第2部:キャパシティビルディング フォーラム

「成功を導くカギ」は組織を根底から変える覚悟、本気度

キャパシティビルディングフォーラムでは、NPOサポート ファンドのこれまでの実績にもとづき、「社会をかえていくNPOにおいて成果を出せる組織をつくるために何が必要か」、「NPO支援組織は何ができるのか」、「組織基盤強化を応援する仕組み」について、支援の受け手となる活動団体と、支援組織の実践者による取り組み発表、パネルディスカッションを行いました。

フォーラムのファシリテーターは、特定非営利活動法人パブリックリソースセンター理事・事務局長の岸本幸子さんです。

パブリックリソースセンター
理事・事務局長 岸本幸子さん

ファミリーハウス
理事・事務局長 植田洋子さん

まず、小児がんや難病治療で大都市に来る子どもと家族に宿泊施設を提供している特定非営利活動法人 ファミリーハウス理事・事務局長の植田洋子さんから、「キャパシティビルディングがどのような成果をもたらしたか」について、報告がありました。

「私たちは04年にNPOサポートファンドでキャパシティビルディングに取り組み始めて以来、数々の外部の学びの機会を活かしながら、組織の基盤強化に努めてきました。現場が強ければ組織は潰れない。しかし、現場が強いだけでは駄目です。現実論だけになってしまい、未来がみえなくなる。外の価値観を採り入れることで、現場意識も向上させていこうという狙いがありました。
その結果、ボランティアの登録数は当初の120人から270人、運営するハウスは8施設から11施設、寄付金も4000万円から9300万円まで増えました」
ここまでの成果を出せたのは、「外部の専門家の意見は素直に愚直に聞く。ただし活動に関しては自分たちこそが専門家なのだという誇りを忘れず、苦しいプロセスを楽しもうとする姿勢があったからではないか」と振り返っています。

続いて、特定非営利活動法人 地球と未来の環境基金理事長の古瀬繁範さんが、「組織を成功に導くカギ」について、見解を述べました。古瀬さんは自らもNPOとして森林保護活動に取り組みながら、NPOサポートファンド環境分野協働事務局としても、助成先となる多くの団体を見てきました。

「NPOサポートファンドでは選考過程で助成候補団体へ出向き、2時間ほどのヒアリングを実施します。この段階で、組織を根底から変える本気度、組織を変えたくない人とは決別も辞さない覚悟がない団体は、戦略レベルまで踏み込んだ改善・改革をするのは難しいと思います。
またNPOは個人の思いが団体立ち上げの原動力となっているところが多いようですが、一定のステージに来たら、仕事を共有する仕組みを整えるなど、“個人の仕事”から“組織の仕事”へといかに脱皮していけるか。そこに、組織として成功できるかどうかのカギがあると思います」

地球と未来の環境基金
理事長 古瀬繁範さん

サービスグラント
代表理事 嵯峨生馬さん

特定非営利活動法人 サービスグラント代表理事の嵯峨生馬さんは、「支援する側はどうあるべきか」という観点から提言をしました。サービスグラントは、社会人が仕事で培ったスキルをボランティアに活かす「プロボノ」を通して、NPOに必要なウェブサイトの再構築、事業計画立案などの成果物を提供している中間支援組織です。

「NPOを情報発信の分野でサポートするときは、事務局だけでなく、会員やボランティア、応援してくれている企業等にもヒアリングします。その過程で出てきた評価や期待、改善点などはNPOにお伝えする、というように、第三者であることを生かした関わり方をしています。
また、小規模なNPOの場合、アイデアだけをどんどん出されても、体力がないので十分に生かし切ることができません。だったら、どんなに小さくても具体的で、次の日から使えそうなツールのほうがありがたい。
同時に、最近は、NPOの活動実績も蓄積し、活動が広がりを見せる中で、これから5年、10年先の組織の方向性を見定めるコンサルティングへのニーズも生まれています。NPOのニーズも着実に成熟しています。」