世代交代、中期ビジョンの策定、タイムリーな時機がある

金村 財務状況や進むべき方向性において転換期を迎えるなど、NPOにとってキャパシティビルディングに取り組むタイムリーな時機があると思うんですが、どうでしょうか?

古瀬 そういう意味で印象に残っているのは、名古屋で1980年から活動している「NPO法人 中部リサイクル運動市民の会」という老舗の団体です。立ち上げからずっと代表職だった60代の方が退いて、30代の若手にバトンタッチするという転換期の07年に応募してこられました。外部のファシリテーターを交えながら、1年がかりで「創成期から何をしてきたか」を洗い出しました。そして、「5年後、10年後にはどちらの方向へ進みたいか」といった中長期ビジョンを話し合うことになりました。「このままだと大変なことになるかもしれない」という危機感の中で組織基盤強化に取り組んだのは、よかったと思っています。  代表者が代わるという転換期を迎える団体も多いので、一つのモデル事例になったと思います。

<中部リサイクル運動市民の会>

金村 ロックフェスティバルのごみ分別活動から始まった「環境NGO ezorock」も、そうでしたよね。
これまで通り、若者のサークル活動として続けていきたい人と、社会的な活動をしていきたい人とで意見が合わなくなりつつあった。立ち止まって、もう一度ミッションやビジョンを確認したほうがいいんじゃないかという岐路に立たされていました。そこを明確にした結果、若者の声を社会に届けることで社会変革を生み出すという団体に生まれ変わりました。

<環境NGO ezorock>

坂本 中核事業が育っていくという勢いがついている時に助成したことで、組織が大きく成長したケースもありました。
07年から3年間、継続して助成した「認定NPO法人 アレルギー支援ネットワーク」がそうです。保育所や幼稚園などの保育士、教員、栄養士さんたちの知識やスキルを高める「アレルギー大学」を中核事業として育てていく中で、アレルギーのことを一番よく知っているお母さんたちにも事業の企画、運営に参加してもらい、自分の言葉で「何が問題なのか」「どうすべきか」を専門家に向けて発言できるようになっていきました。最終的には、お母さんたち自身が団体の事務局運営にかかわるところまで成長し、東海地域でアレルギー大学を展開する礎を築きました。

<アレルギー支援ネットワーク>

金村 プログラムが10年を迎え、助成先へのアンケートを行ったところ、約7割の団体が「キャパシティビルディングが事業成果の向上につながった」と答えています。