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社会福祉法人 日本国際社会事業団を
プロボノチームがマーケティング支援

パナソニックは従業員が仕事で培ったスキルや経験を活かし、NPOの事業展開力強化を応援する「Panasonic NPOサポート プロボノ プログラム」に取り組んでいます。このたび、従業員6人がチームを組んで、東京都内に拠点を置く「社会福祉法人 日本国際社会事業団」(以下ISSJ)の「マーケティング基礎調査」に取り組みました。チームは2019年9月4日から、ISSJのスタッフやボランティアへのヒアリング、ムスリム女性のための日本語教室やチャリティ映画会への参加、映画会でのヒアリング・アンケート調査などを行い、その結果から今後取るべきアクションを導き出し、優先順位をつけて、2022年までの実施スケジュールに落とし込んだものを最終報告として、12月11日にISSJ事務所で提案しました。その模様をお届けします。

国境を超えて家族の問題を解決
新たな寄付者の獲得が課題

ISSJは戦後、米軍兵士と日本人女性との間に生まれた子どもを、主に米国の家庭に養子縁組する団体として1952年に設立されました。現在は「養子縁組支援」と「外国とつながりのある家族の支援」を主な事業としています。

2016年と18年にはパナソニックNPOサポートファンドの助成を受けて、組織基盤強化にも取り組みました。

活動内容
養子縁組の取り組みなどを支援

そのような中で、長年支援を継続している寄付者が多い一方で、それぞれのケースの複雑さやプライバシー保護の観点から、活動の内容を一言では伝えにくく、新たな寄付者を開拓できていないという課題がありました。

常務理事の石川 美絵子さんは、プロボノへの期待をこう語ります。

「いつも同じような活動をしているうちに、考え方や視点がだんだん固定化されてきてしまったので、企業ならではの考え方や視点を活動に採り入れていただきたいと思いました」

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ISSJ 常務理事 石川 美絵子さん

映画会参加者と関係者にアンケートとヒアリング
対策に優先順位をつけて提言

この課題を受けて、プロボノチームは寄付金収入の推移を分析し、催事寄付金の減少が課題と分かったので減少を抑える方向性と、逆に一般寄付金が増えている点に着目しさらに増やしていくことについて提案しました。
あわせて、会員と直接顔合わせができる絶好の機会である年1回の映画会に参加し、映画会参加者とISSJ関係者にヒアリングと、従来の紙に加えてWEBアンケートの実施をすることで、映画会を生かしきれていない課題が見えてきました。具体的に関係者からは、寄付金の減少や会員の高齢化を心配する声が聞かれる一方で、支援者には資金面での危機感が伝わっていないことが見えてきました。

この課題を受けて、プロボノチームは寄付金収入の推移を分析し、まずは催事寄付金の減少を抑えることに取り組む一方で、一般寄付金を増やしていくことを提案しました。
さらに、会員と直接顔合わせができる絶好の機会である年1回の映画会を活かしきれていない現状に着目し、映画会参加者とISSJ関係者にアンケートとヒアリングを実施。関係者からは寄付金の減少や会員の高齢化を心配する声が聞かれるものの、支援者には資金面での危機感が伝わっていないことが見えてきました。

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最終提案会の様子

これらの結果から、チームでは、支援者を「新規支援者」「既存支援者」「映画会の参加者」に分類し、それぞれに対する「告知」「報告」「寄付」「満足度の改善」というステップの提示と、各ステップにおいてできることを提案しました。
また実行策の策定に当たっては、広報の専従がおらず、相談業務などで多忙なISSJの職員が“みんなで取り組めて実行可能な施策”という観点から「①寄付の見直し」「②SNS(Facebook)の見直し」「③お礼の見直し」「④映画会運営の見直し」という4つのポイントに整理し、優先順位をつけました。

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最終提案会の様子

たとえば、ISSJでは「多言語情報提供サービス」として日本語・英語・タガログ語・タイ語・ベトナム語で情報を提供していますが、ホームページの告知だけではあまり認知されていません。他団体にはない強みやサービスをもっと多くの人に知ってもらい、応援者を増やすという観点から、現状のFacebookを関係者が連絡を取り合う情報掲示板として活用しつつも、このようなサービスの情報を紹介し、拡散をボランティアやインターン生などの関係者に依頼することでSNSへの集客につなげるといった具体的なアドバイスもありました。

映画会に関しては、会員や応援者が友人知人を誘って参加してくれたり、「映画の解説がよかった」との感想が寄せられたことから、映画と同時開催のバザーのテーマも統一して、その選定理由をISSJの活動にからめることで満足度を上げ、友達や知人に紹介しやすくなるチラシやDMの工夫で寄付や新規の会員増につなげることができるのではないかと提案。これらの対策を、ISSJが設立70周年を迎える2022年までのスケジュールに落とし込みました。
最後に、新規支援者の開拓をイメージして作成した、映画会参加者に向けたお礼とお願いをセットにした挨拶の例文を読み上げました。

以上のような一連の提案のあと、ワークショップ形式でISSJの皆さんに感想を聞きました。

お仕事の合間に、ここまで詳しい資料をつくっていただき、お礼のしようもありません。やるべきことを四つに絞り、優先順位をつけてくれたことで取りかかりやすくなりました。
寄付も、お礼も、SNSも、全体を統合させて人とのつながりをつくり、その上でご支援いただくという基本を見直す必要があると思いました。映画会の見直しの中にプロジェクト管理があって、そこが企業さんならではだなと感じました。
支援者の皆さんからも活動を評価する言葉をたくさんいただけて、励まされ、心強く思いました。

写真:ISSJ 常務理事 石川 美絵子さん

普段はソーシャルワーカーをしていますが、今回、プロボノの皆さんとの日々のやり取りやスケジュール調整、スタッフの取りまとめを担当しました。
Facebookの対象をどう絞り、いかに戦略的にやっていくか。私たちのすべての活動を通して、ISSJであるという一貫性をどう見出していくか。こういった点を、スタッフ間でさらに話し合いたいと思いました。
やるべきことを時系列にまとめてくださったので、どこからスタートすればいいか迷子にならなくて済みそうです。

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ISSJ 榎本 裕子さん

また、報告会に参加した他の職員の皆さんからも、次のような感想が寄せられました。
「映画会を担当してきて、何となく感じていた課題を整理し、提示してくださったことに感謝しています。寄付にしても映画会の参加者にしても、顔が見える関係の中でしか増えていかないということは実感しています。それを具体的にどう次へつなげていくか、考えることの大切さを教えていただきました」
「放置してきた部分をてこ入れする必要性を感じました。難民支援から養子縁組、養子になった人のルーツ探しまでと幅広く取り組んでいるので、映画会の作品を決めるのも大変なんですが、映画のテーマと関連がある方にミニトークをしていただくなど、工夫していきたいと思いました」
「InstagramやTwitterも始めなければいけないのかなと思っていたのですが、まずは既存のFacebookから丁寧に情報を発信して、そこから広めたほうがいいとうかがって、安心しました。ありがとうございました」

プロボノチームの感想

続いて、パナソニックのプロボノチームからも次のような感想がのべられました。

◆パナソニックのホームページを見ていて、「養子縁組」というキーワードで今回のプロボノにたどり着き、参加への申し込みをしました。いろいろと調べた上で、ここまでまとめるのは難しかったけど、「ISSJさんの活動が必要なんですよ」というメッセージをお伝えできるまとめにはなったと思います。興味のありそうな若い層を活動につなげていくことの大切さも感じました。変化の速い時代ですが、その変化にも、ぜひワンチームで向かっていってください。これからもISSJさんを応援し、活動を広めていけたらと思います。

◆これまでもプライベートではボランティアやインターン、プロボノに参加してきましたが、今回はパナソニックの従業員としてチームで取り組むプロボノを体験したくて、会社の掲示板を見て参加を決めました。認知を広めるには何をすればいいかというところから話はスタートして、徐々に、今お持ちのステークホルダーや活動内容で十分ではないかというところに切り替わっていきました。こういう視点の転換はチームだからこそできたのだと思うし、自分の中にも変化が生まれました。複数の人と交わって、企業視点で参加するところに今回のプロボノの面白みがありました。

◆プロボノ活動は今年で6年目です。年々テーマが重く、難しく、でも面白くなっており、これがプロボノの醍醐味なのだと思います。
これまでのプロボノ活動の経験から、灯台下暗しで解決策のヒントは意外と足元にあったりする事が多いので、今回は先にアタリを付けて、そこからプロジェクトを設計して骨子をつくっていきました。代表を始めとする皆様から「ありがとう」とか「助かった」という温かい感謝の言葉をいただくだけで、次またやろうという気持ちが湧いてきます。

プロボノチーム6人のうち4人は今回のプロボノが初めてでした。4カ月という限られた期間での濃密な取り組みとなりましたが、これからも「ボランティアとして参加する」、「活動を広める」など、さまざまな形で、プロボノチームとISSJとの交流は続いていきそうです。

写真:パナソニックプロボノチームとISSJの集合写真