2025年 Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs
フォローアップ調査レポート
- 組織基盤強化の成果は、時間とともに現れる -

Panasonic NPO/NGOサポートファンドfor SDGs(以下、サポートファンド)では、組織基盤強化助成の中長期的な成果を把握するために、助成期間が終了して数年が経過した時点でフォローアップ調査を行っている。今回は、助成期間終了後1.5年が経過した団体(海外3団体、国内5団体)へのフォローアップ調査(以下、1.5年後調査)に加えて、助成期間終了後3.5年~4.5年が経過した12団体(海外5団体、国内7団体)を対象としたフォローアップ調査(以下、3.5年後調査)も行った。


この調査で分かったこと(ポイント)


  • 本調査から、組織基盤強化の取り組みは、助成終了後も時間をかけて成果が現れていくことが明らかになった。
  • サポートファンドの助成事業に取り組んだ団体では、助成終了後も財政規模の拡大が続いており、1.5年後調査では平均78.5%、3.5年後調査では161.1%の総収入の増加が見られた。
  • 助成終了後の年数が経過するほど、組織運営上の課題の解決度が高まる傾向が確認された。

※本調査は当該年度に助成期間を終了した団体を対象としており、サポートファンド全体を代表するものではない。

写真

合同会社 コドソシ
代表 田口由紀絵 氏


調査対象



①助成期間終了後1.5年が経過した8団体

団体

分野

助成内容

助成年数

認定特定非営利活動法人 地球市民の会

海外

2021 組織診断
2022 基盤強化
2023 基盤強化

3年

特定非営利活動法人 ARUN Seed

海外

2023 組織診断

1年

特定非営利活動法人 Alazi Dream Project

海外

2023 基盤強化

1年

認定特定非営利活動法人 PIECES

国内

2020 組織診断
2021 基盤強化
2023 基盤強化

3年

特定非営利活動法人 京都自死・自殺相談センター

国内

2021 組織診断
2022 基盤強化
2023 基盤強化

3年

特定非営利活動法人 名古屋難民支援室

国内

2022 組織診断
2023 基盤強化

2年

特定非営利活動法人 陽だまり

国内

2023 組織診断

1年

特定非営利活動法人 多文化フリースクールちば

国内

2023 基盤強化

1年

②複数年(2年ないし3年)の助成期間終了後、3.5年~4.5年が経過した12団体

団体

分野

助成内容

助成年数

認定特定非営利活動法人 ACE

海外

2019 基盤強化
2022 基盤強化

2年

特定非営利活動法人 イカオ・アコ

海外

2019 基盤強化
2020 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 AMDA社会開発機構

海外

2019 基盤強化
2021 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 アジアキリスト教教育基金

海外

2020 組織診断
2021 基盤強化

2年

特定非営利活動法人 Accept International

海外

2020 組織診断
2021 基盤強化

2年

特定非営利活動法人 あきた結いネット

国内

2019 組織診断
2020 基盤強化
2021 基盤強化

3年

特定非営利活動法人 さいたまユースサポートネット

国内

2019 組織診断
2020 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 女性と子ども支援センター
ウィメンズネット・こうべ

国内

2019 組織診断
2020 基盤強化

2年

特定非営利活動法人 フードバンク北九州ライフアゲイン

国内

2019 基盤強化
2020 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク

国内

2020 組織診断
2021 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 虹色ダイバーシティ

国内

2020 組織診断
2021 基盤強化

2年

認定特定非営利活動法人 3keys

国内

2020 基盤強化
2021 基盤強化

2年

調査方法



  • 資料分析:応募申請書、完了報告書等の分析
  • アンケート調査:WEBによるアンケート調査(2025年9~10月実施。回答率100%)
  • ヒアリング調査:助成当時の担当者にコンタクトを取れる団体を優先し、海外助成国内助成それぞれ4団体を選び、合計8団体にヒアリング調査を行った(2025年10月~11月実施)
  • 調査体制:田口由紀絵、藤本貴子、渡辺眞子

調査結果



【助成終了後1.5年の変化】

【成長段階にある団体が多かった】

1.5年後調査の対象となった8団体のうち、6団体は申請時の活動年数が10年以内、財政規模は約470万円~2,200万円であった。多くの団体が、組織として成長過程にある段階で助成に取り組んでいたことが分かる。

 


<申請時の財政規模と活動年数>

申請時の財政規模と活動年数の図

【財政規模はすべての団体で拡大していた】

助成実施前と比べた総収入の増加率は、平均で78.5%であった。すべての団体において、助成前を上回る結果が確認された。
海外団体では寄付、国内団体では事業収入(委託費)の増加が目立ち、組織基盤の強化が財源の多様化につながっている様子がうかがえる。

助成事業を通じて内部研修の質が向上し、外部からの研修依頼につながった。(団体コメント)


<総収入の増加率>

 

全体

海外

国内

増加率

n

増加率

n

増加率

n

総収入額

78.5%

8

99.0%

3

67.2%

5

内訳

会費

9.2%

7

2.6%

3

14.4%

4

寄付

37.2%

8

70.4%

3

20.5%

5

助成金・補助金等

16.6%

7

-2.4%

2

25.2%

5

事業収入(委託費)

440.4%

4

22.5%

1

786.3%

3

事業収入(自主事業)

13.5%

2

39.7%

1

-7.8%

1

その他

3035.4%

5

1820.4%

2

4247.3%

3

【課題解決の度合いには差もみられた】

組織運営上の課題が解決された(目標の80%以上)と回答した団体は、全体の75%であった。一方で、国内一部団体では、課題設定の難しさなどから十分な解決に至っていないケースも見られた。


<組織課題の解決度>

目標の80%以上解決された割合:全体(75.0%)、海外(100%)、国内(60.0%)

【助成期間が1年間であったにもかかわらず課題の解決度が高かった団体が2団体あった】

助成期間が1年間にもかかわらず、課題の解決度が80%と答えたのが1団体、120%と答えたのが1団体あった。どちらも応募時の活動年数が8年で、1人のリーダーシップに頼る組織だったといえるが、組織基盤強化に取り組むことで理事会や他のメンバーも支える組織に変わり、財政や事業の規模の拡大にもつながっている。

理事それぞれが何に貢献すればよいのか明確になり、事業も確立してきた中で新しいアイデアを持ち寄ってくれるようになった。(団体コメント)

【課題解決による組織の変化は団体によってさまざまだった】

組織課題が解決したと答えた6団体は、それぞれの団体の背景や、強み・弱みに基づき第三者の伴走支援を得ながら組織基盤強化に取り組んだ。理事会が組織運営にかかわるようになったことによる変化や、対話ができるようになったことによる変化など、団体ごとに組織の変化のありようはさまざまであった。


<組織の変化>

団体(分野)

助成期間

組織の変化

A(海外)

1年

理事会が組織運営に関わるようになった。財源の開発、受益者の増加など、新たなフェーズに進んでいる。

B(海外)

1年

予想していなかった課題が浮き彫りになっただけでなく、そのプロセスが新たな学びや動機付けになった。1人のリーダーシップに頼らない組織になってきた。

C(海外)

3年

チームとして対話の文化が必要だと気づき、パフォーマンスが上がった。外部組織との連携が広がった。

D(国内)

1年

他のメンバーが何を考えているかを知ることの重要性が分かった。理事長が行っていた業務を他のスタッフに振り分けることができ、1人のリーダーシップに頼らない組織になってきた。

E(国内)

2年

理事会が組織運営に関わるようになった。組織運営・財政面に関する意識が高まった結果、経常収入の拡大が事業拡大につながっている。

F(国内)

3年

メンバーの主体性が高まり、事業の質が向上した。

【組織診断や第三者のコンサルタントが役に立った】

組織診断を行ったすべての団体が、組織診断により「組織が取り組むべきことが明確になった」「組織内の意識をそろえることができた」と答えた。また、コンサルタントは「とても役立った」あるいは「まあ役立った」と答えた。

自己資金を安定的に確保しなければ、組織の運営自体が継続できなくなるのではと考えて申請した。もともとボランティアが中心で始まった組織なので、自己資金を増やすこと自体の合意形成が大変で、第三者のかかわりによりそれが可能になった。(団体コメント)

月1回の中期計画策定の委員会に第三者のコンサルタントに入ってもらうことで、人の想いを置き去りにせずに話を進めていく場をメンバーが体感した。民主的に話し合うことや、みんなが納得する合意点を作ることが根付き、組織が変わった。(団体コメント)

【助成終了後1.5年の変化】

【財政規模の拡大がさらに顕著であった】

3.5年以上が経過した12団体では、総収入の増加率は平均161.1%と非常に高かった。
寄付や助成金・補助金等の増加が目立ち、組織基盤の強化が団体の信頼性向上につながっていることが示唆される。


<総収入の増加率>

 

全体

海外

国内

増加率

n

増加率

n

増加率

n

総収入額

161.1%

12

141.6%

5

175.9%

7

内訳

会費

-30.8%

12

12.1%

5

-50.9%

7

寄付

284.1%

12

194.9%

5

363.9%

7

助成金・補助金等

587.0%

11

307.7%

5

961.4%

6

事業収入(委託費)

4.9%

5

-34.1%

1

19.4%

4

事業収入(自主事業)

144.0%

10

-13.9%

5

591.3%

5

その他

-6.4%

9

54.3%

4

-37.2%

5

【1.5年後調査時より、3.5年後調査時の方が組織課題の解決度が上がり、組織の変化も深化している】

組織運営上の課題が80%以上解決されたと回答した団体は91.7%にのぼった。

3.5年後調査の対象団体については、以前に1.5年後調査も行っており、2時点での回答を個別に比べると、12団体中5団体で課題の解決度が高くなっていた。たとえば1.5年後調査時には「あまり解決されなかった(目標の60%)」と答えた団体が、3.5年後調査時には「ほぼ解決された(目標の80%)」に答えを変えていた。組織基盤強化の成果が現れるまでに、3年以上かかる団体が少なくないことが今回の調査であらためて明らかになった。

また、1.5年後調査時には「スタッフの能力が高まった」が主な変化として挙げられていた団体が、3.5年後調査時には「事業の質の向上」や「地域での存在感の高まり」を挙げており、変化の質が内部から外部へと広がっている様子が確認された。


<団体ごとの課題の解決度と組織の変化>

団体ごとの課題の解決度と組織の変化:【[A(海外)の団体(分野)は、1.5年後では解決度120%、最も大きな変化としては「組織の財源が多様化した」、3.5年後では解決度120%、最も大きな変化は「組織の財政規模が拡大した」]、B(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度120%、最も大きな変化としては「スタッフの能力が高まった」、3.5年後では解決度120%、最も大きな変化は「活動分野や地域での存在感が増した」]、[C(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度100%、最も大きな変化としては「スタッフの数が増えた」、3.5年後では解決度120%、最も大きな変化は「1人のリーダーシップに頼らない組織になっていった」]、D(海外)の団体(分野)は、1.5年後では解決度100%、最も大きな変化としては「組織の財政規模が拡大した」、3.5年後では解決度100%、最も大きな変化は「組織の財政規模が拡大した」]、[E(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度80%、最も大きな変化としては「ミッション・ビジョンが明確になった」、3.5年後では解決度100%、最も大きな変化は「事務局体制の強化」]、F(海外)の団体(分野)は、1.5年後では解決度80%、最も大きな変化としては「スタッフの能力が高まった」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「事業の質が向上した」]、[G(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度80%、最も大きな変化としては「ミッション・ビジョンが明確になった」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「理事やスタッフなど組織のメンバーが同じ方向を向くようになった」]、H(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度80%、最も大きな変化としては「1人のリーダーシップに頼らない組織になってきた」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「1人のリーダーシップに頼らない組織になってきた」]、[I(海外)の団体(分野)は、1.5年後では解決度60%、最も大きな変化としては「中長期の戦略を立てるようになった」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「理事会が組織運営に関わるようになった」]、J(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度60%、最も大きな変化としては「ミッション・ビジョンが明確になった」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「ミッション・ビジョンが明確になった」]、[K(国内)の団体(分野)は、1.5年後では解決度60%、最も大きな変化としては「スタッフの能力が高まった」、3.5年後では解決度80%、最も大きな変化は「1人のリーダーシップに頼らない組織になってきた」]、L(海外)の団体(分野)は、1.5年後では解決度60%、最も大きな変化としては「中長期の戦略を立てるようになった」、3.5年後では解決度60%、最も大きな変化は「理事会が組織運営に関わるようになった」]】

これから取り組む団体へのメッセージ



アンケートに記載していただいた、これから取り組む団体へのメッセージを一部掲載する。

【助成終了後1.5年後団体】

「しんどいこともあるかもしれませんが、専門家や事務局に寄り添ってもらいながら、頑張って走りぬくことで、組織の課題やビジョン・ミッションの理解が深まり、充実した活動になります。組織改善はずっと継続して行うものだと実感しております。一緒に頑張っていきましょう!」

【助成終了後3.5年後団体】

「当時、最も時間を割いて取り組んだプロジェクトで、やればやるほど効果が出ると考えます。他の団体のいいところを取り入れるのも大事です。」

「大変なこともあると思いますが、今の努力は数年後には大きな結果となって返ってきます。ぜひ前向きに、楽しく頑張っていただきたいと思います。」

これらの声からは、取り組みの大変さと同時に、支え合いながら組織を成長させてきた実感が読み取れる。

まとめ



本調査から、組織基盤強化の取り組みは、助成期間中のみで完結するものではなく、時間をかけて組織の力として蓄積されていくものであることがあらためて確認された。
こうした積み重ねが、団体の持続的な活動を支え、社会的な広がりにつながっていくと考えられる。