ギフモ株式会社をプロボノチームが支援
ユーザーコミュニティ運用の業務フローを設計

ギフモ株式会社

パナソニックは、従業員が仕事で培ったスキルや経験を広く社会に役立て、社会課題を解決するNPO/NGOの事業展開力強化を応援する「Panasonic NPO/NGOサポート プロボノ プログラム」に取り組んでいます。
今回は7人の従業員がチームを組んで、「ギフモ株式会社」が商品ユーザーのコミュニティを運用するための業務フローを設計しました。2021年7月9日から、ギフモ関係者やユーザーへのヒアリングを重ね、そこから導き出したオンラインコミュニティをトライアル運用。2021年12月21日には、オンラインで最終提案を行いました。その様子を一部、ご紹介します。

ユーザー同士が交流できるコミュニティをつくり
家族と同じ食事が楽しめる調理器を多くの人の手に

「ギフモ株式会社」はパナソニック発のベンチャー企業で、社会課題を解決する製品を販売しています。商品のデリソフターは、見た目も味もできるだけそのままに、料理をやわらかくできる介護食調理家電。父親の介護経験をもつ小川 恵さんと職場の先輩だった水野 時枝さんが開発し、2020年7月の発売以来、2021年4月までに500台ほどの販売実績があります。
このデリソフター、もともとは高齢者の介護を対象としていましたが、医療的ケア児の家庭からも必要とされていることが分かりました。

しかし、デリソフターは使ってもらって初めてよさがわかる商品。ユーザーを増やすには、各地の購入者にアンバサダーになってもらう仕組みをつくる必要がありました。とはいえ、ギフモ側がメニューなど、すべてを考案し提供するのは負担も大きく、「購入者がデリソフターのレシピを投稿するなどして、ユーザー同士で交流できるコミュニティをつくれないだろうか」と、プロボノチームに相談しました。

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デリソフターを開発した
小川恵さん(左)と水野時枝さん(右)
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デリソフター
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見た目も味もそのままで、
料理をやわらかくすることができる

顧客のペルソナからコミュニティのあるべき姿を設計
コミュニティをトライアル運用し、改善案を提言

プロボノチームは、デリソフターのユーザー同士の交流・相談・アイデア共有の場をつくるために、ユーザー参加型コミュニティのあるべき姿を整理し、その運用のための業務フロー設計に取り組むことにしました。
まずは、ギフモ関係者へのヒアリングから、「介護や食事の問題に直面した人がデリソフターを購入し、よりよい使い方を模索する中で、互いに助け合い、悩みに寄与できるコミュニティ」を目指す考えを導き出し、共有しました。そのための仮説として、ユーザーへのヒアリングなどから3種類の顧客のペルソナを想定。潜在ニーズと提供価値を整理しました。

1つ目のペルソナは母親を介護する娘。時間や体力に限界があるので、自分の負担を増やさずに同じ食事を楽しめるようにするという価値を提供することができます。
2つ目のペルソナは老老介護をする妻。生活スタイルを変えずに夫婦で同じものを食べたいというニーズに対し、これまでの食生活を踏襲した食事に+αの工夫で、やわらか食を提供することができます。
3つ目のペルソナは医療的ケア児の母親。介護者の中では割合が少ない分、悩みを共有できる仲間がいないことが考えられます。家庭でできることには限界があるので、家族の食事とうまく連携した食事づくりのノウハウを提供できます。

ここから、既存ユーザーがサポートされる仕組みを重視しながらも、既存ユーザーにアンバサダーのように振舞ってもらうことで、潜在ユーザーに広くアプローチする仕組みを構築するために、嚥下食や医療福祉関係者・医療的ケア児の親・親の介護のコミュニティを包含するコミュニティを目指すことにしました。
さらに、ユーザーの増加に備えて、コールセンター業務の改善についても提案しました。コールセンター業務をワークフロー化して、問い合わせ履歴を記録し、整備することで、アウトソーシングやチャットボットを用いたAI化につなげていくというものです。

そして、2021年11月下旬~12月中旬にかけての2週間、医療的ケア児の親のオンラインコミュニティの仮運用に取り組みました。今回は小さな規模のトライアルということで、フェイスブックのグループを作成し、「ギフモコミュニティ(仮)」と命名。ギフモの社員、プロボノメンバー、医療的ケア児の親5人程度、嚥下食の専門家や医療福祉関係者5人程度に参加してもらいました。
コミュニティでは、デリソフターでつくった食事のレシピを投稿したり、デリソフターに関する意見や質問を投稿したり、仲間の募集をしたりすることができます。ユーザーにはレシピやコメントの投稿をお願いし、専門家や関係者にはユーザーからの質問に答えてもらいました。

その結果、ギフモとユーザーと専門家のオープンな情報共有まではできましたが、ユーザー同士のコミュニケーションにまでは発展させられませんでした。
ただし、運営側からユーザーへの問いかけに対しては投稿が寄せられ、ギフモが投稿したクリスマスレシピにも反応があったことから、ユーザーの関心領域や困り事の解決につながる有益な記事を投稿し、時間をかけて心理的安全性を確保できれば、コミュニティ活性化の見込みがあることが明らかになりました。
コミュニティの運営に際しては、ユーザーがコミュニティに参加したくなるコンテンツ設計とコミュニティマネジメントスキル、運用分析改善のサイクルを構築していく必要があります。
最後にプロボノチームはこれからの展開として、まずは展示会やリアルコミュニティでデリソフターを情報宣伝し、ユーザーが増えてきた段階で専門プラットフォームを検討。そこから、ケア児の親・親の介護・老老介護のコミュニティをつないでいくことを提案しました。

最終提案を受けての感想

ギフモ代表取締役の森實 将さん

プロボノチームのこのメンバーだったからこそ、ここまでの関係を築きながら、この期間ですばらしい成果物をつくれたのだと感じています。私たちのコミットメントやコミュニティのどこに、どこまでリソースを投入していけばいいのかが見えてきて、真剣に、具体的に事業計画への落とし込みを考えないといけないと思いました。ここから更にアクションを積み重ねていけば、どんな結果が出るのか楽しみです。

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デリソフターの原案を考えた小川 恵さん

障がいをもつお子さんのお母さんが実名を出すことのハードルの高さを感じました。ハンドルネームを使えるコミュニティにしたほうが、悩みなども正直に話せて、会話が発展していく可能性を感じました。フェイスブックがいいのか、あるいは有料専用プラットフォームサービスを使うのか。今後見極めが必要です。

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プロボノチームの感想

  • 草野 崇さん
    プロボノは初めてで、この6カ月、自分自身の勉強になった一方で、足を引っ張ったのではないかという申し訳ない気持ちもあります。まだできることがあれば、参加したいと思います。
  • 是成 裕太さん
    ターゲットとなるペルソナを設定し、どういうお客さんが、どういう経路で、どのような情報を求めているかを整理した上で、トライ&エラーにも少し取り組むことができ、参加して本当によかったと思います。
  • 松添 創一さん
    どうスタートし、どう着地させるのか見えない中でストーリー立てをするという、日常業務では経験したことがないプロジェクトに取り組み、学ばせていただきました。デリソフターでつくったものを初めて食べ、50代になって新鮮な体験ができたことに感謝しています。
  • 山成 比奈乃さん
    とても勉強になった6カ月でした。仕事のからみで、なかなかコミットできなかったことは大きな反省点ですが、このご縁を引き続き大事にしていきたいと思っています。
  • 坪倉 秀基さん
    コミュニティづくりのためのマーケティングに関わらせてもらい、自分自身、成長できたと思います。ギフモはもともと好きな会社でしたが、展示会でデリソフターの説明をしたり、お客さんの声を聞いたりするうちに、魅力を知って、もっと好きになりました。
  • 松尾 和世司さん
    ギフモの皆さんの製品や実現したい世界にかける熱い思いを感じることができ、刺激になりました。私自身、10月から、マーケティングと新規事業を考える部署に異動になり、新しい事業をつくるには、これだけの熱意が必要なのだと改めて教えられました。
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最終提案を終えたプロボノメンバーとギフモのメンバーとの記念写真

ギフモ株式会社

パナソニック発のベンチャー企業。
商品のデリソフターは、見た目も味もできるだけそのままに、料理をやわらかくできる介護食調理家電。
デリソフターにより加齢や病気、怪我などで噛む力・飲み込む力が低下してしまった方々が家族と同じ料理を食べることができる食の幸せを届け、当たり前の暮らしの実現を目指している。