組織基盤強化フォーラム 組織の中の多様な役割や運営方法を考える

2026年1月27日、「Panasonic NPO/NGOサポートファンド for SDGs」の贈呈式に続いて、日本NPOセンターとの共催で、組織基盤強化フォーラムを開催しました。会場には、贈呈式にご参加くださった助成団体の皆様とフォーラムにお申し込みいただいた皆様、合わせて約120名の方々にご参加いただきました。キーノートスピーチや組織基盤強化の事例発表、皆様との質疑応答やパネルディスカッションを通して、組織の中で固定化せずに豊かに揺らぐ多様な役割や、組織の運営方法について考えました。

●開会挨拶

多様なステークホルダーと3つの重点テーマで取り組む企業市民活動


パナソニックは1918年に創業し、創業者である松下幸之助が1929年に経営の基本方針を制定し、事業を通じて、人々の暮らしの向上と社会の発展に貢献することを目指しています。また、企業市民活動においても、社会課題の解決と新たな社会価値の創造に取り組んでいます。
企業市民活動は、SDGsの第1目標であり、創業からの変わらぬ願いである「貧困の解消」、事業でも最優先で取り組んでいる「環境」、課題解決を支える「人材の育成(学び支援)」という3つの重点テーマに沿って活動を推進しています。
本日のフォーラムでは、組織として大切な価値観をしっかりもちながらも変化に柔軟に対応する多様な組織の在り方や運営の工夫をNPO/NGOの皆様とご一緒に学び、考えを深めていきたいと思っています。社会課題の解決は、多様なステークホルダーの皆様の強い思いや協力をもって、初めて成り立つものです。私たちパナソニック自身も、社会の変化に対応してアップデートしながら、よりよい社会の実現に向けて取り組んでいきたいと考えております。

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パナソニック ホールディングス株式会社
企業市民活動担当室 室長 堂本 晃代

●キーノートスピーチ

組織のターニングポイントで考えるリーダーシップとマネジメント


私が昨年9月まで勤務していた、世界の子どもたちのために活動する国際NGOワールド・ビジョン・ジャパンでは、いくつかのターニングポイントがありました。2000年初頭から成長期を迎えた、メイン事業のチャイルド・スポンサーシップは、組織基盤強化にも貢献しました。一方で、東日本大震災や日本経済の停滞を経て、社会の国内への課題意識が高まった時期もありました。そのような組織のターニングポイントの只中に、スーパーレジェンドリーダーの後任として事務局長を打診されました。3年間逡巡し、2017年に引き継ぐことになりました。
P・F・ドラッカーの『非営利組織の経営』には、滅茶苦茶ハードルの高い「リーダーに必要な能力」が書かれており、やる気より逃亡願望が先行しましたが、「リーダーは仕事を通じてつくられる」とも書いてあり、少し気が楽になりました。また、当時のメンター(外国人)から、「あなたのリーダーシップを見つけよう」という英語の記事をもらったのですが、そこには、組織に必要な多様なリーダーシップスタイルが10個書かれていました。それを読むうちに、人にはだれしも何かしらのリーダーシップが備わっていること、マネジメント(自分)の役割は、今組織が必要とするリーダーシップスタイルをもつ人達に「助けてください」とお願いすることーチームで組織を牽引し支える「チームリーダーシップ」で行けばよいのだと気がつきました。

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認定特定非営利活動法人
日本NPOセンター
副代表理事 木内 真理子さん

2つ目のターニングポイントは、後任に事務局長のバトンを渡した時です。次の継承も、チームからチームにしたいと思いました。そこで伴走型の組織開発コンサルタントの協力を得て、まずは現行のマネジメントチームが、自分たちのつくってきた土台、事業・組織の課題や方向性、継承したいことを共有し、次世代のチームに、これを受けて何をしたいか、どう変わりたいか話し合ってもらいました。
社会の変容に伴い、私たちの仕事も複雑化し増えています。一人で太刀打ちするのは到底無理です。でも、分担することで組織は強くなります。分担は共有でもあります。だからこそ、組織全体で言語化するプロセスが必要なのだと思います。

●組織基盤強化の事例発表

「個人の力」を「組織の力」に転換し、収支が6倍に成長


1992年に設立し、兵庫県を拠点に、DV被害に遭われた女性やシングルマザーと子どもたちの支援を行っています。2004年にDV被害女性と子どものシェルターを開設、2013年にシングルマザーと子どもの居場所「WACCA」を開設し、2019年に居住支援法人の資格を取って女性の居住支援も始めました。しかし、代表の熱意で事業は拡大する一方で中長期戦略は不在。意思決定がトップに属人化し、世代交代も進んでいませんでした。就業規則や決裁ルートは未整備で、ICT活用も遅れていて、紙媒体で情報共有を行っている状態でした。
そこで2019年にサポートファンドの組織診断、2020年に組織基盤強化を行ったところ、事業横断的な支援会議を支援スタッフが自ら行うようになり、事業規模を支える支援インフラが確立。その結果、3000万円程度の収支と支出がトントンだった財務状況が、助成後は右肩上がりになり、2024年度決算では収支が6倍の1億8000万円まで成長しました。事業においても、2020年にはステップハウスを開設し、2024年には地元企業の元女子寮を無償で借りて、六甲ウィメンズハウスという40室の自立のための支援付き住宅を開設することができました。

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認定NPO法人
女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ
事務局長 鈴木 幸恵さん

さらに、意思決定がトップダウンから合議制に変わって、経営会議を開くようになり、組織を支えるスタッフを育成する視点がもてるようになりました。事務局体制を強化して規定類を整備し、ICTで情報共有ができるようにもなりました。PRINCIPLES(判断原則)を言語化することで属人化から脱却し、透明性のある事業継承を目指しているところです。

組織基盤強化が団体の理念を生き、助け合う風土をつくるきっかけに


フリー・ザ・チルドレンは、カナダ人の12歳の男の子が児童労働をどうにかしたいとの思いから、1995年に立ち上げたNGO団体です。日本では、この活動を紹介する形で1999年に設立。子どもが社会に発信することを大切に考えた、子ども向けの事業を行っています。
もともとボランタリーな組織運営でしたが、2008年にメンバーが増えてきて、代表が常勤スタッフになり、独立した事務所を設立。2011年にサポートファンドに応募しました。当初は広報に問題があると思っていましたが、コンサルタントに入っていただき、事務局の業務体制の見直しが必要だとわかりました。2年目には事務局の業務体制の見直しに取り組み、ボランティア運営組織から有給スタッフが運営する組織に変わりました。3年目はスタッフの合宿を行うことで、個人の目標と団体の中長期目標を重ね合わせて考えることの重要性に気づき、団体のポリシーに沿った活動をしていく意識が育ち、寄付メニューの立案や広報ツールの設計にも取り組むことができました。

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認定特定非営利活動法人
フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
副代表理事 原元 望さん

コロナ禍をきっかけに完全リモートでも働ける、多様な生き方を応援する職場に変わりましたが、バーチャルオフィスを設けたことで、コミュニケーションのフラストレーションはなくなりました。組織基盤強化が、まずはスタッフが団体の理念を生きてこそ、子どもたちにも伝えられるのだと気づき、困った時には助け合う風土をつくるきっかけをくれました。

●質疑応答・パネルディスカッション

【コーディネーター】
吉田 建治さん(日本NPOセンター 事務局長)

【登壇者】
鈴木 幸恵さん(女性と子ども支援センターウィメンズネット・こうべ 事務局長)
原元 望さん(フリー・ザ・チルドレン・ジャパン 副代表理事
木内 真理子さん(日本NPOセンター 副代表理事)

リーダーシップ継承のポイントとメンターについて

木内さん 自分が事務局長を引き継いだ時に経験した葛藤を、次の人の時には緩和したいという気持ちが強くありました。継承は感情的になる部分もあるので、感情のマネジメントもポイントの一つです。メンタリングは、私の仕事や環境をわかっている人が、真っすぐじゃない斜めの立場から助言してくれる安心感があります。一方で、その人の中のやる気を言語化して引き出すコーチングのほうがモチベーションにつながるし、時代に合っているのではないかとも感じて、3年ほど前に資格を取りました。

リモートワークにおけるコミュニケーションのポイント

原元さん 今の私の仕事は、ほぼコミュニケーションの調整です。対面だと距離が近すぎるので、リモートワークで逆によかったと感じることもあります。私自身は発言しないのですが、いろいろな会議にとりあえず参加して、話を聞いておくと、今、どんな事業が何に悩んでいるのかわかるので、気になる件があれば、あとから個別に時間を決めて、聞きに行くことができます。

合議制へと移行するにあたって変えたこと

鈴木さん 合議制へと移行するにあたっては、代表や運営委員会のメンバーが私を信頼してくれていることを強く感じました。変えたことは、いろいろあります。きっちりした議案提出書をつくってはみましたが、何も埋まらなくて、これはやめました。経営会議はスタッフの評価など、センシティブな話が出てくるので、事務所の近くの会議室を借りて話しやすい環境を作りました。会議も、一人だけリモートだと空気が悪くなるので、その時は全員がリモートで参加するようにしました。

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パネルディスカッションの様子

●感想の共有と質疑応答

パネルディスカッションのあと、会場の皆さんは、4人で1つのグループになって感想を共有し、その中から出た質問をもとに、質疑応答の時間をもちました。

Q 日々の活動をしながら、組織基盤強化をどのように進めたのか?

A 原元さん 私たちの場合は、助成金を取れた喜びがとても大きかったので、助成金で組織基盤強化ができるフェーズに来たことを、まずはみんなで拍手して喜びました。コンサルティングを受ける文化がなかったので、どうして他団体の方に自分の団体のことを説明しなければならないのかと初めは思っていましたが、第三者の視点が大事だったことが3年くらい経ってから、わかりました。

Q 代表の意識変容は、どのようにして起きたのか?
合議制にしたことで、スピードが遅くなるデメリットは?

A 鈴木さん 代表はご年齢もあって、誰かに任せないといけないという気持ちになられたのだと思います。同時に、任せてもいいと思えるスタッフが育ったことも大きかったと思います。たしかに、スピード感は落ちたかもしれません。代表が一人で決めていたら、もしかしたら今も新しい事業をもっとできていたかもしれませんが、事業の継続性という観点から見れば、今の合議制でよかったのではないかと思っています。

Q 採用時に気をつけていることは何か?

A 木内さん 私がワールド・ビジョン・ジャパンにいた時に、新しく来る人と上司になる人の相性を知りたくて、採用面接で必ずしていた質問があります。これまでの上司の中で一番尊敬できた人を思い浮かべて、その理由を言ってもらい、上司になる人に聞いてもらっていました。次に一番嫌だった上司を思い浮かべてもらい、その理由を聞いて、私たちの組織に当てはまらないかどうか、みんなで自己チェックしました。そこが、彼女・彼らが働く上での一つのミニマムポイントになるのだと思います。

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質疑の様子