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NPO/NGOの組織基盤強化のためのワークショップ2014 in 東京 第三者の視点を取り入れ、組織の課題をあぶり出し、 組織基盤の強化に必要なものとは何かを問う

2014年3月25日、認定NPO法人日本NPOセンターとの共催で「NPO/NGOの組織基盤強化のためのワークショップin東京」を開催しました。

パナソニックは、社会課題の解決に取り組む市民活動が持続的に発展していくには、NPO/NGOの組織基盤強化が必要という認識のもと、2001年に「Panasonic NPOサポート ファンド」という助成プログラムを立ち上げました。以来、特に「組織基盤強化の支援」に力を入れて取り組んでいます。

現在は6つのプログラムを展開しており、そのうちの1つが、昨年から日本NPOセンターと協働で開催しているワークショップです。昨年は全国5カ所で開催し、113団体にご参加いただきました。その中から実際に助成先として採択された団体もあります。

今年は東京での開催を皮切りに、全国7カ所での開催となります。本ワークショップは「活躍しているNPO/NGOの秘訣は組織づくりから!」をテーマに、基調講演(学ぶ)、事例報告(知る)、ワークショップ(考える)という3つの要素で構成しています。

組織基盤強化に関心を寄せるNPO/NGOの関係者46人のご参加をいただき、慌ただしい日常の中ではなかなか確保できない「自分の組織についてゆっくりと考える時間」を共有しました。

基調講演「組織基盤強化の意味と意義について」 組織に欠かせない“行動の柱”—— ミッション、ビジョン、バリュー

日本NPOセンター
常務理事・事務局長
田尻佳史さん

初めに「組織基盤強化の意味と意義について」と題して、認定NPO法人 日本NPOセンター 常務理事/事務局長の田尻佳史氏が基調講演を行いました。
NPO/NGOの組織基盤を考える上で注目したいポイントとしては「目標設定」「人的基盤の確立」「財政基盤の確立」「ガバナンス(組織統治体制)の確立」の4つが挙げられると述べ、それぞれの留意点を解説しました。

●目標設定

組織の存在意義や使命、未来に成し遂げたいことを意味する「ミッション」、そのミッションに向かって数年間で具体的に何をするかを示す「ビジョン」、そのビジョンに向かって日々活動していく上での行動指針を表す「バリュー」。
この3つの“行動の柱”があって初めて組織はまっすぐに動き出します。

●人的基盤の確立

NPO/NGOの活動は8割が事務。何度も会議を重ねたり、議事録を残して共有したりという事務の蓄積が組織の力になります。
また、長く続く組織には「関わっている人の階層が深い」という特徴があります。うまく働きかければ組織の力になってくれる潜在層を巻き込み、多様な層を組織の味方につけることが成功の鍵です。

●財政基盤の確立

NPO/NGOには他セクターよりも多様な財源があります。額は大きいが不安定な助成金や受託事業、小口だが安定している会費や自主事業など、財源ごとに性格が違います。資金と活動計画をぴったり合わせていくことが重要です。

●ガバナンス(組織統治体制)の確立

リーダーシップのあり方には、大きく分けて「専制型」「民主型」「放任型」の3タイプがあります。組織の成長を考慮し、状況に合わせて、その時期その時期に望ましいリーダーシップを使い分けていくことが理想的です。

事例発表1:ホールアース研究所 創設者の引退を乗り越え、手に入れた新たな羅針盤

続いて、実際にNPOサポート ファンドの助成を受け組織基盤強化に取り組んだことで発展を遂げている2団体の事例発表が行われました。

まずは、富士山麓で環境教育や自然環境保全に取り組んでいる、ホールアース研究所 代表理事の山崎宏氏による発表です。

「1982年の設立以来、団体を引っ張ってくれたカリスマ創設者が卒業することになり、新たな羅針盤と世代交代の必要を感じたことから2011年、NPOサポート ファンドに応募し、2年にわたって組織基盤強化に取り組みました。
私たちの体験プログラムのヘビーリピーターを対象とした『ステークホルダーの意見収集』には、次に進むべき一歩のヒントが隠されていました。『宝はスタッフ』と書いてくれた人もいて、大きな自信につながりました。
また外部コンサルタントを交えたミーティングでは、自分たちの組織について、今まで考えもしなかった視点から問いかけがなされ、何も答えられませんでした。それを機に、自らの組織についてできるだけ多くのスタッフで話し合い、一つひとつ言葉にするトレーニングを重ねたことで、そこから次の一歩を踏み出す際の組織内での共有作業に時間がかからなくなりました。

第三者によって団体の課題をロジカルに突きつけられ、組織基盤強化をやらざるを得ない状況に追い込まれたことは、今思うと大きなポイントでした。おかげでスタッフにも経営の視点が芽生え、責任も明確になったことから、世代交代も徐々にではありますが進みつつあります」

ホールアース研究所
代表理事 山崎宏さん

事例発表2:NPO法人 アトピッ子地球の子ネットワーク データベースを再構築し、発信力を強化

次に、アトピー・アレルギー疾患のある人とその家族の支援を行っている、NPO法人 アトピッ子地球の子ネットワーク・代表理事の吉澤淳氏が発表しました。

「2011年から3年にわたって組織基盤強化に取り組みました。1993年の組織設立以来、電話相談を行ってきましたが、その内容を入力し、医療機関や行政、学校などに働きかける際の元データとしていたデータベースが壊れてしまいました。
そこで、助成1年目の2011年はデータベースを再構築して情報を整理し、発信力を強化することに取り組みました。この年は東日本大震災の災害支援と組織基盤強化の取り組みがちょうど重なり、大変でした。
そして2年目の2012年には、電話相談を受けるスタッフの人材育成に力を注ぎました。
さらに3年目となる2013年は、相談事業等を行っている他団体や企業、医師、研究者などを交えた事例の検討会を開催し、事例の共有や相談研修などを実施しました。

3年間の結論として、この組織基盤強化プログラムにより私達の活動内容が整理でき、電話相談を含めたこれまでの活動を質的に深化させながらこのまま継続していく必要があることを確信しました。再構築したデータベースの内容は、ニュースレターの発行や学会発表などに役立てられたほか、今春には『学校給食アレルギー事故防止マニュアル』(合同出版)、昨夏には『食物アレルギーの基礎知識』(日本食糧新聞社)という2冊の書籍として結実しました」

アトピッ子地球の子ネットワーク
代表理事 吉澤淳さん

ワークショップ 組織が抱える課題を掘り下げる

続いて、NPO/NGOのリーダーやスタッフを対象としたワークショップが開催されました。このワークショップには「組織基盤に関する本質的な課題を意識するきっかけをつくる」「他団体の課題を共有し、組織基盤強化に必要な取り組みを共有する」という2つの目的があります。

参加者を組織内での役職が近い人ごとにA~Gまでのグループに分け、それぞれにファシリテーター1人を配置しました。今日のワークショップには全国各地のNPO支援センターのスタッフがファシリテーターとして参加しています。

まずは、ピンクの付箋5枚に「自分の組織が抱えている組織基盤に関する課題」を記入。これをグループの中で自己紹介と共に1人ずつ発表し、ほかのメンバーが「その原因は?」「なぜ?」などと問うことで問題を掘り下げ、導き出されたものを水色の付箋に書きました。そこからさらに突き詰め、課題の根本にある原因を黄色の付箋に書き出しました。

話し合いの結果は模造紙にまとめられ、これをもとに、各グループの代表が2分程度の発表を行いました。たとえば、あるグループは次のような気づきを得ることができました。

「すべての団体から共通して出たのは事業、お金、人の問題でした。お金を集める魅力的な事業をつくるには、スタッフの危機意識や新事業への意欲が必要で、そのためには人の育成が欠かせません。この3つの問題は循環していて、解決するにはミッションや理念を組織内で共有することが重要だとわかりました」

ワークショップ終了後には、この日の講師を務めた3人から組織基盤強化に関するアドバイスが送られました。

ホールアース研究所の山崎宏氏は「組織の中で何か1つがボトルネックになっていて、それを解決すれば付随して、ほかの課題も解決できることがある。何がボトルネックか見極めるには時間と外圧が必要です」と述べました。

また、アトピッ子地球の子ネットワークの吉澤淳氏は「自分の組織の強みを伸ばしていけばいい。強みを支えるものは何かを考え、NPOとはこうあるべきだという形式にとらわれないことも重要です」と発言しました。

そして日本NPOセンターの田尻佳史氏は、各グループに対するアドバイスのあと、「ミッションやビジョンがまだ組織内で確認・共有されていない印象を受けました。何を先にやるべきかという優先順位をつけ、その実施にあたっては組織の強みは何かを意識してほしい」と総評しました。

Panasonic NPOサポート ファンド2014年募集について 第三者の視点を取り入れ、2つのフェーズで組織基盤強化を応援

最後に、NPOサポート ファンドの総合事務局である東郷琴子が、NPOサポート ファンドの概要と2014年度の募集について説明しました。

「NPOサポート ファンドは環境・子ども分野において、国内で先進的な取り組みを展開しているNPOや新興国・途上国で活動しているNGOの組織基盤強化を応援する助成プログラムです。2001年の設立以来、239件、2億千万円の助成を行ってきました。
2014年募集事業の助成テーマは『客観的な視点を取り入れた組織基盤の強化』です。

プログラムは「組織診断」、「組織基盤強化」という2つのフェーズに分かれています。組織診断フェーズでは、第三者による組織診断を実施し、その結果を受けて組織基盤強化の計画を自分たちで立てます。
続く組織基盤強化フェーズでは、自分たちで立てた計画を第三者の力も借りてブラッシュアップした上で実行し、最後に評価をしてもらいます。

連続した2つのフェーズへ応募いただいてもけっこうですし、「組織診断」のみの応募も可能です。自分たちで課題分析が的確にできている場合に限り、「組織基盤強化」のみの応募もできます。
いずれのフェーズにもNPOの支援機関、NPOの経営支援の専門家といった第三者の多様で客観的な視点が入ります。その選定も応募団体自身に行っていただきます。
2014年度は7月16日~31日まで応募を受けつけています。先駆的な活動の実践と組織の自己変革に挑戦されるNPO/NGOの皆様からの応募を心よりお待ちしています」

NPOサポート ファンドの説明で、本日の組織基盤強化ワークショップは締めくくられました。
本ワークショップは、東京での開催のほか、宮城、新潟、岐阜、大阪、広島、福岡の7ヶ所で開催されます。

パナソニック
東郷琴子