令和5年度
「新エネ大賞」の「導入活動部門」で経済産業大臣賞を受賞

経済産業大臣賞「新たな手法で工事費を大幅に抑制し、 特高受電工場へ太陽光を導入」

パナソニック ホールディングス株式会社(以下、パナソニックHD)、パナソニック エナジー株式会社、株式会社FDの3社は、経済産業省が後援し一般財団法人 新エネルギー財団が主催する令和5年度「新エネ大賞」の「導入活動部門」において、最高位である経済産業大臣賞を共同で受賞しました。1月31日 東京都江東区のTOC有明 コンベンションホールにて、表彰式が行われました。

新エネ大賞は、新エネルギーの一層の導入促進と普及及び啓発を図るため、新エネルギーに係る商品及び新エネルギーの導入、あるいは普及啓発活動を広く募集し、そのうち優れたものを表彰するものです。今回、パナソニック グループとしては平成21年度に続いて2度目で、経済産業大臣賞は初の受賞となります。

左から経済産業省 省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄氏、 パナソニック HD株式会社 グループCTO 小川立夫、  パナソニック エナジー株式会社 企画センター 課長 佐藤実、 株式会社FD 代表取締役 鈴木政司氏 写真提供:(一財)新エネルギー財団

左から経済産業省 省エネルギー・新エネルギー部長 井上博雄氏、パナソニックHD グループCTO 小川立夫、
パナソニック エナジー株式会社 企画センター 課長 佐藤実、株式会社FD 代表取締役 鈴木政司氏

写真提供:(一財)新エネルギー財団

取組の背景

パナソニックHDは、2030年にグループ全体の事業場におけるCO2ゼロを達成すると宣言し、グループ横断の組織体「サステナブル経営推進コンソーシアム」等を通して、太陽光発電の導入を事業場に働きかけてきました。オンサイト太陽光発電導入は、電気代を大幅に下げながらCO2を削減できるため、多くの事業場が積極的に取り組もうとしているものの、進め方のノウハウ、発電設備や系統連系に関する技術的知見が十分でなく、その知見を確立するためにモデル工場の取組を支援し、事例構築を進めてきました。

技術の概要

一定規模以上の太陽光発電を高圧以上の配電線に連系する場合、系統の地絡事故が発生した際に逆潮流が起きないよう、当該事象を瞬時に検知し、太陽光発電の出力を停止するため、地絡過電圧継電器(OVGR)※1の設置が送配電事業者から要求されます。この継電器が特高※2部にない場合、後から受電設備の改修工事をすると大がかりとなり、場合によって億単位の費用、工期1年以上となることがあります。
今回、地絡過電圧継電器(OVGR)が特高部にない特高受電工場においても、以下の取組みにより、前述の大がかりな工事を回避して、太陽光発電の導入を実現しました。

1)特高直下の高圧部に高速起動するデジタル継電器(不足電力リレー、逆電力リレーの機能を持つもの)を設置。
2)「電気設備の技術基準」に基づいて送配電事業者が要求する系統※3事故発生時の3.0秒以内の発電停止を、理論と実験の両方で証明。

本技術の導入事例

従来の導入事例

本技術の導入事例

※1 OVGR(Over Voltage Ground Relay)とは、地絡過電圧継電器のことで、地絡事故時に発生する零相電圧を検出して動作する継電器になります。

※2 特高(特別高圧)とは電圧が7000V超の電力を指し、一般的に受電電圧が20kV以上の事業者が利用できます。高圧は交流では600Vを越え7000V以下の電圧を指します。

※3 系統とは電力会社の送電網や配電網を指し、この系統に自家用の発電設備を接続することを連系と称します。

技術の成果

本技術を適用したパナソニック エナジー(株)二色の浜工場では、当初想定された工事費約2億円を削減、工期1年を短縮し、約2MWの太陽光発電を設置して、2023年4月から稼働しています。PPA契約(第三者投資による電力購入契約)による合理化効果は、約2000万円/年、CO2削減効果は約1000トン/年となります。

日本全体で特高受電拠点は11000か所ほどあります。そのうち特高部に地絡過電圧継電器が設置されておらず太陽光発電の導入ができていなかった工場に対して、本知見が活用されることで太陽光発電の導入を実現することができます。

太陽光発電を導入した
パナソニック エナジー(株)二色の浜工場

受賞者コメント※所属は応募時の所属先

パナソニック ホールディングス(株)山崎 幸一さん
パナソニック ホールディングス(株)
山崎 幸一さん

このたび、新エネ大賞の経済産業大臣賞をいただき、大変光栄です。私は入社以来、工場の生産性改善、省エネ、リサイクル技術開発等に携わり、ここ数年は、グループ横断で自社工場への太陽光発電設置を支援する活動を進めてきました。今回は、現場・現物で対応したからこそ、課題の真相を把握し、仲間と一緒に解決することができました。脱炭素という社会変革が起きている今、送配電事業や電力機器の分野には新たな発見や事業機会があると思います。引き続き、現場・現物で活動推進していきたいと思います。

パナソニック エナジー(株) 佐藤 実さん
パナソニック エナジー(株)
佐藤 実さん

我々の仕事でこのような大賞を頂きましたことは望外の喜びです。大規模な太陽光発電を導入する場合、従来の電力系統保護手法は二色の浜工場の特高変電所がコンパクトにできているために困難でした。そこで今回の手法にチャレンジすることにしました。幸いにも必要な機能を持った継電器が入手できたこと、知見を持った方と繋がり一緒に取り組めたこと、電力会社の協力が得られたことが重なり実現することができました。この手法が他拠点でも利用され、太陽光発電が増えることにより脱炭素社会実現の一助になればと思います。

パナソニック エナジー(株) 井上 昭さん
パナソニック エナジー(株)
井上 昭さん

この度は大変名誉な賞を賜り、光栄に存じます。私は二色の浜工場の電気主任技術者として、系統事故時に太陽光発電設備から系統側に逆流することのないよう、対応策について試行錯誤を重ねて参りましたが、皆様のご協力のおかげで、無事、発電開始、また新エネ大賞受賞という結果となり、大変感謝いたしております。
当事業所の取り組みが、他の特高需要家様の参考事例となり、全国への太陽光発電普及の一助となったなら幸いです。