追われている」と話していた昨年と比べても、大きく進化されました。代表が、「スタッフたちはわかってくれている」と思っていても、じつはスタッフたちには伝わっていないことが多く、手間を惜しまず丁寧に伝えていかないと実際の組織は成り立ちません。しかしスタッフたちが代表一人に任せていてはと慮り、スタッフそれぞれに組織を我が事として考える意識が醸成されたから、一人ひとりが自分の言葉で組織を語れるようになったのでしょう。サンカクシャは今、「30人の壁」に直面しているようですが、活動を世に広げていくためにも必要なプロセスなのだと思います。サステイナブル・サポートは組織基盤強化に2年取り組み、1年置いて、さらに1年取り組みました。あれだけの数のミーティングをこなすのは、大変な負担だったはずです。ただ、そこが機能したからこそ、ここまで組織基盤強化が進んだのだと思います。採用の部分では、中核人材の採用基準の策定にも取り組みましたが、組織の中核に文化が違う人が入ってくるとハレーションが起きます。しかし、多様性を採り入れていくことが組織自体を強くし、最終的には、受益者である当事者へと還元されていきます。

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選考委員 立岡 学さん


会場との質疑

2団体の発表に続いて、会場からはサンカクシャに、「オンラインのカウンセリングサービス導入に対する、スタッフの感想を教えてください」との質問がありました。サンカクシャの塚本さんは、「まだ月に1、2件の利用ですが、導入してすぐに、雇用形態にかかわらず、スタッフ全員のストレスチェックを行いました。『最近、疲れていると思ったら、けっこうなストレスがかかっていることがわかりました』などの反応があり、こちらは一定の効果がありました」と答えました。


修了書贈呈

続いて、Panasonic NPO/NGO サポートファンド for SDGs【国内助成】で「組織診断からはじめるAコース」にて3年間の助成プログラムを修了したサステイナブル・サポートと「組織基盤強化からはじめるBコース」にて2年間の助成プログラムを修了したサンカクシャに、パナソニックの堂本より修了書を贈呈しました。

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サステイナブル・サポート、サンカクシャへの修了書贈呈の様子

全体講評及び閉会の挨拶


高い対人技術を要する人材の育成に伴う困難

特定非営利活動法人 市民社会創造ファンド 理事長 山岡 義典さん

選考委員の先生方は、応募団体の皆さんから送られてきた密度の高い申請書を読み、大変な議論を経て、最終的な結論を出されているので、講評にも鋭さが光っていました。今日の発表を聞いていると、組織基盤強化とは言っても、そのほとんどが人材育成でした。貧困問題という言葉だけでは表しきれない、さまざまな生きづらさを抱えた、傷つきやすい方々を対象にした対人サービスですから、高い対人技術を必要とします。その点を配慮した言葉使いを無意識にちゃんと身につけておられることが、今日発表されたリーダーや中堅スタッフの皆さんの言葉の選び方からも伝わってきました。環境問題やまちづくりに取り組む団体とも違った組織づくり上の困難と言えるでしょうが、今日はその豊富な物語を聞くことができました。ここで話した成功や失敗の体験を地元に帰ってから、今度はぜひ3倍とか4倍の時間をかけてじっくり話してみてください。ほかの団体の組織基盤強化にきっとつながると思います。

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山岡 義典さん