家庭電化ブームの火付け役

噴流式電気洗濯機

登録年:2014年
登録番号:00149
品番:SW-53
製作者:三洋電機株式会社
製作年:1953年

登録基準:
2.-【イ】国民生活の発展、新たな生活様式の創出に顕著な役割を果たしたもの

攪拌式洗濯機 心棒が回転して噴流を起こす(心棒に洗濯物が絡んで布が傷みやすい課題があった)  噴射式洗濯機 日本初:側面についているパルセーターが噴流を起こす(複雑な水流を出すため、4隅の曲げ角を変えている)

戦後民主主義のもとで女性解放・男女同権などの感覚が国民に浸透し始め、より豊かな生活を求める声が高まりつつあった1950年代はじめ、三洋電機の社長・井植歳男は電気洗濯機に着目しました。
きっかけは代理店主の「社長、私の家では電気洗濯機を使うてますが、女房は『洗濯の苦労を知らぬ』と言うとります」という言葉。それを聞いた井植は「洗濯機をつくって世の奥さま方に喜んでもらおう」と決意しました。

丸型の攪拌式電気洗濯機は戦前から輸入されており、国内でも製造が始まっていましたが、一台5万~6万円と高価な上、大型で場所を取るため、一般家庭には高値の花で、1952年の国内生産台数はわずか1万5000台にとどまっていました。

タライの中で洗濯板に衣類をゴシゴシこすりつけて洗う。これが当時の洗濯でしたが、家族全員分となると、主婦にとってはたいへんな重労働でした。しかし、当時の男性はそんなことにはお構いなく、「洗濯なんぞに高価な機械を使うとはぜいたくだ」という観念で固まっていました。そうした中、井植は「使いやすい洗濯機を開発し、大量生産でコストダウンを図れば、必ず主婦に歓迎されるはず。ぜいたくは敵ではない」と確信したのです。

早速、国産品から外国製品まであらゆる洗濯機を取り寄せて試作・研究を開始。本社でも井植自ら先頭に立ち連日実験が続けられ、三洋電機の社長室は水浸しの惨状でした。約1年の歳月と数千万円の開発費を投入し、いよいよ量産ラインに乗せようという直前のことです。井植は「ようやく開発を終えた丸型の攪拌式より、英国フーバー社が採用している噴流式の方が日本向きではないか」と直感します。

「噴流式は角型で場所を取らず、密封式だからどこにでも置け、また布地の痛みも少なく汚れ落ちもよい」。井植は素早く決断し、工場に生産開始の一時保留を命じるとともに、噴流式の研究を命じました。

噴流を起こすパルセーター、消費電力の少ないモータ、水槽の深絞りなどを独自開発し、1953年8月に国産初の角型噴流式洗濯機を発売。従来の半値に近い2万8,500円の小売価格を実現したこの製品は、値段だけでなく、日本の狭い住宅に適した小型軽量かつ、使い勝手の良さも主婦に受けて、市場で爆発的な人気を呼びました。

これが火付け役となり、洗濯機のみならず家電製品全体が広く家庭に普及する、いわゆる電化ブームが始まりました。後に評論家の大宅壮一氏は、この洗濯機が発売された1953年を「電化元年」と名付けています。

洗濯機の普及は主婦の家事労働を大幅に軽減し、女性の社会進出を後押ししました。

洗濯機の説明を行う井植歳男

評論家・大宅壮一氏の筆書

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