NPOのキャパシティビルディングは有効か Panasonic NPOサポート ファンドが過去に支援したキャパシティビルディング事業の有効性についてご報告

1. 主要事業のアウトカムが改善・向上 -Panasonic NPOサポート ファンド事業評価の結果-

1)助成の受け手における組織基盤の強化に与えた影響

助成先団体の51.2%の団体で助成申請の際に抱えていた組織運営上の課題が解決した。
(「大いに解決された」「かなり解決された」団体が51.2%で、「ある程度解決された」団体は46.4%、「あまり解決されなかった」団体は2.4%)
本助成事業の内容が、団体だけでは通常は取組むことのできない組織運営上の課題を対象としていることを考慮すると、助成によって全体の半数を超える団体で課題解決が進んだことは、本助成の有効性を示していると考えられる。

助成先団体の助成後の総収入は、実施前に比べ平均60%増加している。また現在に至るまでの総収入の年平均増加率も、全体で36%、子ども分野で27%、環境分野で46%に達している。助成は組織の成長に寄与したと評価できる。

スタッフ数においても、無給・常勤スタッフが減少傾向を示し、有給・常勤、有給・非常勤、無給・非常勤の各スタッフが増加傾向にあり、組織運営の体制が整う方向にあるとみられる。 

組織運営上の課題解決が進んだ団体においては、課題解決の進みが顕著でない団体に比べて、(1)理事会の組織運営に対するコミットメント、(2)事務局スタッフにおけるビジョン共有の度合いの高まり、(3)既存事業の展開力強化、(4)事業推進能力・ノウハウの強化、(5)地域との連携に改善傾向が見られ、組織課題の解決にこれらの改善行動が重要であることがわかった。

財政規模が助成前と現在を比較して、500%以上増加した団体が7団体あったが、急増した財源は会費、寄付、自主事業、委託収入、助成金・補助金と団体により異なり、多様であった。しかしながらどの団体も、助成直後に増加した財源はそのまま現在に至るまで成長の原動力となっており、10年間以内の期間においては、一度定まった成長パターンが持続することが多いといえよう。

2)活動の充実による社会課題の解決の促進、他の助成組織に与えた影響等

「組織基盤強化の取組みにより、主要事業のアウトカムが改善・向上したか」という問いに対し、「改善・向上した」と回答した団体は全体の69.9%に達した。7割近い団体において、組織基盤強化が、主要事業の成果の向上・改善につながったということは、本助成の有効性を示していると評価できる。

アウトカムの改善の進んだ団体においては、(1)既存事業の展開力の強化、(2)ボランティア・会員・寄付者等のサポーターのモチベーションのアップ、(3)組織運営におけるPDCAサイクルへの意識の向上、(4)事業評価・改善能力の強化、(5)資金調達能力の向上、(6)企業との連携、(7)専門機関・大学等との連携 に改善傾向が見られ、活動の充実による社会課題の解決には、これらの点が重要であることがわかった。

アンケート調査からみると、具体的に何をアウトカム(活動の社会的成果)と考えるかは、団体により認識が分かれている状況であった。多くの団体で活動のアウトプット(活動の実施実績)もアウトカムとして挙げられており、NPOの活動におけるアウトカムの設定の難しさがうかがわれた。助成申請書において、活動のアウトカムの評価指標の設定を求めているが、さらに各団体におけるアウトカムの明確化を支援・推進する必要性がある。

インタビュー調査でより深く尋ねると、受益者数の拡大、既存事業の全国展開の実現、新規事業の立ち上げ、他団体への波及効果など、助成によって多くの事業上の成果の拡大があることが把握できた。
組織基盤を強化することが、事業運営力の強化を促し、アウトカムの向上につながることを確認できたといえる。

しかしながら、組織基盤の強化を支援することが事業のアウトカムの向上につながるという認識は、まだ他の助成組織に広く共有されるには至っていない。
組織力強化に着目した助成制度は本助成プログラムの他、「ダイワSRIファンド助成プログラム」、「日本興亜おもいやりプログラム」など少数派にとどまっている。本助成プログラムの成果を広く公表する活動を展開し、他の助成制度に影響を与えることが望まれる。

3)NPOサポートファンドの協働先(地球と未来の環境基金、市民社会創造ファンド)との事業運営に関する評価

インタビューではほとんどの団体で、助成応募時から事業実施、終了にいたるプロセスで事務局との対話が複数回あったこと、助成申請書の様式が組織運営について考えさせる内容であったことを高く評価している。
事務局のコメントやアドバイスが、組織運営の重要性に気付くきっかけになったとして、事務局への感謝が寄せられている。

複数の団体で助成のタイミング(組織の立ち上げ段階、新規事業の立ち上げ時、大規模な事業の受託直前、人材不足による伸び悩み時期など)が良かったことが、助成効果を引き出した要因として指摘されている。
助成事務局や選考委員会は、支援を受ける団体が組織運営上の課題を明確に把握しているか、組織基盤強化に組織をあげて取り組むか などを重要な審査の視点としていた。このことが良い成果を引き出したと評価できる。

またパナソニック株式会社による助成というブランド力が、団体の信用力の強化と実績づくりにつながり、助成後の団体における行政や企業との協働を引き出す源泉となったことはいうまでもない。

助成事務局が資金的支援と中間インタビューや報告会等を通じての非資金的支援という役割を、限られた資源にも関わらず、誠実かつ高度に果たしていることは、高く評価できる。
今後さらに助成効果を高めるためには、非資金的な支援(組織の経営診断や専門的なコンサルティング等)に関しては、助成事務局とは別部隊の本格的なサポート体制を、助成事務局と連携しつつ構築することが必要と思われる。

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