創業者松下幸之助は、さまざまな素材を駆使し、伝統的なわざを絶やさず時代の息吹を取り入れることによって成立する日本の工芸作品を以って、「伝統工芸は日本のものづくりの原点である」と確信し、このような作品を作り出す工芸作家を支援することで、「ものづくりの心」を未来に伝えていきたいと考えました。
創業者は無形文化財の保護育成や、伝統文化向上に寄与することを目的とする日本工芸会の初代近畿支部長を務め、今日のパナソニックグループと日本工芸会の関係につながっています。

従業員向け講演会において、日本を代表する工芸作家である森口邦彦氏と四代田辺竹雲斎氏のお二人をお招きし、「伝統工芸における伝統と革新」をテーマに対談形式でお話しいただきました。お二人が工芸作家として歩まれた人生の中で得た経験、出会い、影響を受けた言葉、挑戦など5つのテーマでお話いただきました。

◆森口邦彦 氏(染織)
重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)
日本工芸会正会員

1963年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)日本画科を卒業後、パリ国立高等装飾美術学校に留学しグラフィックデザインを学ぶ。帰国後、重要無形文化財保持者「友禅」(人間国宝)である父・森口華弘氏の特徴的技法「蒔糊」の友禅技法を学び、
1967年日本伝統工芸展に初入選。以降、各展の受賞多数。2001年に紫綬褒章受章、2007年に重要無形文化財「友禅」保持者(人間国宝)に認定、2013年に旭日中綬章受章。2014年には自身の友禅訪問着作品の柄をもとに、三越のショッピングバッグのリニューアルを手掛けた。2020年にはフランス共和国レジオン・ドヌール・コマンドゥール章受章。

◆四代田辺竹雲斎 氏(竹工芸)
日本工芸会正会員

東京芸術大学美術学部彫刻科を卒業後、大分県別府市にある竹工芸訓練支援センターで2年間竹の編組、基礎技術を学ぶ。その後、実家である大阪府堺市に帰阪し、父三代竹雲斎のもと竹工芸を学ぶ。2001年にアメリカ・フィラデルフィア美術館クラフトショーに招待出品。その後、ボストン美術館・シアトル美術館・サンフランシスコアジア美術館・大英博物館・ギメ美術館等で展覧会を開催し、作品が美術館に所蔵されている。2012年、内閣官房国家戦略室より「世界で活躍し『日本』を発信する日本人プロジェクト」にて選出・表彰。内閣府派遣でフランス・パリ装飾美術館、アメリカ・NY MAD美術館でデモンストレーションを行う。2017年、四代田辺竹雲斎を襲名。2022年、芸術選奨文部科学大臣新人賞、大阪文化賞を受賞。