海外助成 2019年募集事業 選考委員長総評

制度

創業100周年の昨年、17年間の実績を元に制度が新たになりました。助成内容は8ヶ月ほどの組織診断をして、翌年以降に最長2年を掛け組織基盤強化を行うことができるものです。課題を把握している組織は初年度から基盤強化に申請もできます。助成・補助制度に関して、外務省は2019年度初めに、NGOが実施するODA事業の管理費割合の上限引き上げを発表しました。この割合は、国際協力組織の中でも永年の課題でありましたが、本助成制度はその多くを人件費に充てられることも魅力的な特徴のひとつです。

募集

今年も助成内容の説明会を兼ねた組織基盤強化ワークショップが全国6ヶ所で開催され、積荷は事業・組織は船と、組織基盤強化の重要性について丁寧に説明がなされました。その結果、新規申請は北海道2・関東21・中部1・近畿4・九州2の30件でした。また昨年度の助成対象7団体のうち、継続申請をした団体が6件(関東3・中部2・中国1)、結果として合計36団体から応募がなされました。

選考

資格審査・書類選考・選考委員会・ヒアリング・最終決裁と5段階の手順を踏み選考が進められます。最初の資格審査で、新規が22件・継続6件となり、これらの団体について委員それぞれで書類選考をし、その結果を持ち寄り東京汐留にて、選考委員会が開かれました。選考メンバーは、アフリカ分野ご専門の市民ネットワーク for TICAD世話人・米良氏、本ファンドからも支援を受けた経験を持つICAN・井川事務局長、NGOの連携を行い多くの非営利組織をご存知の横浜NGOネットワーク・小俣エグゼクティブ・プロデューサー、そして助成審査に永年たずさわり助成支援についての知見の深いパナソニック・福田部長と、強力な体制で選考委員会を開きました。

選考委員会では、募集要項の選考基準(目的・時期・方法・体制と予算・変革性・他組織への波及効果)にどれほど沿っているかを確認しました。いずれの組織も厳しい選考基準を超克し、社会への波及効果が高いと考えられる内容で、極めて難しい選考となりました。その他、過去に助成を受けた経験や組織の財政規模の多寡についても議論がなされました。また3団体は基盤強化の申請でありましたが、診断から丁寧に行っていただくほうが、将来の組織基盤強化につながるであろうということもあり、申請区分の変更の可否も確認することとなりました。これらの議論の結果として、13の団体が次のヒアリングに進みました。そして、これらの組織すべてに対して、選考会で出された疑問点を中心に、事務局によるヒアリングが行われました。

結果

ヒアリング後間もなくして、申請団体からの回答を確認する最終決裁の場が設けられました。結果として、助成予算がより組織基盤強化に結びつき、助成目的である社会の貧困の削減をより実現できるであろう組織として、新規10件(強化1・診断9)・継続2件の12団体が助成対象として決定しました。新規に組織基盤強化に取り組む組織は、組織の強みを活かした資金基盤を強化する取り組みをされます。継続して強化を行う組織は、メンバーの個の力の向上を目指す内容と、国内外の組織とのネットワーク性の充実を図る取り組みをされます。そしてその他9つの団体は、外部の伴走者と共に組織の課題を発見することから取り組まれます。この中には、これまでに多くの実績を積まれた組織もあり、組織の“資産”の棚卸しをしたり、世代交代に向けて改めて外部環境を感じ考えて課題を抽出するなど、将来の組織基盤強化につながる大切な診断内容ばかりでした。

さて、この組織基盤強化は営利・非営利にかかわらず、組織が必要とすることです。そして経営の神様が支援する組織基盤強化への助成は、まさに勝地であるといえます。助成を受ける団体はこの100年継続した組織の力を借り、今回の助成をテコの支点として大いに活用し、世界にある社会課題を解決していただくことを祈念しています。本年度の募集・選考も公正な手続きにより行われ、事務局の適切かつ丁寧な支援もあり、結果として助成目的に合致し効果的成果が見込まれる助成先が選定されたことを改めて申し上げます。

海外助成 選考委員長
中山 雅之

<選考委員>

★選考委員長

中山 雅之

国士舘大学大学院 グローバルアジア研究科 教授 ★

井川 定一

認定特定非営利活動法人 アイキャン 理事・事務局長

小俣 典之

特定非営利活動法人 横浜NGOネットワーク エクゼクティブ・プロデューサー

米良 彰子

市民ネットワーク for TICAD (Afri-Can) 世話人

福田 里香

パナソニック株式会社 ブランドコミュニケーション本部
CSR・社会文化部 部長