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2013年3月1日、東京臨海副都心にあるパナソニックセンター東京において、「Panasonic NPOサポート ファンド 環境分野」の2012年継続助成団体の成果報告会が開催されました。会場には助成事業2年目を終えた2団体と、3年目を終えた2団体、そして選考委員、事務局など総勢18名が参加しました。
第一部は、各団体からの成果報告と選考委員からの講評、そして茶話会形式のグループディスカッションにより各団体の事業成果と課題を共有しました。また、第二部ではパナソニックNPOサポート マーケティングプログラムの紹介、第三部は自らの活動を伝え広めるコツについて経験を踏まえた講演や事例を紹介いただき、次のステップにつながる貴重な気づきを得る時間となりました。
開催にあたって
報告して終わるのではなく、ブラッシュアップでさらなる活動の発展を
私たちは、社会課題の解決の促進に向けて市民活動が持続的に発展してくためには、NPOの組織基盤強化が必要であると、2001年に本ファンドを立ち上げました。今年で13年目を迎えます。
本日ここにお集まりいただいた皆さんは継続して2年、3年と組織基盤の強化に取り組まれたわけですが、その間の気づき、学びを今日の成果報告会で共有し、皆さんの今後の活動につなげていただければ嬉しく思います。
また、皆さんの取り組みはこの報告会で終わるわけではありません。今後も、絶え間なく組織基盤強化に取り組んでいただき、活動を広げていただければと思います。
パナソニック(株)
CSR・社会文化グループ
山口 大輔
第一部 成果報告会
第一部の報告会では、各団体がパワーポイントを使って組織基盤強化の取り組みと成果を発表し、それに対する質疑応答を行いました。助成2年目、3年目の経験を積み重ねた発表はいずれも聞き応えのある内容で、選考委員からの質問とあわせて今後の活動へのヒント満載の充実した時間となりました。また、発表後には互いの報告に対してポストイットに「イイネメッセージ」や「アドバイス」を書いてホワイトボードに貼り、今後の糧となるよう各団体のお土産としました。
<報告団体と「組織基盤強化事業」>
- アースウォッチ・ジャパン 「ボランティア主導型運営システムの構築」
- 荒川クリーンエイド・フォーラム
「アウトドア環境保全活動における企業の人材育成等に必要な付加価値の探求」 - フェアトレード・ラベル・ジャパン
「フェアトレード・ラベル運動普及に向けた参加組織との連携体制構築事業」 - 自然体験共学センター 「地域の元気創生プロジェクト」
キャパシティビルディングのコツ、ハウツーを 社会に波及させるために
各団体の報告に続いて、茶話会形式のディスカッションが行われました。今回は、継続助成を受けた団体同士ということもあり、かなり具体的な議論もありました。挙げられたテーマには、
- 成果物の活動紹介のブックレットに関して、対象と目的をどう考えるか、デザインや見せ方の工夫はどうすべきか
- 企業向けの人材育成プログラムに関して、社会貢献ではなくプログラムの対価として報酬を得られるようになった秘訣や、企業人事部とのパイプづくりについて
- ボランティアマネジメントについて、組織内のボランティアは誰が取りまとめているか、思いとスキルの高いボランティアの見つけ方、外部ボランティアを使うための標準化やマニュアル化について
などといったものがあり、各自の経験や事例をもとに、活発な意見交換が行われました。
選考委員長総評
報告会を機に、助成団体間でのコラボレーションにも期待
広瀬敏通氏
(NPO法人日本エコツーリズムセンター理事長)
私自身、30年にわたってNPOに携わる中で、その活動の何が社会化でき、何が自分たちの活動に還元できるかを常に考えてきました。NPOの最終的なミッションは、いかにして世の中に持続可能な社会づくりに貢献できる人を増やしていくかということで、自らの組織基盤強化はそれを成し遂げるためのステップに過ぎません。この報告会を機に、助成団体間でのコラボレーションやコンソーシアムもぜひ形成してほしいと思います。
また、近年は、NPO、市民、企業や行政の協働が盛んに言われますが、ひとくちに行政と言っても多様なチャンネルがあり、そのひとつひとつとの協働に新たなチャンスの可能性があります。
本日の皆さんの話を聞いて、こうしたチャンネルを積極的に広げている姿が見られ心強く思いました。
最後に、私がいつも考えている事業を生み出すために必要な6つのことをお話ししておきます。活動の参考になれば幸いです。
<事業を生み出す6つのコツ>
- コストをかけない
借金から始まる事業は成功しない。自分の能力を200%、精一杯引っ張り出せば、100円の元手で1万円の仕事もできるはず。自分(たち)という資源を最大限生かしてローコスト経営に挑戦しよう。 - 学び会う場と人材を育てるしくみ
自分たちでNPOスタッフを養成するには、トップダウンのしくみを廃して組織内に学び会う環境をつくるとともに、組織内・同業者内人材育成のシステムを確立しよう。 - 新しい市場をつくろう
「ここにはマーケットがないので苦しい」という声を耳にするが、30年前にはNPOという市場さえなかった。まず、市場は自分たちで作れるし、広げることができる。 - 企画力より人間力
エンターテイメント性の高い組織が人間力も高いとは限らない。NPOの活動では、表現力や魅力的なキャラクターが大事だが、さらに自分の中ににじみ出る人間性を相手に届けよう。 - 組織経済を持とう
NPOは新しい価値創造集団。既存の方程式や価値観とは異なることに挑戦していこう。財政力に囚われることなく、自分たちらしいベクトルで組織を動かすことにも挑戦しよう。 - 共通項を持とう
自分たちだけの内輪の言葉でしか話せない団体は発展しない。自分たちが対象とするさまざまな人達とどんな共通語を持っているのか、常に考えてコミュニケーションを図ろう。
第二部 NPOサポート マーケティング プログラムの紹介
第二部は、パナソニックがNPOサポートセンターとともに行っている「Panasonic NPOサポート マーケティング プログラム」の紹介を行いました。このプログラムでは外部講師や社会人のサポートを得ながらマーケティングの力を組織に根付かせ、組織が抱える様々な課題を解決できるようになることを目指し、マーケティングの研修と個別課題解決の実践に取り組みます。
実際にプログラムに参加した「フェアトレード・ラベル・ジャパン」の事例発表では、市場や競合を分析し、ターゲット設定やニーズを把握してPDCA(※)を回しながら施策に取り組んだ結果、市場の拡大や組織の成長にどのような効果があったのか、データを交えて紹介されました。
※PDCA Plan、Do、Check、Actの4段階を繰り返すことで、業務を継続的に改善していく手法
第三部 講演
第三部では、環境分野の選考委員である「コミュニティ・ユース・バンクmomo」代表理事の木村真樹氏から、今年度新たに設立する財団のファンドレイジングについてお話をいただきました。ここでは、とくに講演のスライドをもとに、ファンドレイジングのコツをまとめてご紹介します。
あいちコミュニティ財団から学ぶ “支援者のコミュニティを如何に醸成していくか”
私はmomoというNPOバンクの代表も務めています。これは、市民からの出資を元に事業者に融資を行う地域の仕組みで、設立から8年間で地域の事業者40件に9千万円近くのお金を融資してきました。
そして、今回、設立する「あいちコミュニティ財団」は、出資ではなく寄付で資金を調達します。地域課題の解決のための資金を地域の中で事業者とともに集めていく仕組みなんです。設立資金として必要な600万円も市民からの寄付で集めました。10月28日から2月22日まで、SNSや説明会などで呼びかけてファンドレイジングを行い、結果として600名を超える発起人から総額900万円以上の寄付が集まりました。ファンドレイジングの経過は、ブログとフェイスブックを更新して毎日公開しました。
これから、いよいよ財団設立となりますが、今日はこのファンドレイジングの経緯を追うことで、設立寄付者募集のポイントをお話しできればと思います。
木村真樹氏(コミュニティ・ユース・バンクmomo代表理事)
<発起人(設立寄付者)募集前に行ったこと>
- いきなり寄付は募らずに、少しずつステップアップ
- まず、呼びかけ人を20数名集めて、NPO向け説明会を県内8カ所で開催。
- 呼びかけ人を通じて設立を応援する「賛同人」を募集。財団へのメッセージをもらうなど参加の場を設けつつ、徐々に寄付者となる発起人を固めていった。
- 地域の金融機関との連携は非常に重要
- 瀬戸信用金庫と東海労働金庫より振込手数料無料化サービスをご提供いただく。それをマスコミにも記事にしてもらって社会貢献をアピールしたうえで、財団の評議員やプロボノ受け入れといった事業面での協力も取り付けた。
- 瀬戸信用金庫と東海労働金庫より振込手数料無料化サービスをご提供いただく。それをマスコミにも記事にしてもらって社会貢献をアピールしたうえで、財団の評議員やプロボノ受け入れといった事業面での協力も取り付けた。
- 行政の存在感は大切。早い段階からしかけておこう
- 名古屋市長の減税政策で浮いたお金を寄付できる受け皿をつくろうというNPOのイベント「ぼらチャリ」の日に寄付募集を開始し、市長とのパネルトークで応援メッセージの回収を実現。
- 名古屋市長の減税政策で浮いたお金を寄付できる受け皿をつくろうというNPOのイベント「ぼらチャリ」の日に寄付募集を開始し、市長とのパネルトークで応援メッセージの回収を実現。
<募集中に行ったこと>
- チラシやメールの呼びかけは相手によって使い分けて
- 顔の見える賛同人、SNSのフォロワー、一度会ってアドレスを交換した方々には個人的な文面のメールで寄付を呼びかけ。
- 遠方の方にはダイレクトメール。近い方は直に会って話す手段も考えた。
- 迅速な返事、手書きのお礼状など、コミュニケーションの取り方も工夫をし、検討中の方は保管フォルダーを分けて、フォローのメールを必ず送った。
- リアルなコミュニケーションの場も設ける
- 説明会・食事会を19カ所で開催。地域の居酒屋や、募金箱を設置したお店を会場に使い、準備会メンバーには会場担当として活動してもらった。
- 共感を集めるには、自分が何をやりたいかではなく、どんな課題があるかを見せる。問題と解決策がひもづいた活動だということが共感を呼ぶ。
- 会場では封筒にアンケートを入れて渡す。そして、共感した方は、その場で少額でも寄付を入れて封筒を戻していただけるよう工夫した。
- ブログやSNSで応援の気持ちを見える化
- 書いていただいた応援メッセージや、準備会メンバーが財団への思いを語る動画をブログなどにアップして、応援してくれる人の気持ちを見える化した。
- 自分が説明会で話してきた志をブログにアップして、最後の寄付の後押しをした。
- メディアは自分たちの認知度アップに使う
- じかに声を届けられない人に声を届けるにはメディアも活用。掲載記事は、寄付依頼の手紙や説明会の資料に添えることで認知度のアップにもつなげた。
- じかに声を届けられない人に声を届けるにはメディアも活用。掲載記事は、寄付依頼の手紙や説明会の資料に添えることで認知度のアップにもつなげた。
<終了後に考えたこと>
- ファンドレイジングにも期限を設け、キャンペーン化しよう
- イベントは期限を切って行うことが大事。それによって、人の気持ちも盛り上がり、活動のモチベーションもあがる。
- イベントは期限を切って行うことが大事。それによって、人の気持ちも盛り上がり、活動のモチベーションもあがる。
- 参加のデザインも工夫したい
- 寄付をお願いする関係性は長続きしない。自分たちの問題を一緒に解決していくという対等な関係を築くことが大事。
- 寄付をして発起人になるだけではなく、活動への参加の仕方もいろいろと用意しておけば、発起人以外の応援者を次につなげていくことができる。
- 発起人からは、財団に対する期待や取り組んで欲しいテーマも集めて今後の活動に生かし、活動に巻き込むことを意識した。
- 寄付をお願いする関係性は長続きしない。自分たちの問題を一緒に解決していくという対等な関係を築くことが大事。
- 「ファンドレイジングは “ファン度”レイジング」
- 寄付はお金だけではなく、仲間や共感を集めること。そう思うと、本当に楽しい。
- 寄付はお金だけではなく、仲間や共感を集めること。そう思うと、本当に楽しい。
この日は、NPOサポート ファンドでの取り組みや成果の共有に始まり、木村さんの旬な取り組みから多彩なアイデアを聞くことができ、有意義な一日となりました。
最後に交流懇親会を行い、参加者からも「参考になった」「たくさんのヒントが得られた」「実際に取り組んでみます」「刺激を受けた」などの声が寄せられました。