社外でプロジェクトをまとめる貴重な経験、マネジメント力に自信を持てたNPO支援
従業員プロボノ参加者 山本政也さん

山本さんがプロボノ活動に興味を持ったのは、社会人経験20年を超え、これからのキャリア形成を考えていた時期。2つのプロボノ活動に参加したことは、自身の強みを振り返るきっかけとなり、物事に取り組む際の姿勢に変化があったという。プロボノ活動による自身の変化について聞いた。
キャリア形成におけるプロボノ活動の魅力
パナソニックで働き続けるうえで、社外で何か経験を積んで、自分の幅を広げる必要があるのではないか?と、今後のキャリアを考えるようになりました。ちょうどその時、プロボノ活動の存在を知り、新たな知見を得られるかもしれないと思い、参加を決めました。これまで積んできた経験を活かして、何か社会に貢献できたらいいなという思いもありました。
普段、従業員の皆さんが自らデジタルを使った業務効率化を行えるような環境整備や人材育成などの業務を担当しています。部署の中でプロボノ活動へ参加したのは、私が初めてでした。初めてのプロボノということで具体的なイメージがあまり湧かなかったため、とにかく自分のアンテナにひっかかるテーマを選びプロジェクトを決めました。

山本 政也さん
最初のプロジェクトは、2022年の「認定NPO法人自然再生センター」。島根県と鳥取県にまたがる中海と、宍道湖の再生事業に取り組んでいる団体です。私は愛媛県出身で海が身近にある環境で育ち、趣味で釣りをしていたことから、活動に繋がりを感じました。海の保護・再生に貢献できればと思い応募しました。2023年には、当時、家族で猫を飼いたいという話が出ていたことをきっかけに、保護猫譲渡の活動に取り組む「NPO法人CATS WELCARE」のプロボノ活動にも参加しました。

自然再生センタープロボノチームでの懇親会
譲渡数の増加だけでなく、運営しやすさも考えたロードマップを提案
どちらの団体も熱い思いに感銘を受けましたが、「CATS WELCARE」の代表川越さんのお話がとても印象に残っています。川越さんは、高齢のお母様が猫を飼ったことでどんどん元気になっていったという経験をお持ちで、猫を通じて人も猫も幸せになってほしいと考えていると話してくれました。「CATS WELCARE」では、譲渡数を増やすこと、特に高齢者への譲渡を増やす提案をすることが、私たちのミッションでした。それに加えて、団体の皆さんにとって大切なのは、運営スタッフやサポートする人たちも幸せになることでした。そこで、よりスムーズに運営できるように、預かりボランティアの方のためのマニュアル作成を提案するなど、団体の思いを汲み取りながら事業計画のロードマップを提案しました。現在、保護猫譲渡のための新しい拠点づくりを進めていると聞き、そのロードマップが少しでも役に立てたのでは、と嬉しく思っています。

CATS WELCAREのみなさんとの記念写真
高齢者の方が里親になると、病気やケガ等で最後まで猫を飼えなくなってしまうリスクがあります。そのため、猫を飼うことをためらう方がいるのですが、団体では何かあったときに猫を引き取るサポート制度を用意しています。このサポート制度について利用者の方へインタビューを行い、団体にも利用者にも、そして猫にも優しい提案を行いました。
余談ですが、実は先日「CATS WELCARE」から多頭崩壊した猫たちをレスキューするため手伝ってほしいと連絡があり、初めて預かりボランティアを経験しました。プロボノ活動で「CATS WELCARE」のことを深く知ったことで、ためらうことなく預かりボランティアをできたと思います。団体さんの、保護猫活動に対する熱い思いに改めて触れられる出来事でした。
多様な職種・背景の人と協働することで気づけた、マネジメント力という強み
「CATS WELCARE」のプロボノ活動では、プロジェクトマネージャーを担当し、全体の進行管理を中心に担いました。特に心がけたことは、この活動が参加者にとって有意義なプロジェクトとなるための雰囲気づくりです。皆さんが業務時間外に取り組んでいるので、集まる時間はきっちり1時間と決め、集中することが一番大事だと思いました。そのための事前準備には時間をかけました。主に休日の朝、静かな時間に一人で作業することが多かったです。ミーティングでは、最初にプライベートの会話をとり入れるなど、打ち解けた空気を作ることで話しやすくすることも意識しました。ミーティング中に、メンバーの飼っている猫がパッと顔を出すこともあり、和んだ空気を作る一助になってくれました(笑)。

CATS WELCAREでのプロボノの様子
これまで社内業務でもプロジェクトマネージャーを担当したことはありましたが、私自身、特段うまく回しているといった感覚はありませんでした。しかし今回、異なる背景や価値観の方とチームを組み滞りなく日程通り進められたことで、思っていた以上に自分はプロジェクトマネジメントに向いているのでは?と、気づけたように思います。また、「自然再生センター」の活動では、データを整理し可視化することで、次のアクションを正確に決定していくことができ、改めて自分の得意な分野や強みを知ることができました。
きっかけもタイミングもさまざま。心にひっかかった時がはじまり。
私自身は、社会課題を解決したいという思いが強かったわけではなく、最初は自分の幅を広げたいという思いの方が強かったです。プロボノへの参加理由は人それぞれあってよいと思います。振り返ってみて、自分が一番嬉しかったと感じた場面は、関わる人の熱い思いを聞けた瞬間でした。その思いに刺激を受けて自分も何かを始めてみたいと思えるようになりました。自分にとって常に進化し続けることが重要で、プロボノ活動はまさに変化をもたらしてくれたように思います。
団体の代表の方々とお話しすることで、世の中への理解が深まり、社会課題を知ることができました。それによって一つ上へあがった視点を仕事にも活かしていけるのではないかと感じます。
また、今まで以上にフットワークが軽くなり、仕事をするなかでも新しいことに躊躇せず取り組めるようになりました。
今は資格勉強に力を入れていて、生成AIに関する勉強や簿記の勉強に励んでいます。特に簿記の勉強は今後またプロボノ活動に参加することになれば、どの支援先でも活かせるかもしれません。これからも、何か自分のアンテナにひっかかるプロジェクトと出会えたら、ぜひ参加してみたいと思います。
プロボノ活動は自分のスキルを用いて支援先の役に立つだけでなく、日々の業務や働き方に風を吹かせ、新しいリズムを生み出すものでは?と感じる、山本さんのお話。自分自身のステップアップと社会課題への参加は、一見異なるテーマのようだが、決して切り離されるものではなく相互作用があるものだということを教えてくれた。
山本さんが参加した社内のプロボノプロジェクト

住民・企業・行政・専門家等と連携し、中海・宍道湖流域の自然環境の再生と、かつての湖と人々の親しい関係を再構築するために「オゴノリング大作戦」事業、中海・宍道湖の食を広めよう会、天神川の水草刈り&生き物観察会、次世代につなぐ環境教育などを行っている。 地域市民からの共感度や、どのような活動を信頼・期待されているのかなど、従業員5人によるプロボノチームが調査分析に取り組んだ。