

——今回紹介(しょうかい)していただく冷蔵庫はどのような製品(せいひん)ですか?
家族みんなが毎日使う冷蔵庫にとって、UDは基本(きほん)中の基本です。毎日使うものだからこそ、小さなストレスも取りのぞかないといけません。
中の食品は取り出しやすいか、奥(おく)にあるものもさがしやすいか、背(せ)の高い人も低い人も同じように使えるか、よごれた時に簡単(かんたん)にきれいにできるか、などいろんな視点(してん)で製品を考えるようにしています。
パナソニックではお客様が本当にこまっておられることは何かを、地道にさがし出し、それを解決(かいけつ)するためにいろいろな部門の人が協力し、UDの心配りのある製品をつくり上げています。

——製品にはUDが、具体的にどのように活かされていますか?
ファミリー向けの大型冷蔵庫すべてに搭載(とうさい)されているUDをご紹介します。

UDの心配りがされた、大きな特ちょうとなるものは「トップユニット」と「ワンダフルオープン」です。
トップユニットというのは今まで冷蔵庫の下にあったコンプレッサーという部品を上に配置することで、下にある引き出しを大きくしてたくさん物が入るようにするものです。

その引き出しを全部引き出せるようにして、奥まで見やすくしたのがワンダフルオープンです。
奥の奥まで見えるから、ラクな姿勢(しせい)で食品が取り出せます。
ベアリング式レールを使っているので重さが分散され、引き出しをかた手でラクに開閉(かいへい)でき、何年も開閉をくり返しても重たくなりません。
またレールの位置を下に持ってきているので底面にムダなスペースがなく、たっぷり食品が入るので買い物の回数をへらすこともできます。




Jコンセプトシリーズの冷蔵庫は、特に高齢(こうれい)者のお客様に使いやすいよう配慮(はいりょ)しています。 高齢者のかたがよく使う野菜室を真ん中にして、腰(こし)をかがめずに野菜が出し入れできるようになっています。


冷蔵室の収納もドアポケットまで使いやすさにこだわっています。
右側扉(とびら)の一番下のポケットは、大きなボトルを収納しても後ろのものが
きちんと取り出せるよう、底面に角度をつけて工夫しています。(スタジアムジャンボポケット)

機種:NR-F605WPX

また、昔は後ろにあった照明を天井(てんじょう)や前に持ってくることで、
中にある食品が見やすく、探(さが)しやすくなっています。



現在(げんざい)はドアにガラスを使った冷蔵庫が主流ですが、このガラスドアについてもよけいな溝(みぞ)をなくして、ゴミがたまらないようにしました。
さっとふけてお手入れしやすいように、ドアの部品構成(こうせい)をいちから考えました。


解凍(かいとう)の手間いらずの約−3℃「微凍結(びとうけつ)パーシャル」や、適度(てきど)な湿度(しつど)をたもつ「シャキシャキ野菜室」などの機能(きのう)により、食品をまとめ買いしても鮮度(せんど)が長持ちします。
さらに、「急速冷凍」で料理した時のおいしさがアップしたり、「急速冷却」で料理の時間が短縮できたりします。
これらの機能も、いそがしいご家庭や料理の負たんをへらしたい方に対するUDにつながっていると思います。

微凍結パーシャルは冷凍しなくても鮮度が長持ちするので、解凍の手間なくサッと切りわけて、食卓へ。

——製品開発にあたりUDを配慮するために欠かせないことは、どのような点ですか?
ワンダフルオープンもトップユニットも、デザイナーだけの力では実現(じつげん)できません。
例えばワンダフルオープンは、食品を入れる引き出しを最大限(さいだいげん)に大きくするため今まで上にあったレールを下に持ってきました。

引き出しは大きくできましたが、これまでと同じ構成だと、引き出した時にドアがぐらぐらしてしまい、お客様がとても使いにくくなることがわかりました。そこで技術(ぎじゅつ)者が引き出しとドアのはめ方を工夫して、安定して引き出せる新しい構造(こうぞう)を考えてくれました。これが先ほど説明したワンダフルオープンです。
また、トップユニットは全く今までとちがう構造になるので、工場の人たちに協力してもらい、冷蔵庫のつくり方をいちから見直すことで実現できました。
このようにデザインをこうやったらもっと使いやすくなるというアイデアを実際(じっさい)の製品に活かすためには、たくさんのほかの部門の人たちに協力してもらうことが必要です。
どうしてこれをしなくてはいけないのか、こうすることでお客様がどんなに便利になるのかを理解(りかい)してもらうために製品のモデルなどを使って説明することも、デザイナーにとってとても大切な仕事です。

——UDを配慮するためにこだわっていることは、どのような点ですか?
お客様に実際に使ってもらって、使いやすさを検証(けんしょう)することを大切にしています。
新しい製品をつくる時には、製品のモデルをつくって実際にお客様にさわってもらって不具合がないか細かく検証します。高齢者向けの製品をつくる時は、高齢者のみなさんに集まってもらって、野菜を取り出してもらったり、飲み物のボトルを出し入れしてもらったりして、本当に使いやすいかどうか何度も確認しました。時には手づくりで箱や引き出しをつくって、それを使って検証することもあります。


そのほか心がけていることは、冷蔵庫が使われる環境の変化を大切にするということです。
冷蔵庫に入れられる食品、例えばドレッシングのボトルなどは変化しています。さまざまな形や大きさのものがきちんと収納できるか、またドアを開けた時にいきおいでボトルがたおれたりしないか、などにもつねづね気を配る必要があります。
使われる環境に関しては、専業主婦(せんぎょうしゅふ)が多かった時代から共働きの家庭が多い時代へと変わり、まとめ買いや宅配(たくはい)などがふえるなど、買い物の仕方や食事のスタイルも変化しています。結果、冷蔵庫の使われ方も大きく変わってきています。
そういった、時とともに変化していく食品や生活スタイルにきちんと対応(たいおう)し、より快適(かいてき)に冷蔵庫を使っていただけるよう、日々研究しています。

——UDに関して大切に思っていることや、子どもたちへ向けてのメッセージをお願いします。
UDは特別なことではなく、お客様にとって使いやすい製品はどんなものだろう?と考えることであると思います。
とくに冷蔵庫や洗濯機(せんたくき)のように毎日使うものは、ボタンのおしやすさや、ドアの開けやすさといった身体的な負荷をへらすことだけでなく、まよわずにスムーズに使えること、使う時にストレスを感じないことといった気持ちの面も配慮することが大切だと思います。
またみなさんに伝えたいのは、失敗をたくさんしてほしいということです。新しい挑戦(ちょうせん)をする時に、最初からうまくいくことなんてほとんどありません。失敗をするから、次にどうしようか考えることができるし、新しい工夫を思いつくことができます。失敗をおそれずに、興味(きょうみ)のあることにどんどん挑戦してほしいと思います。

