2020年 Panasonic NPOサポート ファンド事業評価レポート

組織運営力が助成前の約1.2倍に向上し、
9割の団体で主要事業のアウトカムが向上

評価結果サマリー

  • 2018年に助成期間が終了した10団体のうち、助成前に抱えていた課題が解決したのは10団体のうち6団体(60%)に留まった。
  • 助成実施前と比べて現在の総収入の増加率は、10団体の平均で10.7%と、財政規模が拡大している。
  • 組織運営力は助成前の約1.2倍に向上した。
  • 10団体中9団体(90%)で、主要事業のアウトカムが増大した。
公益財団法人 パブリックリソース財団
事務局長 田口由紀絵

本評価の目的と概要

Panasonic NPOサポート ファンドでは、2011年より毎年、助成事業の成果を検証することを目的に、助成終了後1年以上が経過した団体を対象にフォローアップ調査を実施している。
今回は2018年に助成期間を終了した10団体を対象にアンケート調査を行い、本事業による資金提供及び非資金的取組みが、助成対象団体の組織基盤の強化や、活動の充実による社会課題の解決の促進に与えた影響について調査し評価を行った。

評価方法

2018年に助成期間を終了した8団体(図表1)を対象に以下の調査を行い、評価を行った。

  1. 応募用紙、完了報告書の分析
  2. アンケート調査(回収率100%)
  3. 診断シートを指標群として活用した、助成の前と後の組織運営力の比較(回収率60%)

調査対象団体

団体名

分野

助成期間

特定非営利活動法人 兵庫県有機農業研究会 HOAS

環境

2016年1月~2016年12月
2018年1月~2018年12月

特定非営利活動法人 棚田LOVER's

環境

2016年1月~2018年12月

特定非営利活動法人 大雪山自然学校

環境

2017年1月~2018年12月

認定特定非営利活動法人 ソルト・パヤタス

子ども

2015年1月~2016年12月
2018年1月~2018年12月

社会福祉法人 日本国際社会事業団

子ども

2016年1月~2016年12月
2018年1月~2018年12月

特定非営利活動法人 あそびっこネットワーク(※)

子ども

2017年1月~2018年12月

認定特定非営利活動法人 D×P

子ども

2017年1月~2018年12月

特定非営利活動法人 フェロージョブステーション

子ども

2017年1月~2018年12月

認定特定非営利活動法人 ICA文化事業協会

子ども

2018年1月~2018年12月

認定特定非営利活動法人 エデュケーションエーキューブ

子ども

2018年1月~2018年12月

〈図表1〉

評価の視点

  1. 団体の規模や人員、組織課題の解決の度合いなどの定量的評価
    収入額の変化、財源の多様化、自主財源比率の変化、会員数、スタッフ数、助成申請の際に抱えていた組織運営上の課題がどのくらい解決されたか、等
  2. 助成先団体の組織能力の定量的評価(事前・事後の比較)
  3. 助成先団体における事業アウトカムの検証

評価結果

1)団体の規模や人員、組織課題の解決の度合いと分析

助成団体の組織基盤がどのくらい強化されたかを測るために、団体の規模や人員、組織課題の解決の度合いなどの定量的評価を行った。

【6割の団体で財源が多様化し、総収入が10.7%増加した】
助成事業の実施前と比べて、実施後に財源は多様化したと思うかという問いに対して、10団体中6団体が、「ある程度多様化した」と回答した。
また、助成実施前の総収入に対する助成最終年及び最新の決算での各団体の総収入の増加率の平均は、10.7%と、財政規模が拡大していた。
財源別に見ると、「助成金・補助金」が115.2%、委託による事業収入が109.5%と高い増加率を示している。一方「会費」は-18.5%、「寄付」は-35.4%と伸びなかった。

助成最終年

現在

増加率

n

増加率

n

総収入額

15.8%

8

29.2%

8

内訳

会費

-0.1%

7

-0.1%

7

寄付

-16.5%

6

-46.1%

6

助成金・補助金等

7.5%

7

82.7%

7

事業収入(委託費)

9.6%

5

10.3%

5

事業収入(自主事業)

3.7%

7

12.1%

7

総支出額

14.0%

8

24.8%

8

〈図表2〉

【助成前に抱えていた課題が解決したのは、10団体中6団体に留まった】
「助成事業で組織基盤強化に取り組むことによって、組織の課題はどのくらい解決されましたか」という質問に対し、10団体のうち60%にあたる6団体が80~120%の度合いで課題が解決されたとしている。
助成期間が1年の2団体は「あまり解決されなかった」あるいは「まったく解決されなかった」と答えており、助成期間が2年あるいは3年の団体に比べると解決の度合いが低い。

課題解決の度合い:助成1年 全く解決されない(60%未満)1団体  あまり解決されない(60%)1団体、助成2年 あまり解決されない(60%)2団体  ほぼ解決(80%)3団体 目標を上回って解決(120%)1団体、助成3年 ほぼ解決(80%)1団体 目標どおり解決(100%)1団体

〈図表3〉

【助成期間が長くなるにつれ組織基盤強化の効果が現れた】
サポートファンドの助成によって貴団体の組織基盤はどのように強化されたと思うかを尋ねたところ(複数回答)、最も回答が多かったのは「ミッション・ビジョンが明確になった」(8団体、80.0%)で、「スタッフの能力が高まった」「事業を振り返り、改善していくようになった」がそれぞれ7団体と続いた。

ミッション・ビジョンが明確になった

8

80.0%

スタッフの能力が高まった(ミッションを具現化する力、事業の専門性、社会課題をくみ取り提起する力、コミュニケーション能力、組織運営力、など)

7

70.0%

事業を振り返り、改善していくようになった

7

70.0%

中長期の戦略を立てるようになった

5

50.0%

組織の財源が多様化した

4

40.0%

最終受益者がだれか、ということが明確になった

4

40.0%

受益者(利用者、参加者など)の数が増えた

4

40.0%

理事やスタッフなど組織のメンバーが同じ方向を向くようになった

4

40.0%

外部組織との連携が広がった

4

40.0%

事業の質が向上した

3

30.0%

組織の財政規模が拡大した

2

20.0%

会員が増えた

2

20.0%

理事会が組織運営にかかわるようになった

2

20.0%

スタッフの数が増えた

1

10.0%

ボランティアが増えた

1

10.0%

その他

1

10.0%

特にない

0

0.0%

〈図表4〉

17ある選択肢のうち、いくつ選択したかを見てみると、最も多い団体で10、最も少ない団体で3、10団体の平均は5.9であった。助成期間別に見ると、2、3年のグループの選択数の平均値は全体の平均値を上回っており、1年のグループは全体のおよそ半分の値となっている。選択数が多いほど組織基盤が強化された実感が強いとすれば、助成期間が長くなるにつれ強化の効果が現れていると考えられる。

助成期間

選択した項目数

全体

1年
(I)

2年
(II)

3年
(III)

6~10

5団体

0団体

4団体

1団体

1~5

5団体

2団体

2団体

1団体

項目数の平均

5.9

3

6.5

7

〈図表5〉

2)助成先団体の組織能力の定量的評価(事前・事後の比較)

助成団体の組織運営力がどのように強化されたかを把握するために、診断シートを用いて、助成の前と後(現在)との組織運営力を定量的に比較した。10団体のうち回答があった6団体の組織運営力は、平均して46.6ポイントから55.2ポイントへと、約1.2倍に上昇した。

定量的評価(事前・事後の比較):1.EII 助成前/39.4点、現在/65.9点 2.EII助成前/43.0点、現在/65.9点 3.CII 助成前/39.9点、現在/63.3点 4.CII 助成前/48.8点、現在/52.9点 5.CI 助成前/48.1点、現在/46.4点 6.CI 助成前/60.6点、現在/66.4点 平均 助成前/46.6点、現在/55.2点

〈図表6〉

助成前の回答と現在の回答の得点の差を見てみると、5団体でプラスとなっており、うち3団体は90ポイント以上改善している。1団体は-1ポイントとほぼ変化がなかった。
変化が最も顕著だった団体(①EII)は、助成前の得点率が39.4ポイントであったのに対し、現在は65.9ポイントと、約1.67倍となった。

なお、診断シートの組織能力の分類と主な指標は、図表7にあるとおりである。

組織能力の分類

主な指標

1

マネジメント

ミッション、社会的ニーズ把握、意思決定、リーダーシップ、ガバナンス、説明責任、リスクマネジメント

2

人材

スタッフの能力、スタッフマネジメント、リクルーティング、人材育成、ボランティア参加、福利厚生

3

財務

財務管理、資金調達、資金繰り、安定性、収益性

4

プログラム

事業の強みと弱みの理解、事業の効果、事業計画

5

事業開発・マーケティング

事業の目標設定、社会的背景調査の実施、コンピタンス分析、ターゲット受益者の設定、サービス・商品設計、採算性分析

〈図表7〉

3)助成団体におけるアウトカム・インパクトがどのように拡大したか

組織基盤の強化に取り組んだ結果、主要事業のアウトカムがどれくらい増大したかについて、 (ア)受益者の拡大、(イ)社会的課題の解決への影響、(ウ)社会の意識の変化に与えた影響、(エ)政策への影響、(オ)他団体や企業への影響、の5つの指標を用いて確認した。10団体中9団体が、少なくとも1つ以上の項目について改善・向上がはかられたと回答した。以下に、主なポイントを挙げる。

【受益者が抱える課題の根本原因の解決が進んだ(質の向上)】
受益者にもたらした変化として、6割の団体が「最終受益者が抱える課題の根本原因の解決が進んだ(質の向上)」と回答している。「より多くの最終受益者にサービスを届けられるようになった(量の拡大)」とした団体は3割であった。

【社会の意識、他団体や企業に影響を与えた】
フェロージョブステーションは「障がい者雇用や障がい児の能力に対する理解が深まり、事業に協力してくれる地域関係者(教育機関・中小企業・福祉団体)が増えた」と述べている。D×Pは「連携/紹介しあいの機会がつくられるようになり、現在は他団体とともに相互研修や新しいアライアンスがつくられるなどに発展している」としている。

【政策に影響を与えた】
あそびっこネットワークが、2つの事業が練馬区の補助事業になったと回答した。ICA文化事業協会は海外の活動に現地政府の参加や助成が得られるようになったとしている。

4)助成事業のプロセスについて

【組織診断は役に立った】
組織診断に取り組んだすべての団体が、組織診断を行うことで「組織が取り組むべきことが明確になった」「組織内の意識をそろえることができた」のどちらか、あるいは両方を選び、「役に立たなかった」という回答はなかった。

【第三者のコンサルタントが役に立った】
全ての団体で第三者のコンサルタントのかかわりを得ており、10団体中6団体が「とても役に立った」、3団体が「まあ役に立った」と回答した。コンサルタントを「もともと知っている人にお願いした」団体では、「とても役に立った」とする回答が85.7%と多かった。「とても役に立った」理由として以下のコメントが挙げられた。

  • 客観的に団体を観察いただき、事業自体や最終受益者など的確なアドバイスをいただいた
  • 経営に関する知見がほとんどないなかだったが、問いを投げてコンサルタントの方に反応をいただくなかで、どういった視点で物事をとらえるのかをつかむ機会をいただけた。一時的なものではなくその後も応用がしやすかった
  • 客観的な意見を聴く事ができ、当初想定していたよりリアルな課題に向き合うことができた。意識合わせの上でも仲介に入ってくれる方がいることで、本音をぶつけ合いやすい環境を作ることができた。

【助成事務局のサポートが有益だった】
10団体中6団体が「訪問などにより有益なアドバイスをもらえた」と回答した。

【贈呈式や報告会が交流の機会となった】
10団体中7団体が「他団体と交流する機会が持てて刺激を受けた」、6団体が「役立つ情報収集ができた」と回答した。

まとめ

2018年に本助成事業により組織基盤強化に取り組んだ10団体のうち60%で組織運営上の課題が解決し、90%でアウトカムが拡大した。また、財政規模は平均すると約1割拡大した。本助成事業によって、助成団体における組織基盤強化は概ね進んだといえよう。
傾向としては、組織運営上の課題の解決の度合いは、助成期間が1年であった団体に比べると、2年あるいは3年の団体の方が解決の度合いが高かった。また、組織基盤がどのように強化されたと思うかについて、17項目から当てはまるものを選択してもらったところ、助成期間が1年であった団体よりも、2年あるいは3年の団体の方が選択数が多かった。
このことから、今回の対象団体においては、助成期間が長くなるにつれ組織基盤強化の効果が現れており、今後のプログラム改善の際には考慮に入れるべきポイントのひとつであると考えられる。

組織基盤強化によって社会的インパクトがどのように拡大したかについては、6割の団体が「最終受益者が抱える課題の根本原因の解決が進んだ」と回答しており、主に質の向上がはかられた。本調査は助成期間終了後約1年半後に行われているが、組織基盤が強化されたことによる受益者への影響は、さらに時間をかけて長期的に検証していく必要があるだろう。

また、本助成事業の特徴である①組織診断の実施、②第三者のコンサルタントによる支援、③助成事務局のサポート、④贈呈式や報告会の機会、については、どの側面においても有効性が確認された。特に、団体における「組織変革」が進んだことに言及している助成先団体が複数あり、本助成事業の特色を現しているといえよう。
その中で、コンサルタントを「もともと知っている人にお願いした」団体に比べ、そうでない団体が感じたコンサルタントの役立ち度が若干低かった。組織基盤強化の効果をさらに高めるためには、第三者のコンサルタントと団体との効果的なマッチングが課題であると考えられる。

これから取り組む団体へのメッセージ

本助成事業の有効性を示すコメントとして、2018年に助成期間が終了した団体から、これから助成事業に取り組む団体へのメッセージの一部を紹介する。

  • 必ず、取り組んだ成果は出ます。取り組んでよかったと思えます。頑張ってください。
  • 組織基盤強化には苦しさもともないますが、数年にわたりそのNPOの活動を下支えしてくれるものになると思います!
  • 自分達のことを真に理解するというのが実は一番難しかったりします。第三者の方の力を借りることで、事業の価値や目的、最優先に取り組むべき課題を明確にすることができます。自分達だけで悩んでいる時間はもったいないです!変化するのに時間が掛かることも多くありますが、より良い組織づくりのためにぜひ挑戦してください。