組織診断の方法論 (1)「現在の姿(現状)」の把握
組織診断のプロセスは大きく2つに分けられます。前半は「現在の姿(現状)」を把握するための情報収集が中心です。後半は課題を抽出し、優先順位をつけ、解決の方向性について団体内で合意するための話し合いが中心です。
「現在の姿」を把握するための情報収集は、[1]NPOマネジメント診断シートを活用したマネジメントチェック、[2]外部の関係者の意見収集、[3]社会環境の変化の把握の、3つの方法で行います。
[1] NPOマネジメント診断シートの活用
組織のマネジメント上の強みや弱みがどこにあるのか、NPOマネジメント診断シートを使って各分野についてのチェックを行います。NPOマネジメント診断シートは、団体の「運動性」と「事業運営面の適切性」の2つの視点を盛り込みパブリックリソースセンターが作成しました。ホームページでも公開しているので、ぜひご覧になってみてください。( NPOマネジメント診断シート)
この診断シートは、「マネジメント能力」、「人材」、「財務管理」、「プログラム(事業)」、「事業開発・計画・マーケティング能力」の5つの診断領域で構成されています。
例えばひとつめの「マネジメント能力」は、以下の診断項目にブレイクダウンされています。
- ミッション
- 社会的課題・ニーズの把握と組織の客観化
- 計画・評価
- リーダーシップ・ガバナンス
- 資金調達
- コミュニケーション、協働への取り組み、情報開示
- リスクマネジメント
各診断項目の中には具体的な設問が用意されており、例えば「ミッションは団体内で理解され、共有されている」「ミッションを実現するために必要な3年程度先を見越した中期目標・中期計画を立てている」といった設問に対して、各人が5段階で評価を行います。
理事・スタッフなど、団体内で組織運営を担う人にそれぞれ回答してもらい、集計結果を分析して、組織の強みや弱み、意見が分かれているところなどを把握します。
この診断シートの項目と設問は、よき組織運営のひとつの在り方を示しています。それと照らし合わせて組織の現状はどうなっているかを分析することで、課題をあぶりだします。
[2] 外部の関係者の視点
外部の関係者の視点を得るために、重要なステークホルダーからの意見収集を行います。団体のサービスの受益者や、会員、支援者に、インタビューやアンケートなどで、団体の強みや弱みはどこにあると思うか、今後団体になにを期待するか等を尋ねます。外から見た団体の姿を知ると同時に、団体の独自性や優位性を改めて認識する、貴重な機会です。
実際に外部意見の収集を行った団体からは、「こういう機会がないと外部の関係者に意見を聞きに行くことはしなかった。外部の方に団体を理解してもらうきっかけにもなった」「外部の関係者から予想外の意見を得ることができ、今後の団体運営に活かしていける」といったコメントがありました。
[3] 社会環境の変化の把握
社会環境の変化は、組織診断のためだけでなく、常に把握に務めるべきです。特に、事業分野の政治的動向や、世間の関心、同業者の動き、受益者の変化など、自分ではコントロールできない社会の変化に対して常にアンテナを立てておくことが必要です。そして変化に対応するだけでなく、団体にとって重要な社会の変化の先を読んで対応することで、チャンスを逃さず、脅威に備え、連携を作り出せる組織になるでしょう。
[4] コンサルタントの活用
日常業務に追われて組織診断が滞ってしまわないための強制力として、客観的な意見を提供する第三者として、話し合いを行う際のファシリテーター役として、コンサルタントを活用するのは効果的です。団体のミッションへの共感があるコンサルタントに入ってもらうのが良いでしょう。
(2)課題抽出および解決の方向性についての合意形成
パブリックリソースセンターが行う組織診断では、根本的な課題の見極めと同時に、団体内の合意形成も重視しています。組織診断の後半は、収集した情報をもとに、客観的な事実に基づき、課題抽出のための話し合いを行います。
話し合いは、組織の強み・弱み・チャンス・脅威を整理し、共有することから始めます。あまり認識していなかった団体の強みにあらためて価値を見出す一方で、団体の弱みがはっきりと突きつけられることもあります。組織運営を担ってきた人にとってはつらい部分かもしれません。
しかしこのプロセスをふむことで、団体が取り組むべき課題について合意形成がなされ、解決の方向性について納得して進むことができるようになります。