制度
2001年にサポートファンドが創設され、今年は20年目を迎えます。また、一昨年の創業100周年の年には、それまでの17年間の実績を元に制度を新たにしました。その内容は、8ヶ月ほどの組織診断をし、翌年以降に最長2年を掛け組織基盤強化を行うことができるものです。課題を把握している組織は初年度から基盤強化に申請できます。
助成・補助制度に関して、外務省は2019年度から、NGOが実施するODA事業の管理費割合の上限引き上げを実施しました。この割合は、国際協力を行う組織の中でも永年の課題でありましたが、本助成制度は助成金の多くを人件費に充てられることも魅力的な特徴のひとつです。
募集
例年開催されてきました、助成内容の説明会を兼ねた組織基盤強化ワークショップは、現下の社会情勢に鑑み、オンラインワークショップとして、5月から6月にかけて開催されました。内容は、組織基盤強化を理解し、事例から学び、トークセッションで更に理解を深め、最後にサポートファンドを活用していただく為の説明がなされました。物理的距離の移動負担が減ったこともあってか、当初の想定よりも多く方に参加をいただきました。
その結果、新規申請は東北1・関東11・中部1・近畿4・中国1・九州5の23件でした。
また、既に助成を受けている11団体(関東7・中部2・近畿1・九州1)が継続申請をし、結果として、合計34団体から応募がなされました。
選考
選考は、要件確認・書類選考・選考委員会・ヒアリング・最終決裁と5段階の手順を踏み進められます。選考対象となった団体の海外の活動拠点は合計74ヶ所で、アジア57・アフリカ16・中央アメリカ1でした。この中でも最も多くの活動が行われている地域は東南アジア32ヶ所、次いで東アフリカ13ヶ所。委員それぞれでこれらの団体の書類選考をし、その結果を持ち寄り9月中旬に、オンラインで、選考委員会が開かれました。
選考メンバーは、アフリカ分野ご専門の世界の医療団・米良事務局長、本ファンドからも支援を受けた経験を持つソーシャルコンサルタンツ・井川代表、NGOの連携を行い多くの非営利組織をご存知の横浜NGOネットワーク・小俣エグゼクティブ・プロデューサー、そして助成審査に永年たずさわり助成支援について知見の深いパナソニック・福田部長と、強力な体制で選考委員会を開きました。
選考委員会での選考は、募集要項の選考基準(目的・時期・方法・体制と予算・変革性・他組織への波及効果)にどれほど沿っているかを確認し、進めました。今年の申請内容の特徴は、やはり大きな外部環境の変化にどの様に対応するかを折込んだものが、提出されたことです。経済が停滞したり、現地へアクセスしづらい状況下で、資金調達をどの様に行うのか。この中心課題の解決に資する基盤強化策が考案されていました。提出されたいずれもが、厳しい選考基準を超克し、社会への波及効果も高いと考えられる内容ばかりでした。更に、各団体の苦しい経営事情を考えますと、極めて難しい選考となり、慎重な議論が重ねられました。選考委員会の結果、最終選考対象となった組織すべてに対して、選考委員会で出された疑問点を中心に、事務局の担当者によるヒアリングが行われました。
結果
ヒアリング後間もなくの11月上旬、申請団体からの回答を選考委員長により確認する最終決裁の場が設けられました。結果として、助成予算がより組織基盤強化に結びつき、助成目的である社会の貧困の削減をより実現できるであろう組織として、新規7件(強化2・診断5)・継続3件の10団体が助成対象として決定しました(助成総額1,466万円)。
選定された組織基盤強化の内容は次のものです。webサイトの多言語化とそこへの導線として現地での講演会の実施、現地のパートナー組織が現地で直接資金調達ができる仕組みづくり、作成したアニメを活用したwebマーケティング、ボランティアを活用した組織マネジメント体制の構築。次に、診断を行う組織が特にフォーカスする点としては、理事会の世代交代、戦略作成、組織マネジメントスキル、財務基盤強化、戦略のスタッフへの浸透で、いずれも将来の組織基盤強化につながる大切な内容ばかりでした。
柔軟な強靭性
この組織基盤強化は営利・非営利にかかわらず、組織が必要とすることです。ただし、外部環境が大きく変化する状況では、組織や個人が萎縮・硬直しがちですが、組織基盤も硬ければ強いというものではありません。進化生物学の分野で有名な言葉に、「強い者が生き残るのではなく、賢い者が生き延びるのでもなく、 唯一変化できる者が生き残ることが出来る」というものがあります。時に、硬いものは脆いものかもしれません。組織も同様に、柔軟な強靭性が組織基盤強化の本質とも考えられます。環境が変化している時こそ、柔軟性を失わずに、組織基盤の強化を目指すのがあるべき姿かと思います。
経営の神様が支援する組織基盤強化への助成は、まさに勝地です。助成を受ける団体はこの100年継続した組織の力を借り、今回の助成をテコの支点として大いに活用し、世界にある社会課題を解決していただくことを祈念しています。本年度の募集・選考も公正な手続きにより行われ、事務局の適切かつ丁寧な支援もあり、結果として助成目的に合致し効果的な成果が見込まれる助成先が選定されたことを改めて申し上げます。
<選考委員> |
★選考委員長 |
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中山 雅之 |
国士舘大学大学院 グローバルアジア研究科 教授 ★ |
井川 定一 |
NGO‐外務省定期協議会 連携推進委員会 NGO側 調査提言員 |
小俣 典之 |
特定非営利活動法人 横浜NGOネットワーク |
米良 彰子 |
認定特定非営利活動法人 メドゥサン・デュ・モンド ジャポン |
福田 里香 |
パナソニック株式会社 ブランド戦略本部 |