育休中に参加することで社会とつながれた。
プロボノ経験は、キャリアデザインの選択肢を増やす。

従業員プロボノ参加者 黒川彩乃さん

黒川さんがプロボノ活動に興味を持ったのは、育児休暇を取得中に自分のキャリアアップを考えたことがきっかけだった。育休中や離職中の子育て女性が、仕事復帰に向けたウォーミングアップと同時に社会貢献活動を行える場である「ママボノ」。参加を通して得た、仕事への活かし方を聞いた。

育児休暇中も社会とつながり、自分をアップデートする「ママボノ」


パナソニックコネクト株式会社のキャリアデザイン部の所属で、全社員向けの研修やキャリア施策の企画運営をしています。プロボノ活動を意識したのは、第一子を出産するときでした。産休・育児休暇中における社会との断絶や不安感などに向き合うなか、何かで自分をアップデートしたいという気持ちが強くなった時に、認定NPO法人サービスグラントが提供している「ママボノ」の取り組みを知りました。ただ、第一子の時はタイミングが合わず、第二子の時に初めてエントリーしました。第二子なので出産と育児の過程が自分自身で具体的にイメージできていたこともあり、社会貢献の活動を通じて、自分の市場価値を見直してみたいと思っていました。ちょうどその頃、パナソニックグループ内で副業を認める働き方がスタートしたこともあり、会社の外に出た時、一体どんなことで社会の役に立てるのだろう?と考えていました。パナソニックの看板がなくなったとき、自分には何が残るのかを確かめておきたくなったのも「ママボノ」に参加した理由です。

写真

黒川 彩乃さん

子育て目線と企業目線、2つのアプローチで幼稚園の寄付活動を改善


参加した「ママボノ」の支援先は、東京の青梅市にある「NPO法人かぷかぷ山のようちえん」でした。この園は、『親子が自然とともに、暮らし・遊ぶコミュニティを育む』活動を行っており、支援目的は、主に寄付金集めに関するマーケティング基礎調査でした。
「ママボノ」は全国からオンラインで協働するスタイルのため、支援メンバーが住んでいる地域も東京が2名、埼玉、岐阜、鹿児島から各1名の構成ではありましたが、実際に青梅市の現地に、2回足を運びました。
支援先は同世代のお母さんたちが立ち上げている園でもあり、自分たちも子育て中のため、共感できることが多く、資料作りやインタビューリサーチもスムーズに進めることができました。例えば、私が共感したのは「子」育てを、孤立の「孤」育てにしない、という理念を持っているところです。一方で、企業目線で見ると、この園への寄付が、どう企業のメリットや社会貢献になるのか?どんな事業と親和性が高いのか?といった視点が明確ではありませんでした。
支援先団体が一番大切にしている価値観と、環境保全や自然教育という点を考えると、地元の企業と長く関係づくりを続けていけることが重要だと整理していきました。
実際に今回の支援を通じて寄付に繋がった企業とは、青梅の自然を描いた絵の展覧会の開催を協働されています。

写真

絵画展の様子

写真

プロボノで得られた気づきや学びを伺う渋谷のラジオ「渋谷のプロボノー大人の社会科見学―」に、ママボノのメンバーと出演

リサーチ結果と、支援先の想いを整えて「資料」にするというスキルがある


最終的には、マーケットリサーチの枠を超え、調査結果をふまえた資料、つまり企業に寄付を依頼する提案資料づくりまでお手伝いできたことがよかったと思っています。資料づくりでは、私たちが描いているターゲット層と園のみなさんが描いているもののすり合わせが大事だとわかりました。寄付手段も様々思いつきましたが、そのすべてを提案するのではなく、園が本来ありたい姿に寄せて、どのように調査結果のエッセンスを提案資料に詰め込めるかが大事だと思っています。そのすり合わせがあるからこそ、園にとって違和感のない使いやすい資料になるのだと思います。そこまで関われたことで、NPOの皆さんが寄付支援をいただくフェーズで大変な苦労をされていることを知ることができましたし、自分の市場価値を知るという点においては、意外と資料作成のスキルが役に立つのだなと認識しました。様々な意見や考え方を、まずは「資料」として成立させて使える形に整えるということでも、喜んでもらえることや、誰でも出来ることではないスキルのひとつなのだと気づくことができました。

ネクストキャリアを考えたとき、プロボノ経験が自分の選択肢を増やしてくれる


今、キャリアデザイン部に所属していますが、プロボノの経験は、これからネクストキャリアを考えていく世代にとってよい機会になると思っています。新しい活躍の場や生きがいという点で、これまで社会人として培ったスキルを他でも活かせることを知るために、良い機会だと思います。今、パナソニックコネクトでは、キャリアオーナーシップを導入していて社員の主体性を大切にしている反面、言い換えれば社員が自ら手を挙げなければ何も起こらない制度でもあるので、定年後も見据え、キャリアの選択肢を増やしていきたいと思っています。自分のスキルを見つめ直し、自分のキャリアにどんな選択肢があるのかを知るチャンスとしても、プロボノに参加してほしいと願っています。パナソニックは「企業は社会の公器」という松下幸之助の経営理念を大切にし、企業にとって社員は社会からの預かり物として考えられています。社会にお返しするときには、社外でも活躍できる人として送り出したいと思っています。
私は女性の支援活動に関心があるので、機会があれば、またプロボノに参加したいと思っています。そして、20代の人には、いずれ社会で役立つスキルを身につけるために、目の前の会社の仕事にしっかり取り組みましょう、と伝えたいです。

「ママボノ」終了後も、個人的に寄付会員として「かぷかぷ山のようちえん」との関係を続けているという黒川さん。自分自身のプロボノ経験を、キャリア支援という会社の仕事に結びつけて取り組んでいる最中だ。これからの時代、プロボノ経験が社会人としての「スタンダード」になる日もそう遠くないのかもしれない。