「素直な心」を保ち、自分の選択を信じる
今回は、中国のスカラシップ事務局が、スカラシップの修了生であり、現パナソニックインダストリー(株)常務執行役員 兼 中国総代表の殷 志明さんにインタビューを実施。そのインタビュー記事をご紹介します。
○殷 志明さん
国籍:中華人民共和国
現在の居住国と職業:中国、パナソニック インダストリー(株)常務執行役員 兼 中国総代表
経歴:
1999年認定→大阪大学にて基礎工学研究科 情報数理系を専攻
2001年、大学院修了後、松下電器産業(株)(当時)に入社、2006年、中国出向
2014年パナソニック インダストリー (中国)(有)総経理
2020年パナソニック インダストリー(株)常務
2022年より現職
殷さんは、学びと仕事の両方のステージにおいて、パナソニックと深い関わりを持っています。彼がパナソニック スカラシップを受けたのは、その創設当初のことです。このスカラシップを通じて、大阪大学での研究に専念することができました。そして修士課程を修了後、松下電器産業(株)(当時)に入社し、そこでキャリアをスタートさせました。
最初は技術職として働いていましたが、後に営業職へと転身しました。その後、営業職を通じてパナソニックの事業の発展に大きな役割を果たしてきました。
パナソニック スカラシップがもたらした新たな可能性
殷さんは言います。「大学時代、学校の留学生支援室を通るたびに、奨学金のポスターを目にしました。当時、留学に興味を持っていた学生たちは皆、国費の奨学金に注目していました。それは、国費の奨学金の方が高かったからです。ある日、何気なく貼ってあったパナソニック スカラシップのポスターを見つけました。当時、パナソニックは超音波や超音波CTなどの画像処理の分野での発展を望んでいました。これは私の専攻と研究の方向性にぴったりで、しかも奨学金は国費よりも高かったのです。試しにと思い、出願書類と修士期間の研究計画書を提出したところ、意外にもすぐに合格の返事が来ました。パナソニックは私の研究計画に非常に興味を持ってくれたため、パナソニックのスカラシップに合格する事が出来ました。」
パナソニック スカラシップの支援を受けている間、殷さんはスカラシップの事務局が定期的に行う活動に積極的に参加しました。これにより、パナソニックの社員との交流を通じて、次第にパナソニックの経営理念や経営状況を深く理解することができたと言います。そして、それが彼の人生やキャリアにおいて新たな可能性や成長の基盤となったのです。
技術研究から人と関わる販売営業へ、自分の選択を信じる
2001年に大学院修士課程を修了した後、パナソニック スカラシップとしてすべての学生に対して、修了後の計画についてヒアリングを行いました。学生たちは、帰国、大学進学、日本での就職など、自由に選択することができる中、殷さんはパナソニックスカラシップ修了生として唯一パナソニックに入社し、京阪奈にある研究所に配属され、技術研究に従事しました。
その後、自分の将来のキャリアプランについて考えた殷さんは、自分の強みを生かしてパナソニックの事業にもっと貢献したいと考えるようになりました。そして、自分は技術研究よりもコミュニケーションが得意であることに気づき、営業として中国市場への進出を通じて自分の強みを生かせると考えました。最終的に、人事部門の協力を得て、パナソニックインダストリー(株)でのキャリアがスタートしました。
殷さんは、「パナソニックの支援に感謝し、一滴の恩も報いたいという思いで、パナソニックのために自分の青春を捧げたい」といいます。今年で、パナソニックに入社して23年になります。23年間を振り返り、殷さんは次のように述べています。
「これだけ長く続けられたのは、何よりもパナソニックの歴史や経営理念があったからです。パナソニックの歴史と経営理念はすでに私の心の中に深く刻まれており、知らず知らずのうちに私を人として成長させてくれました。次に、パナソニックでの成長と達成感があります。これは私の努力だけではなく、上司や同僚のサポートのおかげでここまで続けることができました」
殷さんが深く影響を受けた経営理念の中で、最も共感するのは「企業は社会の公器である」という言葉だと言います。そして、松下幸之助創業者の「会社は、単に利益のために存在するのではなく、社会的責任を負う会社である」という言葉に感銘を受け、さらに「素直」という言葉の意味については、「仕事をする上であまり多くのことを考えず、素直な心で、成功と損失を見れば、より遠く、より良い道を歩むことができる」と述べています。
グループ中国・北東アジア総代表の本間さん (右)と
パナソニック インダストリー(中国)(有)の2023年度総会で挨拶する殷さん
若い社員と学生たちへのメッセージ
「若手社員に対しては、まず『素直な心』を持つことが大切です。シンプルに仕事に取り組む姿勢を保ち、考えすぎないことが重要です。人はシンプルであればあるほど悩みは少なくなります。次に、絶えず学び続けることが重要です。世代交代が非常に速い時代であるため、常に好奇心を持ち、絶えず学び、成長し続けなければなりません。3つ目は、損をすることを学ぶことです。「損は福」とはよく言われるように、仕事においても同様で、仕事の過程は経験の積み重ねであり、自分の成長の財産となります」
「今後、パナソニック スカラシップに応募しようと考えている学生の皆さんには、『自分の興味やこれからやりたいことを存分にアピールしてほしい』と伝えたいです。前向きな気持ちでスカラシップに応募し、すべてのことを楽しみ、感謝の気持ちを持つこと。そして初心を忘れず、多くの人生の可能性を生み出してくれることを期待しています」
と語りました。
殷さんのインタビューを通じて、パナソニック スカラシップが多くの可能性を生み出し、個々の成長を支えていることがよくわかりました。殷さんのように、自分の選択を信じ、素直な心で挑戦し続ける姿勢は、私たち全員にとって大きな励みとなります。これからも、パナソニック スカラシップは、未来を担う若い人材を支援し続けてまいります。