キャリアという視点で注目したプロボノ活動が社会課題の背景にある構造へ思いを巡らせる体験に。

従業員プロボノ参加者 藤井典子さん

パナソニックグループのエレクトリックワークス社でDXを推進している藤井さん。パナソニックグループの情報システム職能として30年近くのキャリア経験を活かし、選んだプロジェクトとは?

セカンドキャリアを広げる、プロボノへの参加


プロボノ活動のことは、これまでほとんど知らず、2023年に初めて参加しました。
ちょうどセカンドキャリアをどうしていくか考えていた頃で、キャリアを積む中で社会貢献活動にも関わってみたいと思っていました。その時、社内でプロボノ活動の案内を見つけ、説明会に参加することにしました。
体験された方々からは「大変勉強になった」というお話やポジティブな感想が多く、私も参加してみようと考えました。自分のスキルが活かせそうなプロジェクトであり、個人的にも支援をしたいと感じた団体を選ぼうと「認定NPO法人オリーブの家」の事業評価プロジェクトに参加しました。

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藤井 典子さん

現状と課題を可視化し、社会問題としての政策提言資料へ


「オリーブの家」は、「誰一人虐げられることのない世界のために」をビジョンに掲げ、DVや虐待などに苦しむ女性と親子の保護と自立支援をしている岡山県の認定NPO法人です。女性の自立支援に私も何か役立てたらと思い、興味を持ちました。

最初は「事業評価とは、何をすればいいんだろう?」と感じていました。というのも、オリーブの家は認定を受けたNPOで既に一定の評価がされており、メディア取材もたくさん受けられている団体だからです。
NPOやDV・女性の自立支援について知見のない私たちが、どのように事業評価ができるのだろうかとチームの中で悶々としていました。
ヒアリングを重ねていくうちに、既にさまざまな活動をされていても、社会的認知がまだ低いということが分かりました。理由の一つとして、DV問題自体が、当事者間の問題とされがちな社会風潮があるということを認識しました。また、被害にあった方を保護する際に、公的機関や行政では一定のルールがあり、その範囲に入らない人たちは助けられないという現状があることも知りました。
「オリーブの家」は民間シェルターとして、そのような方たちを保護し、自立できるまで支援するとともに社会啓発活動をしていくことを課題としていました。

そこで、厚労省などの行政資料や大学などの研究機関の資料、海外のDV対応の先進事例や対策などを集めての精査や、実際に支援を受けている方や連携している団体にヒアリングすることで、現状と課題を可視化することに取り組みました。最終的な成果物として、「日本におけるDV問題の現状と課題」「団体の活動内容とその評価」「DV問題解決に向けた社会構造のあるべき姿」を提案することができ、団体の方々からは「今後のアドボカシー活動※1や提言に使っていきたい」と、大変喜んでいただけました。

※1アドボカシー活動とは、人権問題や社会課題について声をあげ、政策提言する活動

社会との接点が新たに生まれ、その仕組みについて考えるように


半年間にわたり活動した「オリーブの家」事業評価プロジェクトを通して、普段は身近でなかった問題について自分自身も考えるようになりました。
被害者に親身に寄り添い自立できるまで支援し続けるオリーブの家のみなさんの姿に感銘を受けました。誰かの自立を最後まで支えて見届けることは、自分に近しい人だったとしても大変なことなのに、誰一人取り残さないとの思いを持ち続け、苦しまれているさまざまな方々を助け続けていて、本当にすごいと思いました。今回の経験により、社会の仕組みについてあらためて目を向けるきっかけになったと思います。そこから、社会課題に関わっていきたいと思うようになり、その後、さらに社外の3つのプロボノ活動へ参加しました。

社内業務では普通にできていたことも、社会に役立つスキルだと実感できる


「オリーブの家」では事業評価、「大阪難病連」では支援企業へ活動内容を伝える資料作成、「大阪ええまちプロジェクト」では、大阪ええまち調査隊として、「太子町」の高齢化の実態とこれまでの活動に関するデータ分析と、「みんなの居場所ラッキークローバー」の課題整理と対策の提案をおこないました。

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藤井さんが参加した社外プロボノ 「大阪ええまちプロジェクト」「みんなの居場所ラッキークローバー」での様子

各プロジェクトを通して感じたことは、ヒアリングした内容を整理したり、情報・データを集めて分析したり、課題を構造的にとらえて整理して図示するということは、社会で役立つ自分のスキルの一つなのだということです。普段の業務の中で普通にやっていることが、社外で社会の役に立つことを実体験として感じることができました。そのスキルを通して見えてなかった問題が見えるようになり、社会課題が生まれる社会構造や当事者の思いを、少しでも知ることができたように思います。
これからも、広く世の中にある課題に目を向けて、それぞれに対して自分がどのような関わり方ができるかを模索していきたいと思います。

初めはプロボノ活動の存在を知らなかったという藤井さんだが、現在はさまざまな社会課題へ飛び込みたいと、関心のある領域がさらに広がった様子。
藤井さんのように、社会へどのように関わるか前向きに考えることは、自分自身の可能性だけでなく、きっと社会が変わる可能性をも広げる一歩になるはずだ。

藤井さんが参加した社内のプロボノプロジェクト



DVや虐待の被害者を支援してきた「オリーブの家」連携団体とノウハウや課題を共有し、政策提言していくための資料をパナソニックグループ従業員6人によるプロボノが作成した。