戦後のインフラ整備を支えた電池

空気湿電池

登録年:2008年
登録番号:00012
品番:300型
製作者:松下電器産業株式会社
製作年:1955年

登録基準:
2.-【イ】国民生活の発展、新たな生活様式の創出に顕著な役割を果たしたもの

空気湿電池仕組み図

この製品は、化学反応に空気中の酸素を利用した湿電池で、特殊炭素を陽極、亜鉛を陰極にして、電解液には塩化アンモンを用いていました。当時の一次電池の中では、

  1. 容量が大きく経済的である
  2. 電圧が高く常に一定である
  3. 自己放電が少なく、長期の使用に耐えうる
  4. 耐寒・耐湿・耐熱性を有する
  5. 取り扱いが容易で保守が不要である

という、非常に優れた特性を持っていました。また、資源として豊富な木炭を主原料とし、他の電池のように銅、鉛、マンガン等を使用していないため、国内における急速な需要拡大にも対応できました。

これまでの電池にはない高い品質特性が評価されて、電信電話公社(現:NTT)の磁石式電話機等の据置用電源や、日本国有鉄道(現:JR)の鉄道踏切警報機用の電源に採用され、その後、産業用電池として、ラジオ、電気時計、研究実験用、精密測定器、自動制御装置、船舶航路、橋梁標識灯、無人測候所など広く活用されていきました。

当時の空気湿電池の国内製造メーカーは当社を含めた3社のみで、それぞれが自社製品の性能や品質を誇り、いたずらに競い合っている状況でした。その様子を見て「これでは真の産業の発展はあり得ない」と考えた当社の電極工場長は、当時としては型破りであった「お互いが所有する特許・実用新案を公開し、必要によっては対処法も交換しあって業界の発展のために手を繋ごう」と提案。
他の2社もそれを快諾しました。以降3社は歩みを一つにして「共存共栄」で多くの研究成果を実らせ、空気湿電池の普及に貢献しました。

その後も、増大する需要に対応するために工場設備を拡大する一方で、製造工程に統計的品質管理を取り入れて品質の均一化を図り、さらには、その特性値をより高めるために基礎研究にも力を入れて品質改善を推進。その結果、1955年に毎日工業技術賞を受賞しました。

この空気湿電池は、戦後復興を終えてから高度経済成長を遂げるまでの日本の産業を支えた電池の、技術発展における重要な側面を示す製品と言えます。

毎日工業技術賞を授与される松下幸之助(1955年)

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