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ホームスタート・ジャパン 理事・事務局長 山田幸恵さん
ホームスタート・ジャパンは、「ホームスタート」という家庭訪問型子育て支援ボランティア活動の普及活動を全国で行っており、現在76地域に拡がっています。私たちの夢は、「児童虐待のない社会を実現すること」です。この一文は9年前の設立当初にあったわけではなく、ビジョンとして明文化したのは2011年に組織診断をしてからのことです。
ホームスタートが必要とされる背景には、小さなお子さんを育てるお母さんの孤立化という社会問題があります。現代は、外出しづらく気軽に相談できる人もいないという孤立した状況の中で育児をする親がとても多く、ストレスが蓄積し児童虐待が起こってしまう、ということがあります。そこで、悩みや問題が大きくなってしまう前に地域の人々が親を支える仕組みを作り全国に広げ、児童虐待がない社会を作っていきたいと考えているのです。
具体的には、まず地域のボランティアの方に研修を受けていただき、未就学のお子さんがいるご家庭を週に1回2時間程度訪問し、子育て中のお母さんと話をしたり家事や育児を一緒に行ったり、また子育てひろばなどに一緒に出かけ、地域の人々とつながるサポートをします。このホームスタートという訪問支援の仕組みを全国に普及していくのが、私たちのミッションです。
私たちは2006年にこの取り組みに関心を持つメンバーが集まり、2009年から本格的に活動を始めました。全国普及を目指して講演会を開き、自治体や子育て支援関連団体などに情報提供したり、地域の実施責任者の養成研修をしたり、とにかく最初は「この事業は必要だ」という思いで突っ走っていました。しかし、どんどん普及が広がる一方で、「数名のスタッフだけで、今後のバックアップ体制を維持できるの?」「活動の質を担保し続けられるの?」「助成金頼みでは持続できないのでは?」といった声がスタッフ間で飛び交うようになりました。組織自体が疲れている雰囲気も漂い始め、「もうこれ以上の普及は無理では」という声まで挙がり始めました。そんな折、見込んでいた助成金が得られない事態となったのです。
今ここで組織としての見通しを持たなくては、と私たちはNPOサポートファンドの助成を受けて外部コンサルタントのサポートを得ながら「組織診断」に取り組むことになりました。組織診断では、組織の現状を見つめ、そこで得られた気づきをもとに自分たちの成長戦略を検討しました。その中でとくに面白かったのは、「五年後の新聞の見出しにあなたの組織の記事が出たら、どんな見出しがいいですか?」といった質問が出され、スタッフがお互いに考え、その過程でビジョンを言語化し直し、改めて共有がすることができたことです。また、現実と将来像とのギャップを埋めるための課題を出し、それに対して優先順位づけをしました。それが中期計画となり、5年間で課題に取り組むロードマップを作りました。
さらに、活動に関わるさまざまな人々の声を聞くことによって、事業ばかりに目が行っていた私たちは、たくさんの人々に支えられていることや潜在支援者の存在を知ることができました。
効果的なコミュニケーションツールがあれば、より多くの潜在支援者に働きかけができるのではないか、という可能性を感じ、今度は2年間かけて「組織基盤強化」に取り組みました。具体的には、広くいろいろな方に応援してもらうための支援メニュー作りをしたり、潜在的支援者を巻き込むためのツールとして、パンフレットやビデオの作成も行いました。
組織診断と組織基盤強化に取り組んだことによって、ビジョン・ミッションを再確認できたほか、中期計画のロードマップも完成し、組織内の役割分担や地域団体との協力により活動の推進力が向上しました。また、エンドユーザーである子育て家庭や地域にとっての価値を再確認することができ、スタッフのモチベーションもアップ。今まで見えていなかった潜在的支援者像が見えることで、具体的な寄付メニューとツールで対象別にアプローチすることもできるようになりました。
これからも、組織診断や組織の基盤強化で明確になったビジョン達成をめざし、着実に活動を続けていきたいと思っています。
グループワークでは、参加者4~5人とファシリテ―タ―(進行係)1人がグループとなり、それぞれの課題について話し合いました。このワークの主な目的は、①組織基盤に関する本質的な課題を意識するきっかけを作ること、②他の組織の課題を聞き、組織基盤強化に必要な要素や取り組みを想定できるようになる、というものです。
ワークの冒頭では、自己紹介の後、各人、ピンク色のポストイットに「自分の組織の組織基盤の具体的な課題」を3枚程度書きこみます。皆さん、山ほど抱えている悩みや課題を3つに絞ることが難しい様子。さらに書き込んだ3枚のなかで、最も掘り下げたい課題を1つ決めて、グループ内で各人3分間発表を行いました。ある参加者が「スタッフが忙しすぎて目の前の業務に負われ、自分たちの方向性を見失っているような・・・」と話しはじめたところ、グループのメンバーも「うんうん、わかる」と深く頷く様子も見られました。組織は違っても、どうやら共通の課題だったようです。発表後の7分間は、発表者に周りのみんなが質問をするという形式で進めていきます。
「組織のビジョンやミッションは?」、「事業の評価は?」、「中間計画はあるの?」といった質問が飛び交い、「そもそも組織の意思の疎通がない」、「他の人の仕事が分からない」「楽しいだけでやっているところがあるのかも」などなど、さまざまな意見交換が行われました。