脱炭素社会の早急な実現のために「削減貢献量」の必要性を訴求 Panasonic at COP28

パナソニックグループの楠見雄規CEOは、2023年にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開催された国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)の会期中に開かれた経済産業省主催のセミナーで自社の技術で社会の二酸化炭素(CO2)排出削減を後押しする「削減貢献量」の意義や国際標準化の必要性を訴えた。パナソニックはあらゆる事業領域で削減貢献量の最大化を目指す。 ​

写真:2023年に開催されたCOP28の会期中のセミナーで話す、パナソニックグループCEO 楠見雄規

世界の総排出量1%、50年までに削減目指す

パナソニックグループは現在、2022 年1月に発表した長期環境ビジョン「Panasonic GREEN IMPACT」を実践する。50年までには既存事業や新事業・新技術による社会の排出削減を含めた3億トン以上の年間排出量削減を目指すというもの。自社のスコープ1〜3の1.1億トンに加え、社会貢献分の2億トンも削減していく。これは現時点の世界の総排出量の約1%で、日本の総排出量の約3分の1にあたる(EDMC/エネルギー・経済統計要覧2023年版)。

セミナーに登壇した楠見は「世界の全拠点で実質ゼロを達成することは容易ではないが、自社の努力で可能にできる」とする一方、「関連する他社についてはエネルギー供給サイドの電力の再エネ化など社会全体のエネルギー変革があって初めて削減が実現する。その潮流を促すため、社会全体のCO2排出量削減に貢献する『削減貢献量』を拡大する」ことを宣言した。

削減貢献量とは自社の製品・サービスにより、社会全体でどれだけCO2の排出削減に貢献したかを定量的に示すもの。従来の製品・サービスを省エネや再エネの性能の高いものに置き換え、社会にインパクトを与えた企業の削減貢献量は増える。23年3月には持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)がその算出や報告に関する指針をまとめ、国際標準化を推し進めている。

社会のエネルギー変革の促進を図るのは当社の省エネと再エネの技術・ソリューションだ。電気自動車用車載電池やヒートポンプ式温水暖房機などの導入を進め、動力源を化石燃料から電気に転換する。様々な省エネもエネルギー効率化ソリューションを社会実装することで実現する。再エネについては水素の本格活用で普及を進めていく。ジャパン・パビリオンで展示した「エネルギー自立分散型ソリューション」では発電デバイス群と蓄電デバイス群を組み合わせ、CO2フリーエネルギーの地産地消社会を提示した。

Panasonic GREEN IMPACT 050年に向け現在の世界のCO2総排出量の「約1%(≒3億トン)」の削減インパクト(2019年 エネルギー起源CO2排出量 336億トン(出典:IEA) 3億トンは2020年の排出係数で算出)を目指す 2020 1.1億トン(自社バリューチェーンにおけるCO2排出量) ①OWN IMPACT 1.1億トン ②CONTRIBUTION IMPACT 1億トン ③FUTURE IMPACT 1億トン +INFLUENCE [CO2排出削減量と削減貢献量] パナソニックグループの自助努力でできる削減量 CO2(トン) 2020 1.1億 排出量 2024 1,640万 2030 3,150万 2050+ 1.1億 パナソニックグループの製品・サービスで社会にインパクトを起こす 削減貢献量 2020 2,350万 2024 3,830万 2030 9,300万 2050+ 2億

革新的なソリューションで、CO2削減にインパクトを

楠見はエネルギー変革の道筋について「当社が目指すのは日々の生活やモビリティ、街のインフラ、そしてサプライチェーンの様々な事業においての削減貢献量を活用し、一刻も早くカーボンニュートラルを実現すること」と語る。CO2フリーエネルギーの地産地消をリードするのは、同社の発電デバイスや蓄電デバイスの技術とソリューションだ。

COP28の展示では、ビル・マンションの窓ガラスや壁面など様々な場所に設置可能な「ペロブスカイト太陽電池」をはじめ、太陽光発電による余剰電力の活用で水素を生成する「グリーン水素生成装置」、複数台を連携して需要に応じた発電を行う「純水素型燃料電池」、発電と蓄電をコントロールする「分散型エネルギー資源管理システム(DERMS)」を紹介。災害時にはバックアップとして地域への電力供給も行うなど、日常生活の継続も支援する。「つくる」「つかう」「いかす」のそれぞれの技術・ソリューションによる「社会の脱炭素化と安全安心なくらしに貢献する」ことを目指す。

[各インパクトにおけるパナソニックグループの取り組み事例] IMPACTの種類 パナソニックグループ取り組み事例(一部) ①OWN IMPACT 自社バリューチェーンにおける排出削減インパクト CO2ゼロ工場の取り組み 同社オフィスの省エネ 同社家電商品の省エネ ②CONTRIBUTION IMPACT 既存事業による社会への排出削減貢献インパクト 純水素型燃料電池 ヒートポンプ式温水暖房機(Aquarea) 真空断熱ガラス(Glavenir) コンビニ・スーパー向け冷蔵用自動ドア EV用リチウムイオンバッテリー ③FUTURE IMPACT 新事業・新技術による社会への排出削減貢献インパクト 現在開発中の環境技術(ペロブスカイト太陽電池等) +INFLUENCE 社会のエネルギー変革に対する波及インパクト ①~③の事業活動や社会とのコミュニケーション活動を通じて、生活者や事業者の再エネ拡大を促進

「削減貢献量」を拡大し、社会のエネルギー変革促す

脱炭素化に寄与する技術開発やイノベーションは、地球環境問題を解決に導くうえで重要な役割を果たす。だが、企業が持続的にそれを推し進めるためには前述の削減貢献量が企業評価に適切に反映される仕組みが必要だ。

パナソニックグループは国際会議などで削減貢献量の社会的意義や標準化の必要性を課題提起してきた。その活動が実を結び、23年の主要7カ国首脳会議(G7サミット)の成果文書に「脱炭素ソリューションを通じ他の事業者の排出削減に貢献するイノベーションを促すための民間事業者の取り組みを奨励・促進する」と明記された。

楠見は「排出量は国際的に認知された算出法があるが、削減貢献量にはまだグローバル共通の基準がない。国際標準化されれば企業はその拡大に向けて様々な創意工夫を凝らすようになり、それが大きなうねりとなって社会のエネルギー変革をけん引するはずだ」と訴えた。

また、COP28の「ネットゼロ社会に向けた削減貢献量の適切な評価」セミナー(経済産業省主催)に登壇したパナソニックグループ品質・環境担当の上原宏敏は「企業・事業評価の指標として削減貢献量を金融分野が活用するためには、まずその算定の公平性と結果の比較容易性を整備する必要がある」と指摘し、同グループが進める3つのステップを解説した。

1つ目は、削減貢献量を算定するプロセス・条件の標準化。パナソニックグループはWBCSDや経済産業省のGXリーグのメンバーとして削減貢献量の開示・評価ガイドラインの作成を推進してきた。国際電気標準会議(IEC)が24年に導入を目指す国際規格の策定も支援する。

2つ目は、業界ごとの事例集の発行。「非常に難しい取り組みだが、これにより企業間の削減貢献の比較が容易になり、評価指標としての活用が期待できる」(上原)。

3つ目は、削減貢献量の積極的な開示。パナソニックグループはすでに『サステナビリティ データブック』に削減貢献量の数値とその算定方法を掲載している。上原は「WBCSDやGXリーグのガイダンス、IECでの議論を踏まえ透明性をもって公表した。削減貢献を果たす事業の変革・成長を加速している証しとして、今後も継続して開示していく」とその重要性を強調した。

写真:パナソニックグループCEO 楠見 雄規

パナソニックグループCEO

楠見 雄規

写真:パナソニック オペレーショナルエクセレンス 品質・環境担当、CS担当 執行役員 上原 宏敏

パナソニック オペレーショナルエクセレンス
品質・環境担当、CS担当 執行役員

上原 宏敏

創業からの理想を追求し、社会を巻き込む潮流へ

そうした一連のステップを踏み、削減貢献に取り組む企業が適切に評価される仕組みを確立するためには、あらゆるステークホルダー間での議論や協力が必要不可欠だ。

楠見はCOP28のセミナーで「1918年の創業以来、当社の使命は『物と心が共に豊かな理想の社会』の実現。地球温暖化を一刻も早く食い止めなければ、次の世代に美しい地球環境を残すことができず、使命を達成することはかなわない。カーボンニュートラル社会の早急な実現に向け、世界の様々なステークホルダーと協力し、あらゆる事業領域で削減貢献量を拡大していく」と取り組みへの強い思いを示した。

パナソニックグループの「Panasonic GREEN IMPACT」の実践は、創業者の思い描いた「理想の社会」へと道を正すためのトランスフォーメーションでもある。パナソニックグループはその使命に基づいてカーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの実現へ挑戦し、7つの事業領域から様々なインパクトを広げながら、社会を巻き込んだ変革への潮流を生み出していく。

※この内容は日経新聞の記事広告(2024年1月25日掲載)を一部改変したものです。