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認定NPO法人児童虐待防止協会へのプロボノ事例レポート
~事業の継続・発展を目指したセールスシートのコンテンツ提案~

パナソニックは、社員の仕事のスキルや経験を活かしてNPOを支援する「Panasonic NPOサポート プロボノプログラム」に取り組んでいます。
今回は、関西で勤務する社員がチームを組み、「認定NPO法人 児童虐待防止協会(略称=APCA)」の広報活動をサポートしました。2019年7月から、APCAのステークホルダーへのヒアリング調査を重ね、同団体が直面している課題を整理・検討。その上で、より多くの寄付や協力を得るためのセールスシートのコンテンツを作成。2019年12月16日に、最終提案が行われました。その様子をご紹介します。

30年にわたり虐待防止活動を展開。
寄付が伸び悩む中、広報用パンフ作成へ

APCAは、1990年3月に児童虐待を防止するため、日本で初めて医療、保健、福祉、法曹、教育、報道などの関係者により創設された民間団体です。「子どもの虐待ホットライン」の開設を皮切りに、保健所とタイアップした母親のグループワーク活動や虐待防止に関する啓発・研修活動、さらには行政との連携事業など、虐待防止の社会システム構築を目指して多様な活動を行ってきました。
しかし、長年にわたる活動実績と行政にも研修を行うような高い専門性を持ちながらも、団体の認知度をさらに高め、活動を支える企業や個人からの寄付・協力を得るためには、現状では限界を感じていました。

事務局長の川本典子さんは、広報用パンフレットの作成に至った経緯をこう振り返ります。
「新規の寄付者・会員増を図るのも、従来の支援を継続してもらうのもそう簡単ではないというところで、来年(2020年)には団体設立30周年を迎えるので、ここで1度、私たちの活動をきちんと世に伝える必要があると思いました。ただ、多岐にわたる活動を言葉で表すことはできても、一般の人たちにも分かるように図やグラフなどで視覚的に訴えるにはどうしたらいいのか。自分たちだけではなかなか形にならない中で、プロボノの皆さんの力を借りることにしました。」

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児童虐待防止協会
事務局長 川本 典子さん

関係者に約20回の徹底ヒアリング。
「活動の全容」と「熱い想い」の表現を工夫

プロジェクトの開始に当たり、プロボノチームはまず、「虐待防止の活動は誰もが応援したくなるテーマではないか?」「長年団体を支えてきた企業が離れていくのには何か理由があるのでは?」といった疑問からスタート。「APCA」の活動意義や社会的に果たしている役割を検証するため、団体内部はもとより外部の行政職員や他団体などへの約20回にわたるヒアリング調査を行いました。
その結果、専門性のある活動を非常に幅広く展開しているものの、その全容がうまく伝えきれていないこと、さらには設立から30年が経過する中で、活動に対するスタッフの熱い想いも十分に表現できていないという課題が見えてきました。

これらの課題を踏まえ、セールスシートの作成では活動の全容を一覧図などで分かりやすく表現するとともに、新たに団体ミッションやビジョンも作成してスタッフの熱い想いを伝える内容を提案。最終報告会では、「APCA」の要望に沿ったA案と、プロボノチームによるB案の2案を提示しました。

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素材を見せながら説明するプロボノチーム

提案を受けて、「APCA」の皆さんからは次のような感想がありました。

福祉の世界にいると、今は子どもが育つにはしんどい社会だと痛感します。正直、一般の方々とは距離感も感じていたのですが、今回、こうして企業勤めされている方の中にも関心を持って一緒に何かできたらと思ってくださる方がいるということが分かっただけでも私にはすごく力になりました。

川本事務局長からは、
「企業にいる方々がそれぞれの業務の中で、いかにスキルを積んでおられるかということをしみじみと実感しました。私たちは強い想いはありつつも、今回、団体のミッションやビジョンを理事長も交えて話し合う機会を持てたことはとても意味のある一歩だったと思っています。」

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児童虐待防止協会
副理事長 中塚 恒子さん

また、当日参加されていた理事やスタッフからも、
「APCAは虐待に関する専門職集団なので、人の心という小さな世界に入っていくのは得意でも、物事を大きく俯瞰的に見るのは苦手でした。その中で、今回のB案はとうてい私たちでは開けない扉を開いていただいて、感動しています。今後とも、ぜひお力を貸していただければと思っています。」
「この短期間に、児童虐待のことをこれほどズレずにきちんと理解されたことに感心しました。特に、行政と民間の役割分担を表した図は秀逸。企業に支援のお願いに行くと、「それって行政のすることじゃないの?」と言われることもあるのですが、この図があれば違った伝え方もできるのかなと思います。」との感想が述べられました。

一方、今回のパナソニック側のプロボノメンバーは、3人がプロボノ初参加という構成でした。プロボノ初心者、経験者ともにそれぞれに学ぶことも多かったようです。

今回のプロジェクトを通じ、APCAの皆さんが本当に活動に対する熱い思いをお持ちで、身内でもない誰かのためにこんなにも一生懸命に活動ができるということに驚き、いかに自分が自分のことしか考えていなかったかと思い知らされました。虐待の問題についても、最初は自分とは縁のない特殊な可哀想な事例と思い込んでいましたが、まったく他人事ではなく、身近でも起こっていることかもしれないと気付けただけでも私にとっては大きな収穫でした。社会とのつながりは、本当に大事。その学びを忘れずに、今後の自分の人生にも活かせていけたらと思っています。

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藤村 真琴さん

プロボノは今回が3回目です。NPOの人たちは本当に社会で困っている人を何とかしたいという思いで仕事をされていて、普段の会社では出会えない方々と接することで、自分自身がすごく鼓舞されるというのがあります。虐待というと、特殊なケースだと思い込んでいましたが、ヒアリングを重ねる中で、どうしてそんなに件数が多いのか? どこでそんなことが起きているのか?という素朴な疑問がそのままパンフレットに反映されました。私たちメンバーの疑問は、一般の人たちが思っていることと同じだと思うので、そういう視点で関心を持つ方が増え、このパンフレットを通じAPCA活動の理解に繋がれば、と思っています。

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池原 久恵さん

本来は私たちのビジネススキルでもってお役に立つはずが、逆にとても勉強させていただき、感心、感動することが多かったです。普段、会社では「誰のための仕事なのか」と自問自答することもあるのですが、APCAの皆さんは明確な目的の中で自分の思いをすごく持っておられて、羨ましいと思うと同時に意義ある仕事だなぁと感じました。いずれは児童福祉関係の仕事をしたいと思っているので、今後の自分の仕事の進め方や生き方、考え方においても良い参考になりました。

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吉田 拓未さん

もともとボランティア活動に興味があり、自分に子どもも3人いるので、虐待の問題でお力になれたらと参加しました。虐待の現状や課題を学び、みなさんにヒアリングする中で感じたのは、自分が今までやってきた子育ても半ば虐待だったんじゃないかと思わされるほど、虐待の定義を何も知らなかったなということ。それは一般の人たちも同じで、虐待か子育てかの違いは紙一重で、すごく身近な問題なんだと気づかされ、子育て中の父親として自分を見つめ直すきっかけになりました。どこまでお力になれたのか自信はありませんが、今回のプロジェクトがAPCAの皆さんの議論のきっかけになったのであれば、ちょっとは貢献できたのかなと感じています。

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田村 隆明さん

日頃の業務で培ったビジネススキルや得意分野が社会貢献につながるプロボノ。今回は、半年間という期間の中でニュースでもよく目にする児童虐待という問題に向き合い、その支援者たちの熱い想いに触発されながら、自分自身のことも見つめ直す良い機会となりました。