第三者の多様な視点、客観的な視点が キャパシティビルディングにつながる

ソーシャルベンチャー・パートナーズ東京
代表 岡本拓也さん

支援者側からは、3人がパネリストとして参加しました。
その一人、岡本拓也さんが代表を務める合同会社ソーシャルベンチャー・パートナーズ(SVP)東京では、約100人の個人出資者から毎年10万円を募り、独自の診断シートを使って組織診断を行い、投資協働先を選定しています。
「組織診断というしんどい作業も膝をつき合わせて根気強く続けていくことで、支援する側とされる側の間に信頼関係が生まれます。ここで何が課題なのかというスタート地点を一致させておけば、その後のプロジェクトを進めていく際に大きな意味をもってきます」

特定非営利活動法人 しみん基金・KOBEは阪神・淡路大震災を機に、ボランティア活動を支える市民ファンドとして1999年に設立された団体です。
その事務局長であり、NPOサポートファンドのコンサルタントとしても関わってきた江口聰さんは、「芽は出るのに成長しない団体」の特徴として「目の前で困っている人は救えても、そのことを社会に説明できていない」点を挙げました。
「何事も、同じメンバーで同じことをやっていたら行き詰まります。そこに第三者が関わり、客観的な目で見てほぐすことに組織診断の意味があります。グループコンサルティングでは団体相互のピアカウンセリングもあるので、他団体の事例を知ることで自分の団体を振り返ることができます」

しみん基金・KOBE
事務局長 江口聰さん

パナソニック株式会社
社会文化グループ
参事 金村俊治

NPOサポートファンド総合事務局を務めるパナソニック 社会文化グループの金村俊治も、「外部の人が入ることに大きな意味がある」といいます。
「外の人には見せたくない内部のドロドロした部分を見せてしまうことが、組織を大きく変えるきっかけづくりになります。組織診断は、一部の理事や事務局の人間だけではできません。多くのスタッフが関わり、外部のステークホルダーにもインタビューし、多様な意見を採り入れていきます。そこで参画感も出てくるし、コミットメントも深まり、モチベーションも高まって、キャパシティビルディングへとつながっていくのです」

NPOの成果を可視化する

会場からは「NPOの成果はどのように可視化できるか」という質問が寄せられました。これに対し、しみん基金・KOBEの江口さんは「誰がいつまでに何をどう変えるのか」は数字でなくても表せると答えました。
「ビフォーとアフターがどう違うかを明確にすればいいのです。それをはっきり見せられれば、支援も受けやすくなります。社会との接点をもってファンを増やし、理解を得られて初めてお金の話が出てくる。それは最後の結果であって、一足飛びに数字の成果に飛びつく必要はありません」

NPO砂浜美術館の村上さんも、「観光客数やイベントの参加者数」にばかりとらわれてきた反省から、長期的な視点をもつようにしたといいます。
「7、8年前に中学生だった地元の子どもが大学生になって『砂浜美術館のことをゼミのテーマにしたい』と連絡をくれたんです。すごくうれしくて、こういうことを丁寧に記録していくことも大事だと痛感しました。短期と長期、両方の成果が必要なのではないでしょうか」

組織診断のすすめ

CAPセンター・JAPANの重松さんからは実感のこもった発言がありました。
「組織診断のプロセスの中で人間関係がゴタゴタしたり、今までのやり方を変えることへの抵抗に遭ったり、この先やっていけるのかという不安に襲われることはあります。それでも、自分たちに何ができるのか粘り強く考え続けることが大切です。人を巻き込むことで、自分たちの可能性を引き出してもらう快感を皆さんもぜひ体験してみてください」

そして最後に、SVP東京の岡本さんから力強いメッセージが送られました。
「以前はNPOより企業に優秀な人材やお金が集まっていましたが、その垣根はなくなってきました。私たちのところへも、NPOと協働したいという企業からのお誘いがたくさん来ます。NPOと企業が連携することで、新しいものが生まれる。そうやって人材やお金が流動化していく社会を一緒につくり上げていきましょう」

フォーラム終了後には、パネリストを囲んでの懇親会が開かれました。

中間支援組織の男性は「今日の話を聞いてNPOに人、物、金が集まりにくい一因は情報公開不足にあるのだと再認識しました」と感想を述べました。
あるNPOの女性は、「新しいことを始めるのは面倒だと、つい身構えてしまいますが、今日は『やってよかった』という生の声が聞けてよかった」と思ったそうです。
また、一般企業でCSRを担当している女性は「組織基盤を固めることは企業にとっても大きな課題。伴走者としてのコンサルタントの重要さがわかりました。自社の財団でも長く助成を続けていますが、今日聞いた話もぜひ参考にしたい」と話してくれました。
多くの方が、フォーラムの内容をわが身に当てはめて聞いていたことがうかがえました。